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2ー55 温い

△▽△


おお、これが大浴場か!

ジルは、感動しかない。溢れるお湯。


レバー倒すとシャワーもあるが温かくて気持ちいい。水で体はあらうのが普通だったからそれに比べると天と地の差がある。


脱衣場の入口によく洗ってから入浴する事と記載があったのでマナーに従いキレイに洗ってから向かう事にする。


まさに洗礼からの祝福。


ジルは、少し熱いがこの体の芯から温まる感動を誰に伝えればいいいんだ!


「お、お前。あの目立ちまくっていた噂のルーキーやな。俺は二学年上のタロウってもんや。宜しくや」


突然、裸の兄さんから声を掛けられる。

「宜しくお願いいたします。ジルです。初めてお風呂入ったので感動している所です。お湯に浸かれるなんて贅沢すぎです。」


「お、良いとこの出かと思ったが苦労人か!ほな、俺と一緒やな。うちもほんまに、最初はビックリした」


タロウも獣人とに間に産まれたハーフらしい。ジルとは違うパターンで見た目は獣人に近い。


「なに族ですか?」

「確かにここらじゃ、あまり知られてないから無理もない。白熊(クマ)族だよ。フェンド出身だよ」


「あ、名前なら知っています。かなり北の方の大陸でも常に雪が残る場所ですよね。」


「おお。わかってるねぇ。そうなんだよ。だからかなり、大陸の中でも、生活様式がだいぶ違ってな。


最初の頃は本当に失敗だらけやった。そんで、疲れた時の癒しになったのがこの浴場って話や。だいたいの事はここに来ればどうでもよくなる。


トランスゲートが無ければ片道5年は掛かるから来ることも無かったが、便利な世の中なったもんだ。」


そんな感じで意気投合した二人は、また近いうちに会おうと約束して別れた。


タロウさんか。いい人だったな。

つい長居をしてしまった。アスカ達は、他を見て回ると言っていたので姿はない。

もう、夕方近くなってきた。そう言えば、ここの書庫も見てみたい。アスカの家の書庫は、軍事関係と理論や仮説などの本が多くあれはあれでジャンル分けできる。


学校と言っても校舎は3つもあり、さらに複数に専門施設もあり敷地は広大だ。南区の外縁に有るため緊急時は帝国の壁になるような場所でもある。大半の生徒は、寮に入るようだジルは母が心配なので通いを希望していた。


そんな母であるが、今日で世界が一変してしまった事にまだジルは帰宅してないので気付くはずもない。ジルは、案内図をみながら東の専門施設としてある書庫館に向かう。


洋館の落ち着いた作りで本が傷まないようにか窓は少ない。テラス席とカフェが併設されており何人か学生がお茶をしていた。彼らは、ジルの姿を見掛けてもそれほど気にする様子もなく、読みふけている本に視線を戻していた。


あー落ち着く。そうだよ。自分の世界に没頭するその姿勢こそ求める環境だ。

ジルもさっそく、建物に入る。カウンターには猫耳のお姉さんが座っていた。ジルの姿を見るとニッコリと会釈をしてくれた。


「どのような本をお探しですか?」


「どんな本があるか興味がありまして、今日が初めてなので教えていただけませんか」


「はい、喜んで。私は司書官のフェマと申します。貴方はジルさんですね。今日は大変でいらっしゃったでしょ。この先は、私語厳禁です。ゆっくりと自分の時間をお楽しみくだだい」



あーーー。染みるような言葉だ。すっかりフェマさんのファンになってしまった。

「フェマさんは、ここは長いのですか?」


「そうですね。もうここを卒業してから10年ほど経ちますが、卒業してからの配属先がこちらでしたのでそこからずっとおります。」


「蔵書数はどのぐらいですか?だいぶ、大きな館のようですが」


「そうですね。大陸中で発行される文献や本、論文などを保管しておりますので50万ほどになるかと思います。」


‼️


おお、それは凄い。

「中には。子供が読むような絵本なども含まれますのでジルさんがお好みの論理書籍や論文の類いはその1割ほどです」


いえいえ、私は読めればそれでいいにですよ。絵本だって実に考えられたものが多く、学ぶことも多い。挿し絵が物語に深みと色を与え読む者の想像力をさらに掻き立ててくれる。


文字が少ないのは、詩集と同じぐらい人により感じかたや、その日の気分によって全く違う文章に感じる。この技術は素晴らしいと思う。


あー。オデじいちゃんを今度連れてこよう。

じいちゃんも、絵本が好きだ。特に竜が出てくものは特に。


「外部の方も入館可能なのですか?」

「ある程度の基準ないしの線引きはありますが、ジルさんの知り合いなら問題ないと考えます。」


おお、特待生特権か!


