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2ー54 階段

△▽△


ジルは、入学までに1ヶ月あまりとなった。

今日は長い間、お世話になった教会に挨拶に向かった。


正面からでなく、いつも裏の勝手口からはいる。階段をあがると扉がある。いつもどおり扉をノックすると老人が出迎えてくれる。


「オデじいちゃん。今日は区切りの挨拶にきました。もうすぐ帝国騎士学校に入学することが決まりました。これもじいちゃんが本を一杯読ませてくれたおかげです。ありがとうございました。」



そう言えば、今年、とんでもない優秀な成績をおさめて合格した者がいると噂になっていたが、誰のことかオディールは気付いた。それもそうじゃ、こやつをおいて他にいまい。



「おお、立派になられた。じぃは、信じておったぞ。お主の実力なら必ず自分の道を開けるとな。それじゃ、合格祝いにこれをやろう」


「これを必ず、入学式で身につけておくのじゃぞ」


「こんな高そうなもの頂いて宜しいのですか?ありがとうございます。」


それは、竜の紋章が入ったブローチだった。銀貨ぐらいの大きさであった。細かい装飾がされており魔道具の一種であることが判る。マナ操作が出来ないので宝の持ち腐れだが。


「いやいや、じぃに方がジルに感謝せねばならん。とても楽しいひとときだった。これほど熱く語れる相手はいなんじゃった。ジルがよければ時々顔を出してくれんか?。老人は暇なのじゃよ。」


「はい、最近友達ができたので連れてきてもいいですか?」

「ああ、ジルの友達なら構わないさ」



老人は、嬉しそうにジルが部屋を後にするのを見送った。


△▽△


校舎の入口には、大きな門がある。

「帝国騎士付属学校 入学式典祭」と、でかでかと看板が掲げてある。


ジルと母親のニアは、綺麗な服装で入学式の会場へ向かっていた。

ニアは、途中で保護者席に移動する。


ジルは、案内されるがまま教室に通される。下級生の教室には、1クラス50人程度だろうか。全部で4クラスあった。


「ジル!」


後ろを振り向くとアスカの姿がある。

「クラスが一緒になったみたい。ってことは、このクラスが特待生クラスなわけね」


クラスの全員が特待生と言う訳ではない。特待生がいるクラスというわけだ。特待生は、成績上位者や特別な力を持つものなど入学金や授業料の免除。それに加え、色々な特典がついていた。


「ねぇ、アスカって何か周りから避けられてる?マナの流れが特殊で周りの視線が、、」


「そうなのよ。お家柄というのか。まだ、警戒されてるみたい。少しすれば馴染むんじゃないかしら、そうだジルも先生に呼ばれていたわよ。行きましょ」


来たばかりの教室を後にして、先生達がいる部屋に向かう。

アスカは、落ち着いた様子で部屋の扉をノックする。

「アスカ、ジル参りました。」


「ああ、君達か入ってくれ」


ジルとアスカが部屋に通されると二人が立っていた。

他の先生達は、入学式の準備で出払っているらしい。


「私は、ここの校長で彼は、君たちの担任のバードという。早速だが、スピーチの内容について打ち合わせを始めてほしい」


ん、そうかアスカは入学生代表としてスピーチするのか。大変だな。ご苦労なことだ。


「では、アスカ君も手伝ってくれ。成績では二人とも1位だがこちらの手違いでジル君だけ全く別の問題用紙が配られたようなので今回は二人にお願いする異例の形をとる。」



「はい、ジルと見事なスピーチに仕上げます。」


‼️


「え、僕もするの?。人前でしゃべるのなれてないよ。」

「大丈夫よ。もう十分、目立っているじゃない。そのブローチつけてる時点でアウトよ」



「ん、これはオデじいちゃんがくれただけだよ。何かヤバいものなの?」


「ヤバいわ。それって相当ヤバい代物よ。だってそれ最高学府の首席を示すものだもの」


‼️


おい、学府に入学した覚えはない。


「そのことは、オディール様からうかがっている」

校長が話に割ってはいった。


「君が一人、別の問題用紙を解いていた話をしただろう。あれは最高学府の卒業問題であり、その全科目なのだよ。普通は数年かけて1~2科目程度の認定を受けるが君は1日かけてその全ての課題に新しい論理を構築し、その上でウルロボス様が正解である証明をなさった。


