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2ー63 海底

△▽△▽



「お母さん。無理しないで寝てていいのよ」


「今日はね、お天気がいいせいか体も軽いの」


ベットから上半身をおき上げるのが精一杯だったが少しでも娘の心配を減らしてあげたかった。

だが、もうそんなに時間がないことは理解していた。


娘は、そんな母の心の内でさえ理解できるひど優しさがあった。今日は、母が好きなものを一杯用意しよう。


「ちょっと出掛けてきますね。

2時間ほど抜けるので、先に体を拭きますね」


馴れた手付きで母を介護する。


ここで生まれここで生きてここで死ぬ。それがこの村の当たり前だった。でも母は若い頃、旅をした記憶があるらしい。でも他の村人はそれを否定する。母の両親でさえ。


でも母が夜に布団を寄せて話してくれるお伽噺のような物語は、多分その旅の話だと私は信じた。



小道を進み小屋に向かう。

そこには、村でも唯一マナと薬草を使ったお薬が作れるお爺さんがいた。


「ローレンさん。いつもすいません。」


少女を頭を下げながらお爺さんから小さな紙包をいくつか手渡される。


「いいさ、私はお前達も娘だと思っているさ。家族のためだ。少しでも役にたてればそれほど嬉しいことはない」


ローレンお爺さんがいなければ今頃、この小さな村で母がここまで長生きする術もなくこの世を去っていたはずだ。


「ローレンさん、後で母を少し診ていただけませんか?。調子がよさそうな素振りをすることが多くなってきました。多分、辛いのだと思います。」


もう、母が病にふしてから3年目を迎えた。

少しずつ母は、弱っていく。ローレンさんのお陰でその進行はゆっくりとしているが確実に終わりが見えてきた。胸が締め付けられるような苦しさを感じる。


私には、何も出来ない。母のそばにいることぐらいしか。


今年の夏は、それでも涼しい方だった。

帰り道、額を流れる汗を拭い娘は、母に少しでも元気になってほしいと願った。


大岩を眺める。

白い大きな石灰の岩は、今日もそこに鎮座している。


年に1度、火竜がこの大岩の上で昼寝をする。

村人も危害がない竜を風景の一部として扱う。


一度だけ、母が病になって2年目の夏の事だった。

私は、寝ている火竜のそばで母を、助ける方法がないかたずねたことがある。


火竜は、最初はこちらを見ないふりをしていたが、つぶっていた目を見開き。

私をみつめた。


頭の中に声が聞こえた。


<運命だ。お前があきらめなければ母はまだこの、世界に繋ぎ止められる。だがいつまでとはいえない。これを、ローレンに持っていくがいい>


そういって、火竜は『黒い鳥の羽』を私にくれた。

そして火竜はまた山脈に飛び立っていった。


奇跡は起こせないのは判っていた。ローレンさんに羽をみせると驚いていた。

火竜から母のためにローレンさんに渡すように言われたと言われると


一言だけ


「、、、そうか」


と呟いた。


あれがどんなものなのか私には判らなかったが時がくれば必要になるとローレンさんはいった。





「リーネちゃん、山で長芋が一杯とれたんだい。持っていって。お母さんに、食べさせてあげなさい」


近所のマニおばさんが、声をかけてくれる。


「ありがとうございます。母も喜びます。」


リーネは、おばさんから長芋が入った袋を受け取り一旦、帰宅した。

今日は、これをもご馳走にくわえましょう。


まだ、リーネは10歳になったばかりだった。だが母が病にふしてからは家族として出来る事を懸命に頑張ってきた。

リーネは、村では珍しい白銀の髪をしていた。村でも評判の母想いの優しい子供だった。村の皆は家族とかわらない。困ったことがあればいつでも助けてくれる存在だった。


「ただいま、母さん帰ったよ」


リーネは、母さんの様子を見に行く。


母さん‼️


ベットから、上半身が崩れ落ちていた。呼び掛けても意識はない。

「かあさん。かあさん! しっかりして目を覚まして!」



△▽△


「息は、あるが明日になっても意識が戻るかどうか」


「そんな、、、。」


ローレンは、小さな少女を見つめながら現実を教える。

何か手が有るならもうしている。


だが自分んから食事などが出来なくなってしまえば数日ともたずに衰弱が進むだろう。

ローレンは、以前。火竜がくれた黒死鳥の羽を思い出す。


そうか、この時のためにあったか。

成体した黒死鳥の羽。


一定の期間だが人をどんな病からも救済すると言われている。だが7日後、必ず死をもたらす。どういう理なのかは、今をもってしても不明だった。


過去に何度か偶然に手に入れた者いた。

非常に高額で取引される。


最後に7日間。元気な姿を家族の思い出に刻みつけ。時間を計ったように使用してから7日後悲しみをもたらす。


この少女には、あまりに残酷ではないだろうか。

母が死に向かう事が判っていながら、7日を過ごさなければならない。


その7日うちに別の方法で病を直すことなど出来ない。


それでも火竜は、彼女にこれを渡した。意味があるとするなら運命に聞かなければならない。


彼女が選ぶべきであった。

「リーネ、よく話を聞いてから決めなさい。そしてどちらが後悔しないかを考えるのはやめてほしい。全ては、運命だと受け入れてほしい」


ローレンは、少女に黒死鳥の羽にまつわる真実を語る。


何もしなければ確実に死を迎える。このまま死なせてやるほうがもしかしたら少女にとっても幸せだったかもしれない。だが、リーネにとってはずっと母親らしいことが出来なかったトンファを思うとまた違った感情もある。