今日は何を読もう。

「探すのも楽しい発見がありそうです。フェマさんありがとう。ちょっと遊んできます。」


ジルの後ろ姿を見送るフェマは、姿が消えるまで見つめていた。

やっぱり面白い子ね。会うのは初めてではない。教会で何度もすれ違っていた。あのいつも読書をしていた少年だった。フェマも物心ついた時から本が好きだった。当時は、人見知りも激しく声をかけることも誰かと語らうこともなく、ひたすらに自分の世界に浸っていたのを思い出す。彼女は、いまの仕事が好きだった。


大好きな本にかこまれ毎日のように新しい本がこの書庫にやってくる。気にすることなく読書を仕事にできた。熟読するものもあれば、内容だけさらりと確認し彼女がきてから分類しなおしたインデックスで棚を自由に整理する。


カテゴリーごとにコードを着けて管理しているため直ぐに探しだすことも可能だ。

彼なら『あの本』にたどり着ける日もくるだろう。


フェマは、カウンターで読書を再開した。


△▽△


凄い、凄いよ。とても綺麗に整理されていた。本棚がフロアーと細かい棚毎に陳列してある。いつでも取って座って読めるように棚の脇に簡単な椅子が置いてあった。


ジルは、棚から一冊の本を取り出す。

題名は、「竜と王」母が幼いころ読んでくれた。

全10巻からなるそのおとぎ話は、改定版で古い言い伝えを今の言葉や文化にあわせて手直ししたものだった。初版は、10年ほど前。今の皇帝が赤竜の背に乗って広場に舞い降りたことで帝国のおとぎ話が再燃。改定されたこの本がうれに売れたらしい。母は、友人から譲り受け僕に読み聞かせしてくれた。


世界の広さ、美しさ。竜という見たことのない生き物の存在。幼心に与えた衝撃は、大きかった。今、思えばこれがなかったらここまで本が好きになることはなかっであろう。


△▽△


アスカは、家に帰宅しシャワーを流しながら浴槽に浸っていた。

ジルたらどこいちゃったのかしら。一通り、見学して大浴場に戻るとすでに出た後だと受付の人が教えてくれた。


探したが見つからないので諦めて帰宅することにした。

今日は、帰宅するとエマお母様とお爺ちゃんのバイヤお爺様がすでに帰宅をなさっていた。

入学祝いをしてくださるようだ。エマは、明日からは親元を離れ寮生になる。


これは、サリード家の伝統のようなものらしい。貴族が多い学府に行こうが、帝国騎士を目指す騎士学校にいこうが人間としての視野を広げるため家から出るのが慣習だった。


「アスカ、今日のスピーチ見事だったようだな。ジルと言ったか今度、私にも紹介しなさい。」


現サリード家の当主であるバイヤである。10年前を思い出していた。突然、娘のエマが妊娠したと言った。相手を聞いても答えない。ただ幸せそうにお腹をさすって「産みたいの」そう言った。サリード家としては認めるわけにはいかなかった。だが親としてはそれを拒むことができなかった。少なくともエマの血をひく者である。


産まれた子供にはアスカと名付けた。エマに似ているがどこか懐かしい少年の顔を何故か浮かぶ。バイヤは、あらゆる情報網を駆使して孫の父親を探したがその手掛かりは微塵もなかった。


バイアは、神がエマにお授けになった子供だと考えるようになった。

もともと普通には生きられない家だ別に父親がいまいとも育つ事はできる。このサリード家が続けばそれでよい。


エマは、アスカに尋ねる。

「アスカ、入学祝いに何か欲しいものはある?」


「お母様。私、お母様と旅行がしてみたい。1日でいいの。日帰りでもいいわ」


そう言えば、忙しさを理由にあまり親子の時間はなかった。親子で旅行などしたこともなかった。まだ子供ながらずっと気持ちを押し込めていたのね。


エマは、アスカを抱き締めると優しく頭をなでた。

アスカは、何故か涙がながれるのを止めることができなかった。

寂しかったのだろう。母の愛に、、。


△▽△▽


「閉館しますよ」


フェマは、椅子にすわって本に集中する少年に話かける。


・・・・・。!


「え、今何時ですか?」


「もう、20時手前ぐらいかしら」


「あーやちゃった。急いで帰らないと母さんが心配する。フェマさんありがとう。また来ます。」


ジルは、急いで支度をすると足早に書庫館を後にする。

フェマは、ここでの仕事が一つ増えた事を嬉しく思った。彼に時間を告げることだ。


彼女はまた自分の本を手に取り読み始めた。


△▽


ジルが家に近付いたが部屋の灯りがついていなかった。急に心配な気持ちが押し押せる。集合住宅だからご近所さんとは仲がよかった。


部屋に近付くと、隣の部屋にすむビルさんが顔を覗かせた。

「おお、この時間の帰宅で正解だ。夕方まで大変だったぞこのあたり。お母さんのことは心配いらん。いま身を隠しているから此処に向かうといい。」


そう言って、ニア母さんの夜の勤め先のマダムがいる住所が書いてあった。

「日中なんかあったんですか?」


ビルさんは、頭を掻きながら教えてくれた。

「何か、入学式から帰ってくたら凄い取材の数の申し込みがあってニアさんが最初対応していたようだけど野次馬も集まってきて通りが大変な事に」


話の続きはこうだ。

その後、ご近所さんも対応にあたってもらったが切りがないのでニアさんに隠れてもらうことに。この集合住宅は、もといマダムの持ち物なので相談したところ落ち着くまで店でかくまうことにしたらしい。


