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2ー59 硬化

△▽△▽


「おい、金もってきたか?」

「・・・・・・・・。」


「黙ってねえで出せよ。お前のうち金持ちだろ。少しぐらい持ってきても判らないだろ」


いつまでつづくのだろう、、。

気付くと自分の立ち位置は、財布になっていた。

たしかに、親は裕福だった。でも厳格だった。そんな自由に使えるお金など渡してはくれない。


だから、家のお金を持ち出すことでその場しのぎをした結果。エスカレートしていった。お金を持っていかないと暴力をふられる。

相手もお金が目当てではない。ただの嫌がらせだ。


「今日のお仕置きは、次に必ずもってこれるようにキツイお仕置きをしないとな。おい、こいつの服を脱がしてそこの木に張り付けようぜ」


「それは、やり過ぎでは?」


少しは、良心のある奴がいたが3メートルほど吹き飛ぶ。

「おい、誰に命令してるんだ!バドール家に楯突く気か!」


「、、いえ。そんなつもりはありません」


「周りの奴もいいか、同じようになりたくなきゃ早くしろ。俺は短気なんだよ」


取り巻きは、3人がかりでその子を押さえつける。

「や、やめろ。やめろぉ。  やめてーーーーー。」


「こいつ女みたいに泣きやがるな。うけるぜ。」


一人が上着を脱がして、下着に手をかけた時に止まる。

「こいつ、本当は女みたいだぜ」


「まじか。えらい美形の男子だと思ってたけど女だったか。よけいいいじゃねえか。

裸にして遊んでやろぜ」


女だと判った時点で一線を越えた者を止める術はなかった。思春期の男などこうなれば女を犯す事しか考えない。


「いやーー。いやぁー」


「抵抗するほど、盛り上がるな。すぐに気持ちよくしてやるよ」



‼️



そんな所に一筋の剣が飛んでくる。

「騎士道に反する愚行。許せないわ!一対多でイジメなんて卑怯よ」


「はぁ!? いきなり出てきて何ほざいてやがる。お前、新入生だな。服、見りゃわかる。ひよ子のくせしてバドール家のギバに逆らうとはいい度胸じゃねえか」



「バドール家!?」


「そうだよ。お前も貴族出身者ぽいな。いいのかそんな口の聞き方で」


「っく」


「あー。哀れだな。生まれってやつは」



そんなやり取りをしている所にジルが到着する。


「ち、また増えやがったか。まとめて相手してやるよ」


「だれ?あの人」


「ジル、さがってバドール家のご子息様よ。いまの皇帝の息子だわ」


「へー。だからなぜ下がる必要があるの?だって皇帝の息子だからって悪いことしてるんでしょ」


「・・・・・・。そうね。そうだわ。キバ様。そのような事をするのはお辞めください。」


「あー、イライラする。まじでぶっ潰す。」


そう言うとギバは、マナ操作で服の下に魔道防具を身に付けていたらしい。紋章が光り、炎の塊がルビィに飛んでくる。


ジルは、反射的にルビィを押し出し身代わりになる。

「ジル!」


ジルの足には、火傷の跡が残る。マナ操作も使えない二人では太刀打ちできない強さであった。


「ち、弱いのに吠えるのは嫌いだ。後で可愛がってやるよ。今日は興ざめした。帰るぞ。」

そう言って、ギバは取りまきを連れて去っていた。


「ジル大丈夫?」


「ああ、痛いけどね。歩けるかな。早めに医務室にいこうか。それより、、」

ジルの目線に先には服が乱れた子が泣いていた。


ルビィが先輩と思われる彼女に近づく。


独り言のように呟いていた。

「知られてしまったわ。私が女である事。もう居られない、、。」


なんか事情がありそうだ。このままほっておく訳にもいかない。彼女を支えながら医務室へ向かった。


△▽△


「裂傷と火傷ね。ずいぶんやられたわね」

そう言いながら、女医が癒しのマナで治療をしてくれる。


「で、学内での暴力沙汰はご法度よ。誰にやられたのかしら」


「素直に言っても揉み消されるのが落ちの相手です。」


女医は、それだけで判ったようだった。

「そう、次のターゲットになっちゃたわけね。で、ミュウが今回の被害者だったと」


「ミュウってだれですか?」


「名前も知らない相手を助けようとしたわけね。彼女の名前よ。ちょっと特殊な事情でね。詳しくは彼女自身から聞くといいわ。校長には伝えておくわ。貴方が絡んでるから揉み消される事はないわね。安心しなさい。」



「ミュウも運がいいわ。解決するまでなるべくこの子と一緒にいなさい。事務手続きは、しておくから」


「はい、、。」


△▽△


先輩のミュウさんは、一旦寮に戻る事になった。ミュウさんの部屋は、下の階で一人部屋だった。彼女は、女性と言われると女性にしか見えないがショートカットで男性の格好の為、男性と言われれば本当に美男子と言ってもおかしくない容姿だった。


