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2ー45 種

△▽△▽


約1ヶ月前。

トランスゲートの開通に合わせる形である計画を始動した。


ハイアルアル鳥とはその捕獲難易度により、一般に流通することのない特級食材であった。また世界中に散らばる一級の料理人がかなり難易度の高いマナ操作により食材の味を至高の頂きに仕上げることができるがそんな逸材は多くはいない。



目指す高みは、あれど今回はある程度は味に関して妥協し、目的を優先する。それでも一般のアルアル鳥では普通に調理しただけでは難しい。その点、素材がハイアルアル鳥ならばベースから違うためある程度調理方法を工夫すれば至高の味わいに近くはなる。



かねてより、この会社の調達部門が産地でハイアルアル(ハイアル)の生態と繁殖について調べた結果。驚きの事実が判明した。


ハイアルは、1日に1個卵を産み。卵が孵るのに1日。雛から3日で生体になる。とんでもない繁殖力と成長速度なのである。それならば個体数がとんでもない数になるはずだがそういう訳ではない。餌がないのだ。


ハイアルは、チアの実と同じ理の中で生きている。

つまりその土地でしかハイアルが産まれないという事だ。


生まれても多くは、餌がなく死ぬ。

高所の崖の上に生える非常に限られた草をついばみ生きているのだ。

その土地以外で卵を産む事はなく。また卵が孵ることもない。



だが、一度孵ってしまえばどの土地でも生きられる。

ただ子孫が残せないだけだった。


となると話は、簡単だった。

元々、ハイアルの生息地域は一攫千金を求める命知らずの者達がたまにくるだけの土地だった。何処に属しているわけでもない。


そこで、崖の上にトランスゲートを設置し卵から孵った瞬間に捕獲を永遠に繰り返す。

また。本来、餌が少なく親鳥の数も上限がある程度それで決まっていたところを餌を供給し個体数を1000倍にする。


言わば天然の鶏舎である。


ハイアルは、崖の上にびっしりと生息することになる。

効率よく雛鳥を回収すれば1日の生産量はなんと100,000羽。

だいたい、普通のアルアル鳥の100倍のスピードで成長し、体も一回り大きい。栄養満点で一切れでも食べれば人なら2日食べずとも空腹を感じることはない。


はっきり言えば、理の中にある神の食材なのだ。


エサを求めてトランスゲートから放牧エリアに勝手に移動してくる。それも大量に。

そして通路に従うように十分に大きくなったところでエリアごと次のトランスゲートで食肉加工にまわされる。そこで雇った10000名の従業員が流れ作業で食材が傷む前に決められた手順で調理していくのである。



複雑な調理工程も一人で最初から最後までやるのは難しい技術がいるがこのコンベアー方式では1/1000の業務負荷しかないので子供でも出来る難易度まで下がる。1人一人は何を作っているかさえわからないだろうが工場での大量生産などそんなものだ。


そして、世界中のトランスゲートから商品として配られた。

価格は、小銅貨1枚で5ピース。1家族で考えるなら相当安い。

その上、旨い。いや旨すぎる。


貨幣経済でない場所もある。そういう場所ではやり方がことなる。

労働の対価として配給するのだ。


よって、この10000名以上の従業員確保にはそんな理由もある。

当然、労働の対価には配給だけでなく差額分の十分な貨幣も支払う。


そして、いままで畑仕事しかしてこれなかった大多数の人が違う仕事で働き。美味しいものを食べ。稼いだお金でトランスゲートを利用してお金を使い価値観を広げる。社会経済と人の尊厳が転換期を迎える。



夏も終わる頃には、世界の仕組みは変わろうとしていた。

それは、全てにおいて一人一人の人としての価値を押し上げた。その日を食べる為に生きる事から、自分がしたいことを出来る世界へと価値が変わっていく。


これがアルの目的であった。

予想通り。次の事象などは、起きなかった。


仮にハイアルが存在を消したとしてもトランスゲートまで同時に無くならなければ問題はない。何故なら多くの人は、あの美味しさを知ってしまったからだ。

人は目的さえあれば勝手に考え行動する。そのきっかけを作っただけなのだ。



ちなみにこの生産ライン構築は、レオが考えた。アルは、言われた通りの場所にトランスゲートを設置したにすぎない。


△▽△


ニアは、赤子に乳を与えていた。

うっすらとした記憶にアルが子供をとりあげてくれたことは覚えている。

意識がしっかりした時にはアルの姿はなく、トンファからはアルは、やらなきゃいけない事がありしばらく家を留守にしなければならないと言う事だった。


少しだけ寂しいが、トンファも子供もいるので落ち着いていた。

夏も終わろうかとする頃。


遠くからものすごいスピードでかけてくる足音が聞こえた。

エマは、嗅覚が鋭い。誰かはすぐにわかる。


「と、父ちゃん。頑張ったぞーーーーーー! 帰ってきたぞーーー!」


そんな遠くから叫んで走ってこなくても。

ボロ屋の扉が勢いよく開かれる。


そきには、アルが顔を真っ赤にして立っていた。

まるで、さっき産まれた子供を見る父親のように、

「男の子か?、女の子か?」



おい、知らんのかい‼️

お前さんが取り上げたんだろ!