その原因が誰なのか、自分がよくわかっていた。

「ビルさん、ありがとう。母さんのところに行ってきます。」


繁華街の裏路地を進む。幼いころはよく、母さんに手を繋いでもらいお店が終わるまでマダムのもつ控室の一室に寝かせてもらっていた。マダムは、ジルにとってお母さんのお母さんみたいな存在だった。


お店の裏口をノックする。

「ジルです。すいませんご迷惑おかけして」


そう言ってお店の中に進むと静かだった。

あれ?誰もいないのかな?


そう思った瞬間。

部屋の灯りがつく。


「ご入学!おめでとうー。そして最高学府卒業おめでとうー‼️」


え、え。なんだこれーーー。


お店はジルも知る常連さんと綺麗なドレスをきた母さん。母さんの友達の綺麗なお姉さん達。それにマダムの姿があった。


「あ、あ、ありがとうございます。すいませんご迷惑おかけして」


マダムが近づいてきて声をかける。

「なにが迷惑だよ。子供のくせして母さんをあんなに喜ばせるなんて大した者じゃないか。ニアなんて、ここに来るなり私の息子が私の息子がって泣きながら大変だったんだぞ」


笑いながらマダムは、ジルの頭をいつものようにぐしゃぐしゃと撫でてくれた。

彼女の頑張ったな。という表現は、いつもこれだった


「僕も今日初めて知ったのでびっくりしました。」


「立ち話もなんだ。今日はお得意さんと店の皆で貸し切りだ。ジルも食べて飲んできなさい。あ、お子ちゃまはジュースだぞ。エマ、今日は息子の相手だ。親子水入らずゆっくり話せばいい。」



母さんは、とても綺麗だった。薄い緑髪にあうようにシルクの白いドレスを着ていた。母さんとゆっくり話せる機会は多くはなかった。

「母さん、今日も綺麗だね」それを聞いた母は、顔を真っ赤にして喜んでいた。そして、僕が小さい時の話や、学校での初日の話。


そして、エマは父親の話を始めた。

「ジル、別にに父を恨む必要はないのよ」


「でも、母さんが苦労しているのはその人がいないからでしょ」


「ジル、お母さんは一度もジルを育てて苦労に感じたことはないわよ。幸せですもの。それにジルをこの世で生きられる理由は、お父さんのおかげなの。これから話すことは真実であり現実ではないわ。信じなくてもいいし。信じてもいい。母さんには二つの記憶があるの幸せなあの人と過ごした記憶。そしてそれ以外の記憶の二つがあるの。」


そうして母さんは夢の話をした。

現実の母と夢の母は、同じ所が一杯あるが微妙に異なる。そして自分が生まれて直ぐあとから大きく変化していた。夢の母が愛した男。ジルの父親は『アル』というらしい。


ジルも記憶の片隅に父親がいた存在を感じていた。


大岩、竜、湖、、、、。見たことがないはずの光景が脳裏に浮かぶ。

そして、顔はみえないがうっすらと暖かくこちらを見つめる男の姿がみえる。


‼️


「母さん、それは夢じゃない。僕もいま見えた。見えたというより覚えている。」

母さんは、優しく頷きながら

「そうね。あなたはアルの息子。そして私が愛した男の子供。あなたのお父さんは、何か訳があって世界から切り離された可愛そうな人なの。恨んではいけないわ。」


間違っていた。お母さんが愛する人が世間のろくでなしと同じわけがない事は判っていた。


「僕が、母さんの為に父さんを見つけるよ。今でも父さんのことを愛してるのでしょ」


母さんは、静かに頷く。誰にも信じて貰えなかったこの想いを世界せ一番愛してる息子が信じてくれたのだ。静かに涙がこぼれ落ちる。


そんな母の姿をみてジルは決心する。自分がこの力を持って生まれた理由がこの為にあるということが。母を救うことできるのは自分だけだと。


母さんは、その後、夢話を続けてくれた。夢が正しければ僕には腹違いの兄弟がいるようだ。父親以外の人物は別の運命を上書きされたのかおぼろ気ではっきりしないが母は気づいていないようだったがジルは推定することできた。


△▽△


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