1ー6 関わり
半日ほど前
アルとトンファが猪用の大きな穴を朝早くから掘っている頃
△▽△▽△
馬車に揺られながら次の予定がある国へ向かっていた。
旅は、比較的順調でこれといって何も問題は発生していなかった。
はず、だった。
数日前に立ち寄った場所で、赤色トカゲをみつけた。ほんの休憩のつもりで停泊した場所から見つけた。反対の山の斜面で日向ぼっこをしているような感じでまったく動く様子はない。
体長は、4メートルほどだろうか。深紅の赤。鱗に覆われた大きなトカゲ。
私は、ミネルバ・エマ・サリード。
自分で言うのも恥ずかしいが高貴なる帝国の伯爵家に生まれ、今はお忍びで諸国の見聞を広めてる最中だ。いまは、まだ肩書きだけだが、いずれは父の後を継ぎ立派な人間になる予定だ。
ミネルバには、昔から悪癖があった。簡単にいえば、鱗フェチである。
魚から始まり、蛇、そして今回のような竜の末裔であるおおトカゲの、、う・ろ・こ。
どうしても、あの深紅のウロコが欲しくてたまらくなった。
警護の兵を引き連れ、赤色おおトカゲを追い回した。図体はデカイわりには、臆病で弱いのだろう。さんざん手こずらせたあげくに逃げ場を失ってついに追い詰めた。
「私も命までは、取りはしないわ。あなたの美しい「うろこ」を1枚、わたくしに差し出しなさい」
そいって自分より数倍デカイおおトカゲに近づくと、鱗を慣れた手つきで一枚剥がし取ったのである。その瞬間!
あれだけ、静かにしていたおおトカゲが急に暴れはじめた。
手がつけられない。これさっきまでのトカゲとは別ものじゃないかと思うぐらい攻撃的になった。竜の末裔であるこのおおトカゲにも先祖伝来の「逆鱗」なる一種のプライドがあったらしい。自業自得となったミネルバは、一目散に逃げるのだが逃げるほどにトカゲの勢いは増して
10名ほどいた従者たちがいまは3名しかいない状態まで追い詰められていた。
△▽△▽△
「サリード様をお守りしろ‼️」
馬車のなかから外を覗くと、土煙の先に赤いうろこが怒り狂って迫ってくる。
私は、夢半ばにうろこに殺されるのですね。
それも、いいかもしれない。、、、、っそ。そんなわけないじゃない❗
まだ、あーんな事もこーんな事もしていない。
急に死ぬのが怖くなっても目の前まで赤いうろこが迫ったその時。
赤いうろこは、ひっくり返った。
こけた?。こけたわよね。
△▽△▽△
アルは、トカゲが逃げていなくなった事を確認すると、馬車の様子を見に行った。
「大丈夫ですか? 怪我してませんか?」
馬車の中には、人がいる気配はしたが出てくる様子はない。
「う、ろ、こ、、こけた、こ、こけた。」
何か中の人が同じことを繰り返し唱えていた。
あー完全にいっちゃった感じですかね。アルは、馬車の扉をあけると中の様子をみた。
そこには、高級な装飾品に飾られて外から見るよりずっと豪華な内装だった。そして席に一人の少女がいた。長いブロンドの髪にこれも高級そうなブローチをつけている。瞳は、黒くこれまた見たことのない綺麗な顔立ちをしていた。
「かわいい・・・・・。」
自分でも何をいっているか判らなくなった。
なんでそんなことを口走ったのかも。
まだ、少女のほうは錯乱していたので聞かれてはいないだろうと安心した。
アルは、少女に気分を落ち着かせるためそよ風のマナを送る。
少女は、それでようやく落ち着いたのか。さっきまでに様子とは異なり。目の前の少年をみるなり罵倒を放った。「誰の許可を得て、村人風情が私の馬車に搭乗しているおつもり!!」
急な剣幕にアルは、馬車を降りて兵の様子をみた。彼らは怪我をしており歩けそうだが治療が必要そうだった。少女も少し経って馬車から降りてくると状況を理解したのか。一人無事な兵を見つけると事の顛末を聞きているようであった。
急に赤面したかと思うと、こちらへ進み出てきた。
「先ほどは、大変失礼いたしました。助けて頂いたにもかかわらず。恩人にあんな礼を掻いた態度をとってしまい。申し訳ございません。このままでは、我がサリード家の恥でございます。
失礼。自己紹介がおくれました。
私は帝国・サリード領 当主の娘
ミネルバ・エマ・サリード と申します。」
