1ー4 終わりの始まり
ローレンは、出掛けた。
小屋は、見つけたが栄養になりそうな食べ物がなかった。
幸いにも彼は、狩猟経験があるため雪山でも小動物や寒冷植物の生息場所に心当たりがあった。数時間後、彼は鳥とウサギを仕留め。薬草になる野草も少しだが入手する事ができた。
足取りは、重いが小屋に戻ると赤子の泣き声聞こえた。
ウエルズは自分の食べる食糧はもってきていないのに赤子にやる馬乳だけは多めにもっていた。まだ数日はもつがこれもどこかで入手しないとな。そんな事を考えるながらローレンは、慣れた手つきで赤子に馬乳をあたえ、汚れたお尻を綺麗にして新しい布で包んだ。
お腹が満たされ安心したのか、また眠りについた。
「....ロー..レ..師、、」
「気がついたか、まだ喋らんほうがいい。重度の凍傷と栄養失調だ。意識が戻っただけ、奇跡にちかい」
ウエルズは、自分の事より何かを探してる感で目だけ動かして、あたりを見渡しているようだった。
「お前の息子は、無傷で元気だぞ」
それだけ聞くなり、安心したのか眠りについた。
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結局、冬の間この小屋を少し改修してやり過ごすのが懸命と判断した。
怪我人と赤子の両方を生かす術は、途方もなく難しい環境だった。だが当てがあるわけでもない戻ってもあそこのほうが地獄だろう。
運良く、町から逃げてきた馬をみつけた偶然はかさなり、子供を生んだばかりの雌馬。納屋には、それなりに藁があった為。この冬を赤子が生きる算段はつきそうだった。
問題は、ウエルズの方だった。さすがに、医療にまで知識は乏しく風邪などの簡単な症状なら薬草を煎じて飲ますぐらいはできるが。重度の凍傷と栄養失調を素人が完治させるだけの運は持ち合わせていなかった。一度は、意識を戻したもののあれから眠り続けている。
先が長くないことは、理解できる。運命に逆らいたい一心で出来ることを探す。
ローレンは、少し遠いが一番近い町に医者を探しにいった。
だがその町はすでに人が住める代物でなく。生きてる人間の気配すらしない。略奪や殺しあいの跡だけがそこに人間がいたことを教えてくれた。
ローレンは、使えそうなものを探した。古い倉庫に毛布を見つけた。これからどんどん寒さは厳しくなる。食糧調達には、いまの小屋の方がむいているが寒さ対策をしないと全員、冬を越えられない可能性もある。雪ゾリに断熱用の材料と適当な家でみつけた薪ストーブを乗せ帰路についた。
ここに留まることを決め手から10日ほどでウエルズは、目を覚ますことなく息を引き取った。呆気ない死だった。息子は、そんな冷たくなる父を見ながら小さな親指を吸って目をパチパチさせていた。結局、息子の名前も聞けなかったな。
1歳の誕生日に命名した名を御披露目するのがここら辺の風習だった。だからこの赤子の名をしらない。だが大抵は生まれてすぐに家の中では両親は子供を名前でよんでいる。
「おまえは、なんて呼んでやっていたんだ、、。」
すっかり冷たくなったウエルズ。息子みたいな存在でもあり。友人のような存在でもあり。
失った心の穴を埋めるにはあまりに苦しかった。
もし、この赤子まで失ってしまえば自分が存在する意味を失いそうだった。
答えのない答えを探して時間だけが過ぎる。赤子が腹を空かせたのか泣き始めた。
考えるだけ無駄だ。おれがやることは、今をこいつと生き抜くことだけだ。
決心がついたローレンは、赤子に馬乳を飲ませるた後に小屋を出た。
見晴らしの良さそうな丘を探すと、降り積もった雪を掘ると地面が見えてきた。
凍結した土は、硬いが微量のマナを流し水に換えることで土を掘り下げやすくした。
天候が良さそうなため、一旦作業をやめ次の日に白い布でくるんだウエルズの遺体を埋葬した。獣に掘り返されないように気休めだが大き目の石を積み上げ墓標とした。
領地一族、ましては王の息子の墓としてはあまりにも粗末なものだったがローレンは、深い祈りを捧げ。彼に彼の息子をしっかりと育てあげる事をこの場で誓ったのであった。
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春の訪れが近かった。
例年、スイングバードが南の彼方よりやってくるとその合図だった。
雪は、溶け。周りの木々に芽吹きが始まる。
ローレンは、ふとこの冬のことを思い出す。それは、ウエルズの埋葬後に遺品整理をした時のこと、ローレンは、目を疑った。
なぜ、これがここにあるんだ。
これが有れば、彼自身、家族、もしかしたら国一つぐらいは救えたのではないかと。
だが、これが全ての始まりであり。彼は、それが十分わかった上で持ち出し何処か安全な場所にでも隠そうとしたのではないかと。
王族として最後に民を守るため。戦いの火種に確実になる代物であるからこそ。自分の命、家族がどうなろうがこの力だけは使うまいときめた信念のようなものを悟った。
ここに捨ておいてもいずれ元凶になるであろう。ならば、私がウエルズの意識を引き継ぎ使わざる者としてこれを適切に処分できるその時まで預かる事にした。
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世界からアームズが消えてから2年半の月日が経過した。
ウエルズの息子には、アルと名前をつけた。
2歳を迎え、もうすぐ3歳になろうかという年頃。さすがに放浪の旅で育てては両親に申し訳ないと思ったローレンは、王国騎士になる前の若いころに聞いた話を思い出した。
石ころというには、大きな岩を中心に小さな村があるとかで豊かな土地に自給自足している民がいるとか、いないとか。