正解などないのだろう。せめて娘の選んだ運命に従う。


リーネは、一晩考えた。もしかしたら自然に目を覚ますかもしれない。

もしかしたら、明日急に死ぬかもしれない。


ローレンさんは、正解などないと言った。

自分でもそう思う。母の事は一番よく判っていた。




△▽


次の日、今年一番の暑さになるかもしれないと近所の村人が道端で話していた。


ローレンさんの家につく。


リーネが丘を下ってくる姿が見えていたのだろう。

ローレンは、リーネが扉をあける前に玄関に出てきてくれた。


「決心がついたか。どうする事にしたのだい」

ローレンさんは、優しく語りかけるように問う。


「たとえ、7日でも母はこちらを選んだと思います。ローレンさんお願いします」


少女は、悲しげでもあり一時でも母と話ができる期待も両方をごちゃ混ぜにしたような表情を浮かべながら老人を見つめる。


「そうか、ではこれから向かうとしよう。」


ローレンは、引き戸にしまっておいた黒死鳥の羽をもってトンファが待つ家へ少女とむかった。



ベットには、静かに弱々しい呼吸を続けるトンファの姿があった。

「母さん、、、、。許して私は母さんとお話がしたいの!」


涙を浮かべばがら若干10才の少女が眠る母に頼む。


ローレンは、リーネに下がるように言う。彼女の胸元に羽を置く。

少しでも効果が上がることを願いながら自分がまだ大賢者の元で学んでいた頃を思いだしマナを指定された方法で実行する。


多分、今だかつて『竜の刻印』を用いた方法で行った者はいない。だがローレンは、魔道防具と同じ概念ならばそれの方がいいと賭けにでた。


あまりにも娘には、言えない賭けだった。


ローレンは、集中する。

その時だった。

ローレンの記憶に一人の少年が出てくる。

いや、幻想に近い。まるで自分に手助けするようにその方法が頭に流れこんでくる。


「そうか、お前はずっとそこにいたのか、、、。」


ローレンは、若い頃から特殊な体質とでも言える感覚があった。

他人には、決してみることができない『境界』を見ることができた。


目の前の少年は、青年と言ったほうがいいだろうか。懐かしい。そして胸を締め付けるような感情がわき起こる。


「アル。助けてくれ!」


老人は、記憶の名前を叫ぶ。


竜の刻印を発動する。


光が部屋を包む。日の光が急にその輝きを失う。

世界でただこの部屋だけが明るかった。










△▽△△


「いいの?アル、これでここまで努力してきたことが全部無くなるけど」


「いいさ、彼女が無事なら」


「あれからここに時間軸で1000年以上ね。私にとっては時間の概念は消失してるけどアルには永かったじゃない?」


「一人じゃないからさ。それに僕はそれでもまだ守る人がいる幸せがあるのさ」


「じゃあ、時がきたみたい。ローレンさんが家を出たわよ。システムを再チェックするわね」


そう言いってセリアは、画面を操作する。

巨大な金属のような光沢持つコアが高速回転を始めた。


思い出すだけでも気の遠くなるような昔。この最初は、何もなかった白い部屋で目が覚めた。

そこから少しずつだが、この世界の理を理解し構築を始めた。


上手くいくほうが珍しく、全く基本的な理が違う世界だった。

そして、数百年前にようやく異なる世界の観測に成功する。


そこから少しずつだが残された記憶を目印に起点とよばれる世界を探した。

そして、ようやくその場所を見つけるのだがその世界には戻るために必要な『存在』が無かった。


だが、彼女達だけが自身のマナにそれを刻みこみ彼が帰れる『存在』を定義していた。

望みはあった。


そしてそれが途方もない時間が掛かってもゼロがゼロでない可能性に望みをかけることができた。だが残酷な運命はそれを許してはくれないようだった。