少女は、自分をエマと呼ぶようアルに言った。いまは、お忍びの旅路の途中で自分の存在が公になるのは不味いとのことだった。一通り聞いたあと、商人の一行ということで話を通すことにした。一足先に村に帰ると村の代表であるアーネムの所で、商人の一行がモンスターに襲われて怪我をしたこと。そして数日の間、面倒をかけることを伝えた。最初は、アーネムも半信半疑だったが村から商人一行が見えてくると忙しく準備を始めた。
正直、この村は高貴な人間をもてなせれるような部屋もなければ上等な料理もない。
だが、エマもその従者達もそれほど嫌な顔をしないで村のもてなしをうけていた。
エマ曰く、僕やエマが生まれた頃にあった天災で年長のもの達は皆、一時だが貧しい生活を経験したことがあるらしく。むしろ、旅の途中で半壊したのにこうして手当てをしてもらい生きていられる事を村人に感謝しているとの事だった。
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1ヶ月ほどたった。
エマは、僕と同じ年で今年で10歳だそうだ。トンファもこの村に同年代の女の子がいなかったので最初のうちは価値観の違いでギクシャクしていたが。最近はエマのほうが野生化してきたのか最初の気品などそっちのけで、僕らと遊び回っていた。
なかでも大蛇を捕まえたときのエマは、完全にイっちゃっていた。
川原で遊んでいると悲鳴が聞こえた。
僕とエマ、トンファの3人で悲鳴が聞こえた方に向かうと、山から降りきたのかジャイアントスネークこと、大きな蛇がとぐろをまいて威嚇していた。畑仕事中に近所にマリーおばさんが悲鳴のぬしのようだ。
ハルは、近場の石をつかむと雷のマナを付加した。思いっきり蛇の鼓膜めがけてなげる。
大蛇は、おばさんに気をとられていたため。ハル達には気づいていなかった。
ハルが投げた電撃の投擲は、きれいに蛇の鼓膜に当たった。
その瞬間、大きな巨体がぶるぶる震えたかと思うと痙攣したまま卒倒した。
蛇の目は、非常に悪いその代わりに鼓膜により獲物の存在を感知するため、非常に敏感な器官である。とうぜん、弱点という訳でなく通常は厚い皮に覆われているため問題ない。
だが、電撃による攻撃では鼓膜にダイレクトに通るため。体の制御が一切きかなくなり、全身に撃をうける。完全に不意をつかれた大蛇はアルにやられたのである。
このままだとまた眼を覚まして大変なので、村の大人達が総出で動かないうちに縛って解体した。その時、ふとエマの方をみるとドン引きの光景が広がっていた。
剥がした蛇の皮を大事そうに持っていったかと思うと、慣れた手付きで大きなうろこを一枚づつ剥がしては、自分の体に張り付けるのであった。
そして、最後に大事そうに懐から赤色のウロコを一枚とりだし。一番見栄えが本人的にはいい額に当ててニヤニヤしているのであった。
言うまでもなく直ぐに従者の女性に見つかり引っ張られながら本人は回収されていった。
そういえば、さっきの赤いウロコどっかで見たきがするんだけど、、、。
まさかね。
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「ずいぶんと長い間、お世話になってしまい申し訳ない。この村には、サリード家代表として恩義は、一生忘れません。」そう言うと、エマは、村の代表であるアーネムに袋を渡した。この村では、お金などには、全くの価値はないがそれでも数十年に一回、遠方から税の取り立てがくる。その際に必要になったりもするので無いよりはいいので、ありがたく頂く事にしたようだ。ただ、あとになってその袋の中に入っていた額をみてアーネムは、顔が青ざめていたそうだが他の村人は、そんなこととは知らずにいつもの日常へ戻るのであった。
エマは、村をたつまえに親友の証として彼女が最も大切にしている海竜のうろこをハルとトンファに手渡していった。これがある限り、僕らは一生、大切な親友ということらしい。
そして、もし帝国を訪れる機会があったならばこれを見せるといいと、サリード家の家紋が入った短剣を1本渡してくれた。
しかし、僕もトンファもこれが最初で最後の出会いであることがわかっていた。この村で育ったものは一生この村で生きるのだから。
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そして、それ以降は何事もなく13歳の夏を迎えた。