「ミュウさんは、そこまでしてなぜf男性を演じていたんですか?」


「ジル!、デリカシーがないの?。そんな直球で聞くのは失礼よ」

ルビィに怒られるが、知らないと話がややこしくなる一方だからだ。


「ルビィさんありがとう。ジルさんもご迷惑掛けてすいません。私のせいでギバにも目をつけられる事になったのが申し訳ないです。」


「ミュウさん。何も悪くないじゃない。むしろ頭がおかしいのはアイツらの方よ」


「あなた達には、本当の事を言うわ。私の生まれの問題なの」


それから、彼女はなぜ自分が男装して生きてきたのかを話してくれた。


△▽△▽


帝国内でも、一部の領地にはいまだに長男が親族の中で当主を継ぐ制度を続けている所があった。多くの領地は男女関係なく優秀な当主を選ぶが単純に男であることが前提とする場合もあると言うことだ。


そして、ミュウの実家もそんな家元の家系であった。だがミュウの家族から近しい親族に至るまでなぜか女の子しか産まれない年が続いた。男の子が産まれないと今の当主が亡くなった時点で近くの領主の次男が跡継ぎとなる。そんな状況で、待望の男の子が産まれる。ミュウと双子の兄であった。

兄の名はミュウと言った。だがその子は、幼いうちに数年で突然急死してしまったと言う。

跡継ぎ失った両親は、あろうことか妹が死んだことにして彼女を男として育てた。


ミュウは、物心ついた時からお前は男だと言われた。周りからもわからないように、ほとんど部屋の中で育ったらしい。本人もそれが異常だと気付くとことが無かったと言う。


そして、12歳を過ぎたころ。この騎士学校への入学が決まる。その時、初めてこの体が女である事を両親から告げられた。そして女性としての体に変化していった。胸が膨らみ体のラインに変化が生じる。


そして両親は、けして男である事を悟られてはならないとミュウに言った。

もし、男とバレた時にはお前の帰る場所はないと言われたのだ。


その為、定期的に両親の元に里帰りして周りにも男である事を周知させていたと言う。だが、思春期を迎え女性の言動やしぐさに興味が出てきてしまう。


女性なのだから当たり前の事だった。そして部屋で閉じ込められていた感覚はなかったが、友達らしい相手も一人もいなかった環境から急に学生生活を始めて多くの人とふれあう機会が増えたことで同じ女性に興味が沸いてしまう。


ギバに目をつけられたのは、入学してからを1年ほど経ってからだった。建前上は、異性である女性達といつも楽しそうに会話している美少年。同じ男からすれば調子に乗っていると思われたに違いはない。


相手が相手だけに両親に相談する事もできない。そして、日常的に擦り傷をつくって医務室に通っているうちに女医さんに女であることがバレてしまう。たまたまその日は疲れから寝てしまった。そして運悪く生理がきてベットのシーツを汚してしまったのだ。


だが、女医さんは別に珍しいことでもないといった様子で黙っていてくれた。


それから相談相手は、女医さんだったらしい。でもイジメの事は迷惑がかかるので言えなかったようだ。


騎士学校を出ると言うことは、必ずしも卒業後に騎士としての所属先を決めなければならないと言うわけではない。騎士として認められることで当主としての最低限の箔がつくのだった。だから彼女は、卒業したら実家にもどされる予定だった。


一通りの話をきいたルビィが立ち上がってミュウを抱き締める。


「ミュウの両親を悪く言うつもりは無いけど、、、辛かったでしょ」


ミュウは、ずっと我慢していた事に気付く。涙が流れてくる。

親の不条理な期待に答えようと頑張ってきた。

今日みたいな事はこの先、隠しているかぎりずっと続く。そしてそれが両親のためだと辛い事を呑んで生きなければならない。


でももう限界だった。


自分の居場所、存在価値が無くなる事を心配していたが、すでに自分自身が無くなっていた事に気づく。



△▽


そんな悲しげな彼女を見ながらジルは思う。


ミュウの両親も最初は、上手く行くなんて少しも思っていなかったはずだ。それが1年、2年と経過するうちに期待をするようになったはずだ。そして、計画ではこの騎士学校さえ乗りきれば、彼女に男の子を産ませればそれで終わる。彼女は、その為のつなぎでしかない。


イジメは陰湿で短絡的な愚者による攻撃が多い。トラウマにさえならなければ早期の解決方法も多い。だが彼女はイジメが終わっても本質的に幸せになるのだろうか?