だが、アルにとってはそれでも彼女、、、トンファを助けられる可能性があるのなら。


「発現させます」



「アル。


いってらっしゃい。そして永遠のお別れなのね・・・・・・」


アルは、セリアを抱きしめる。


「別に消滅するわけじゃないさ。セリア、本当に今までありがとう」


「確率は、ゼロじゃない。また迎えにくるよ」


もう、忘れた感情だったはずだった。

セリアの頬に一筋の涙がつたう。


彼と過ごした時間があまりにも長すぎたせいだろう。


『世界干渉を実行します』


アルの体が半透明になる。セリアは、薄れゆく彼の体に抱きしめられながらその場で世界を繋いだ。


アルが消えてからも観測続ける。

無事に願いが叶いますようにと心から想いながら。



△▽△▽


アルは、いくつもの可能性という光の輝く数多の可能性を眺めながら目的の世界に進む。


久しぶりだ。

鏡向こうにいたのは、ローレンだった。


だいぶ、歳をとったね。ローレンお爺ちゃん。この境から向こうは時間の流れが異なる。10年とは、こちらでは瞬きのような時間かもしれない。だが向こうは、肉体にも時間の概念がのる理があるため老いる。


それは、生きるという最も効率のいい進化、可能性を加速させる為の一つの方法。そしてその代償は死という還元と再生である。


その最終的な終着点とか。そんな大層なことを実は創造者は考えてはいない。ただ制限し守られた世界の理のなかでどうなっていくのか、見て、感じて、時には嘆いてを上から眺めているにすぎない。


ローレンが持つ黒い羽は、ただ理が違うだけだ。あれは再生や治療とは異なる。

生きる者から死の概念を一時的に消失させるものだ。


つまり、死ねない事を代償に生きる事を奪う。一見、矛盾しているようだが定義が全ての始まりなのだからしょうがない。


普通にあれを使えば急速に個体のコアを消費する。本来、個体が死を迎え還元される場所であり再生する場所でもある。そのコア自体を消費するため。コアが完全に枯渇すると世界からの消失を意味する。


死よりもこちらの世界で言う「終わり」に近い。


一般的な個体のコアは、最初から規定量が決まってる。だから7日という時の流れでコアが枯渇してしまう。肉体はあくまでもその世界での入れ物にすぎない。


もし、トンファがこの自身のコアに問題があった場合はこの短期間では解決は難しい。


だが、単に入れ物だけの話ならたいした事はない。

だがアルがこの世界に干渉することがそれなりの代償が必要だった。

星のコアを消費して力を行使するのとは違い。いまのアルには繋がるコアは、自分自身のコアしかない。


こちらの世界で干渉による大量消費をすれば、何かの偶然で世界に引っ掛からない限りは、制御できなくなった難破船のように広大な海を永遠にさ迷うことになる。


当初の計画では、起点となるこの世界にセリアが保管してあった肉体という器に、彼女と僕のコアを世界干渉により結びつけることで達成できた。セリアの昔の肉体はまだ星のコアとの接続がされており結果的にそれが成功すれば僕らは難破船になることなく、起点の世界にとどまることさえできた。


だが、起点の世界を観測出来るようなってから娘や息子の成長を見つめていた。

そして、娘にはまだ母としてのトンファが必要だった。そして運命と言う名の可能性の一つには、普通に羽をつかい7日後。トンファが消失した後に残された娘が心の隙間を埋めるための過酷な運命が待っていた。


父として、してあげられる最初で最後の事かもしれない。

それが正しいか、間違っているかは判らないが未来だけを見るなら。彼女が生きたほうが娘や他の子供達の未来には最良の選択となる。











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