そして、全科目で君は今年受けた最高学府の卒業生のなかで最も高い成績を修めたのだよ」


「よって、適切な手順で受験したことを認め、騎士学校入学と最高学府首席での卒業が同時に認められた。」



へーーー大人の世界って難しいのだな。

ジルは、よくわからんけどそう言うことになったと素直に受け入れる。


「お母様が裏で動いたわね。ジルの実力を認めさせる強制手段と言った所かしら。朝の笑みがいつもと違う理由がよくわかったわ」



「あと、ジル君。スピーチの後で申し訳ないが式典の最後に最高学府の卒業証書授与式も行う。毎年、首席に卒業証書を授与するのは皇帝になるので失礼のないようにたのむ」



‼️‼️


おい! 今、聞き流していけないことを言ったような。

「皇帝って、陛下のことですか?」


「それ以外、誰がいると申すのか」

笑いながら校長と担任は部屋を出ていった。



「アスカ。話がぶっ飛びすぎて庶民には着いていけませんが」


「しょうがないわよ。生まれは選べないもの。運命だと思って諦めなさい。」


「このまま評判が広まったら、大賢者に目をつけられるのも時間の問題ね」


アスカは、ニアニアしながらスピーチの原稿を書いていた。



△▽△▽


式典は、厳かな雰囲気の中でおこなわれた在校生代表がスピーチをした後にジル達の番になる。母さんが遠くから見つめていた。


何か泣いてるぞ。周りの人が称賛している雰囲気だった。

そりゃ、息子が入学生代表としてスピーチに上がるとは聞いてない。興奮しすぎて泣いたと思われる。


アスカが作った文章を二人で読み上げる。

内容は、この帝国に支える立派な騎士になるため。鋭意頑張ります的な感じだ。


そして、式典が終了間近になって後ろの方が騒がしくなる。


「皇帝陛下が参られます。厳粛にお願いします。」


立派な鎧に身を包んだ女性が先導している。

あれは! 帝国騎士隊長レジュダ様ではありませんか!


後ろに大きな男性がいる。初めて間近でみる皇帝陛下であった。


壇上に皇帝陛下が上がる。


「これより、最高学府首席の卒業授与式をとりおこなう」


厳粛を言われていたが会場全体がどよめく。


皇帝が言葉を発する。

「驚くのもしかたがない、まあよい。今年の入学生の中に首席合格者がいる。前にでよ」


ジルは、アスカにそくされ椅子から立ち上がる。壇上へ向かうが周りの視線がヤバい。そして母さんに至っては、顔が完全に固まっている。もう、思考を停止させた感じだ。


ジルは、皇帝陛下の前に進みでて頭を垂れる。

「頭を上げよ。それでは授与する」


「このジルに皇帝ラグーン・ギム・ベルケルの名において全科目歴代最高得点で優秀な成績をおさめ最高学府を卒業したことをここに認める。今後も帝国の為にその英知を奮うことを期待する!