親の期待に答え、子を生み育てる事に生き甲斐を感じるかもしれない。だがそれは、未来の可能性の話であって今の彼女はあまりにも生き苦しそうだった。


『運命にあがらえ』


ジルの脳裏に浮かぶ。

彼女は、今何を望んでいるのか。彼女は本当はどう生きたいのか。


僕が聞くよりも真っ直ぐな優しさのルビィが聞いたほうがいいだろう。

時間を置いてからルビィにミュウが本当はどうありたいのか聞いてもらう事にした。


ジルは、部屋にルビィとミュウを残して後にする。まずは、目の前の簡単な方の問題から片付けよう。さっきは、準備不足だったが今回は負けてあげる気はない。


さっき、脳裏に浮かんだ言葉がなぜか彼女の事だけでなく自分の事のように感じたからだ。

部屋に戻ると、少し改良を加える。

昨日サインした誓約書の内容を思い出す。


誓約書の大まかな内容は以下の通りだ。

1、学校内での行事で一定規模以上の技術を使うことを禁止する

2、行事とは単位を必要とする学校行事または活動とする

3、一定規模の技術とは授業カリキュラムを超えた範囲の独創的な技術の総称である。

4、事前に申請した技術で許可された利用範囲であればこれを用いてよい。


と、そん感じで第20項ぐらいあった。

注目すべきは、学校行事でなければ関係ないと言うことだ。


ただ、暴力はご法度なので圧倒的に無力化することが大切である。

さらに大義名分もいる。誰がどうみても言い訳できない状況を作り出しあたかも正当防衛に見せることも必要だ。相手が相手だしね。


あの短気さから言えば夕方頃には、仕掛けてくるだろう。そこを狙うか。

喧嘩を売る相手を間違えた事を後悔させないと。


△▽△▽


「おい、アイツ。判ったか?」


「はい、すぐ判りました。今年の新入生で成績トップの秀才らしいです。でも実家は吹き飛ぶような貧乏シングルマザーの息子です。」


「昔から実力なんて。家柄でだいたいきまるんだよ。頭のいいやつは、金と権力のあるやつに使われて多少の金で満足してりゃいいものを、俺にたてついた事を後悔させてやる」


「今どこにいる?」


「隠れもしないで書庫館の前で、呑気に読書しています」


「じゃぁ、ちょっと狩りにいきますかね」


△▽


ジルは、読み掛けの本を楽しむ。これで本当にきたら凄いな。


「おい、このクソ平民!」


え、本当に来たよ。


揃いも揃って、さっきと変わらない面子がジルの前に立つ。


「わかってるよな?」


「え、わかるもなにも誰ですか?」


「は? 舐めてんのかテメー。この俺は、バドール家のギバって言えばわかんだろ」


「すいません。名家のバドール家でしょうか。

それともチンピラが名乗ってるだけでしょうか? まさかと思いますが皇帝陛下の息子さんとか意味不明な事をおっしゃいます?


あんな立派な皇帝陛下の息子さんがこんな平民風情の少年を痛め付けようとするなんて信じられません。それに同級生のミュウさんを陰湿にイジメてる人が皇帝陛下の息子であるはずはないですよね」



「んぁ!?。お前まじで死にたいみたいだな。俺はギム皇帝の息子ギバだ!

お前ら、アイツを押さえろ。顔に一生残る傷をつけてやる」


ジルは、システム起動を開始する。

重力無効化装置は、なにも攻防だけではない。捕縛ができる。

重力無効化とは裏をかえせば重力操作なのである。

浮かすよりもただ増やすのは、超楽。


‼️


「うぁ、体が、、、う、ごかねぇ」


「それは、そうでしょうね。体重の10倍かかってますから。あと大変ですね。先ほどのまでの会話ですが、全てリアルタイムで帝都中に放送されていましたので皇帝の息子といえど民意には逆らえないかもしれません。頑張ってください。」


「あ、お迎えがそのうち来ると思いますのでそれまで、そこで反省していてください。では次があればお会いしましょう」


「、、、こ、ろ、、す」


「弱いのによく吠えますね。肩書きだけって可哀想ですね」


そういって、ギバと取り巻き3人をその場に放置してテラス席で優雅に読書の続きを楽しむのであった。


30分ほどだろうか帝国騎士が3名ほどギバの元へやって来た。

「お、おまえら、、あいつを、、つか、まえろ」


だが、帝国騎士はギバを完全無視してジルの元で一礼すると

「皇帝陛下より、この度は息子が大変迷惑をかけた謝罪するとの事です。いずれ日を改めて召還するので今回の非礼を詫びるとのことです」


「すませんが、この拘束を解いていただけませんか?」


「解いた瞬間、襲ってくるので嫌です。一人500Kgぐらいなので馬で引きずれば運べます」


さすがに、帝国騎士も困惑の表情浮かべる。

「しょうがないですね。一回、気絶させてもいいなら拘束を解きますがどうします?」


「それは問題ありません。暴れた場合は腕と足を切ってもよいと皇帝陛下から受けております」


「それなら、このまま拘束解いたほうが都合がよさそうだ」


「、、、気絶でお願いできませんでしょうか?」


ジルは、一瞬だけ30倍の加速重力をかける。見た感じは止まってみえるが、やられた人は超高速でぶん回されて気絶する感じだ。やり過ぎるとただのミンチになるので手加減は必要だ。


帝国騎士は、両手の少年達を抱えてその場を後にした。


ちょっとやり過ぎたかな。いや、ああいう奴は一度苦労したほうが伸びる。

素質はあるんだから、自分を見つめ直してまた戻ってこれるだろう。もしまた同じことしたら次も、容赦なく慈悲を与えよう。


さて、簡単な方はこれで解決したけどもうひとつはどうしたものか。

決めるのは、彼女自身だけど。


△▽△▽








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