また。けして、大賢者の元に行ってはならん。行きたいときは、必ずこの私に相談するように。今回の功績と渡航制限をかんがみ褒賞を与える!何か申せ」



ほう、言ったらくれるのか。

何がいいかな。お金はこれから稼ぐからいらないや。お金では買えないものがいいなぁ。


・・・・・・・・・・・。


「はい、ではトランスゲートの永久無料利用フリーパスとポータルを下さい!」



会場がさらにざわめく。

ポータルは、一部の人しか持っていない。数が非常にかぎられ帝国が管理している代物だった。そしてトランスゲートも便利だが多少のコストがかかった。また行先にも制限が多い。


皇帝は考える。これだけの知恵が働くものだ安易に許可すればどんな結果がまっているか想像できない。


「ジルと言ったな。お前は、それで何を叶えたいのだ?」


ジルは、真っ直ぐ皇帝を見つめいい放つ。

「はい、母さんにあんだけ苦労をかけたまだ見ぬ父を見つけ出して、一発なぐってやります!」


皇帝はそれを聞くと

ガァハ、ハァ、ハハァー。と大きく笑ったのである。


「そ、そうか。親父さんをぶん殴りにいきたいと。さすが帝国騎士を目指すものだ。良いだろう手配しよう。」


そうして、卒業証書授与式も終了した。


△▽


クラスに戻ると先ほどまでアスカに向けられていた視線は全てジルがもらい受ける形になっていた。



そして、先生が入ってくる。

「はーい。注目 君達まずは、自己紹介からお願いします。私は担任のポットです。一応ハーフエルですが、見た目はほぼ人間に近いです。これでも70才、そこそこ生きてきたので悩みがあれば相談にのりますよ。それでは、順番に自己紹介をお願いします。」


そして、クラスの皆が一人ずつ自己紹介を始める。

大陸中から優秀な若者達が集まってきている。

身分に違いはここでは関係ない。それぞれが信念をもってこの騎士学校を目指したことが伺えた。


クラスの半数が紹介を終えたところでジルの番がくる。

ジルは、紹介する必要がすでにあるのか?。簡単ではあるが自己紹介はしておこう。


「悪目立ちしましたが、中身はいたって普通です。改めてジルと言います。これからよろしくお願いします。」


もっと凄いことを期待していたのか肩透かしをくらったような顔をしているクラスメイトが多かった。続いて、アスカの番だったがアスカがサリード家の娘で成績優秀なことも周知なのでこちらも紹介する必要性も少なかったが、さすがお嬢様。家柄らしい上品な挨拶をして男のクラスメイトは、釘付けになっていた。


最後に一人が自己紹介を終えると本日のオリエンテーションは終了した。

明日から本格的に授業が始まるらしい。今日は、自由に夕方まで施設内の見学や上級生達の各種倶楽部の勧誘があるので気になる所があれば入部すれば良いという話だった。


「ジル、どうする? ちょっと歩き回ってみるかしら。」


今、動いたら大変な事になるには目に見えている。しかし、最初が肝心だ1日経ってしまえば噂だけが一人歩きしてもっとヤバい事になりそうだ。結果はともかく至って普通の男の子であることを認識してもらうのも大事な環境づくりだと思いなおす。


「そうだね。少しでも心象を払拭したいしね」


「ジル。あまり、期待しないほうがいいわよ。あなたすでに普通の学生生活なんてフラグはへし折られてるわけだから。行くとこまで行くほうが生き易いわよ。普通なんて産まれる前に持って無かった私が言うんだから安心しなさい。」


ん、さらりとひどい事をいうじゃないか。

いや必ずなんて事はないはずだ。こんなデビューでも無邪気に接してくれる人はいるはずなんだ。よし、友達を探そう。


アスカと、一緒に行動すると世間からどんどん離れていくのでここは少し距離をおいてと、、、。


ん、アスカさん?何を?


すでにアスカは、取り巻きらしい女子を引き連れていた。恐るべき女子の序列社会。


「ジル行くわよ!」



えーーーー。それを引き連れていくんかい!行くんですよね。行かないとだめなんですか?拒否権なさそうですよねえ。はい、フラグへし折ってるのおまえじゃーーー。



総勢5名の取り巻きにアスカを加えた派閥めいた集団が廊下を歩く。ジルはなぜかその先頭を歩かされる。せめて末席にしてください。これじゃ最悪の印象を学校中に振り撒いて歩いているみたいじゃないですか。



「あのー。宜しいでしょうか」


そんな一行に早速、声をかけてくれる人が現れる。

ジルは、期待大であった。


「はい、大丈夫です。」


メガネが可愛らしい大人女子である。

まだ思春期前のジルでも少し緊張する。


「二学年上のサリアと言います。広報倶楽部所属で、独占インタビューをお願いできませんか?」


ん、これはイメージアップのチャンスなのではないか!

いかに自分が庶民的であるか広報を手伝ってくれる人がこうも簡単に出会えるとはツイている。


「いいですよ。時間はありますので」


そんなサリアさんを横目にアスカが口を挟む。

「協力するわ。私が一番、彼の事を知ってるから何でも聞いて頂戴」



嫌な予感しかしない。って実質、まだ2週間の付き合いも無い気がしますが、、、。


倶楽部というのは、授業の放課後に志しを同じくする同士が集まり活動をしている小集団らしい。サリアさんは、将来は帝国騎士の広報担当としての道を希望しているらしく此処の広報部でそれなりの成績を出すと卒業後にキャリアとして優位に希望の部署に配属される可能性が開けるらしい。


「早速、質問ですがジルさんのお人柄を少し書き添えたいとこから記事の内容を広げていきたいと考えております。どうぞ日頃の様子や人となりが判るようなエピソードなどあれば教えてください。」


「はい、私は、、。本がすき、、。」


言い掛けたところで、アスカがしゃべり始める。

事実であるが言い方があるでしょうよ。すでに止めることができなかった。


嵐のように一通り、しゃべり終えるとアスカは満足したようだ。

ようやく、自分の口で補足しようとした時には、サリアさんは十分なネタがとれたらしく今日はありがとうございました。と言って行ってしまった。



ん、内容を整理しよう。

1、帝国随一の蔵書数を誇るモディリアーニ教会の本を全て暗証できる。

2、サリード家の次期当主である知の女神ウルロボス様の助手をしている。

3、最高学府の全単位を首席の成績で修めたがその学習期間は1週間程度。

4、サリード家と仲が良い。

5、教皇様と話をする間柄。

6、、おい!。

7、、、、おい!おい!。


終わった。完全に終わった。普通が消えた。

アルは、アスカを見つめる。アスカは照れた様子で言葉を返す。

「別に感謝しなくてもいいのよ。私は、あなたのお母様のためにも貴方の評判を下げるような事はしないから安心していいわよ。」



そこで、母親の名前をださんでくれよ。怒る気にもなれなくなる。


「アスカ、僕の為にありがとう。」


引いてだめなら押してみろ作戦に変更。逆に抑制されるかもしれない。


アスカは、ジルから誉めて貰うのに特別な感情を感じる。なぜかお母様に誉められるのと同じぐらい高揚してしまうのだ。


「つっっ次に行きましょう!」

赤面した顔を隠すのがやっとで脚を進めることになる。


その後、充実した施設内の見学して回る。

トレーニングルームに併設された施設で脚を止めた。


「シャワールームぐらいかと思ったら、大浴場まであるのね」


アスカのその発言にジルが反応する。

「え、温かい水で体が洗えるって事ですか?」


「そう、それどころか大きなお湯を溜めた水槽で泳げるレベルよ。お風呂のでっかいやつ」


‼️


「行ってもいい?」

「一緒には行けないわ」


「どうして?」

「だって、男女別だもの」


「あ、そう言う意味ね。そうじゃなくて、お風呂とやらに入ってみたい」


「もしかして初めて?」


「うん」


・・・・・・・。


ジルの貧乏ぶりを忘れてた。そうね。どんなに頭はよくても色々なことが追い付いて居ないことにアスカは気付いた。少し反省。


「行ってらっしゃい、そうだ我が家にも立派なお風呂があるから今度一緒に入りましょう」


その何気ない発言が、後に物議をかもし出すとはアスカ自身も気付いていなかった。


「いってきます。」


△▽△








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