ニアはニコニコしながらアルに我が子を見せる。

ニア似の薄緑色の髪の毛をした男の子だった。

獣人と人間のあいだに生まれる子供には、2パターンある。完全に獣人の時と身体能力が異常に高い素質をもつ人間の見た目の子供である。


今回は、後者のようだった。

顔の作りは、アル似だが目はエマそっくりだった。

我が子を抱きしめアルは、感動で涙するのであった。


「はやく、ローレンお爺ちゃんに孫の顔を見せてあげたい!」

「そうだ、ニア。感謝を伝えていなかった。俺の子供を生んでくれてありがとう」


ニアは、嬉しそうに笑っていた。


だが、その隣でトンファは少し浮かない表情していた。



△▽△


ニアと子供が寝静まるころ。

トンファは、アルのベットに潜りこんで真剣な表情でアルに問う。

ここ数ヶ月、相談出来ずにいた密かな不安を口にするのだった。



「ねぇ、アル。私は、子供を作らないほうがいいかしら、、、。」

アルは、トンファがずっと子供を欲しがっていたことを理解していた。


トンファは、誰よりもアルの理解者であろうとしていた。仮に子供を諦めたほうがよければそれでもかまわないと決心していた。



・・・・・・・・・・・。



「トンファ。心配かけちゃたね。僕の前では、そんな皆のお姉さんとして強がらなくてもいいんだよ。」


そう言われた途端にトンファは、今まで溜め込んでいた不安を吐き出すようにアルの胸で泣いた。本当に辛かったのだろう。アルは、彼女の頭を優しく撫でながらこう言った。


「今は、詳しくは話せないけど環境は作ったから。トンファとエマに一人ずつぐらいなら世界は許容してくれる。だから心配しないでも大丈夫。」


アルは、トンファに優しくキスをする。

トンファの服をゆっくり脱がし、乳房にキスをする。彼女の吐息を感じながら幸せを噛み締める。夜は、ゆっくりと流れていった。



△▽△▽


そして、2日後。我が家に顔ぶれが全員そろう。エマもトランスゲートの自動制御を完成させた所で一仕事を終えて帰宅した。彼女も久しぶりの我が家であり、久しぶりのアルであった。

ニアとトンファをそっちのけで服を脱ぎ出し、アルに迫る。結局二人が見てる前で事が終わる。欲求不満も解消したエマは、ニコニコしている。


ニアは、母乳が出ているうちは性欲減退であえて求められない限りは特にしたい気持ちにはならないとの事だった。ほんとに遠慮しているわけでは無いらしい。


そのおかげで残りの二人は気がねなく出来るらしい。


毎日、朝から晩までパンパンしている。

交代交代でトンファとエマとの子作りに励むのである。

1日10回。お、お父さん頑張ります。


なぜ、アルはこれだけの回数をこなせるかと言うとエマと研究の合間に開発した秘薬があったのだ。実は、以前にトロアさんとボムさんの温泉旅行に持たせた小箱に入っていたものがまさのこれである。


そして、秋風が吹く頃にはめでたく二人とも妊娠をした。

今回は、事前準備も十分したので1人目のような混乱はないと踏んでいる。

また、来年の夏には子供が二人増える。


うん、楽しみでしょうがない。


△▽△▽



アルは、ようやく大岩の村(故郷)へ帰省する算段をつける。

トランスゲートの準備をする座標は、そうだな分かりやすく大岩の上にでもしよう。

情報では、ラムズさんもまだ村にいるとの事だった。だいぶ迷惑をかけてしまった。お土産をたくさん持っていこう。


トンファとニアとエマ、もう動かせなくなった空中要塞バハムの代わりにトランスゲートがあるため皇帝も従者を連れて一緒に行くことにした。


「座標軸固定完了。転送シーケンスを開始します。安全のためポータルを身に付けてください」


このポータルというのは、後から作成した一種の安全装置だ。一瞬で指定の場所に転移できるがたまに計算がその土地固有のマナの影響で狂う時がある。

このポータルを持っていると、転送元へ戻ることが可能なのだ。一種の追跡システムのようなものである。なので、使い方によっては便利なのである。


例えば、行先で一通り用事を済ませたあといちいちトランスゲートにいかなくてもその場で転送元へ帰還できる。それを可能にしているのは、エマが開発した自動制御システムよる所が大きい。うん、優秀な嫁だ。


ちなみに悪用されないように色々な条件を設定している。

例えば、宝石店の盗難や、食い逃げを防止する機能がある。

ここら辺は、実はアームズのオペレーションシステムを模倣している。開発は不可能に近い。トランスゲートによる世界秩序の安定を基本にエルフの少女からソースコードを譲渡してもらったのだそれをトランスゲート用に最適化したに過ぎない。


また彼女曰く、トランスゲートそのものの多様は世界の理から外れるものではないらしい。あらかじめ世界に提供されている技術に過ぎないとの事だった。生み出す力でなくただ、場所を繋げてるだけで人の生活は変革するが、世界の理に変化はないとの事だった。


また、今回のアルの功績により世界の器が前よりもだいぶ大きくなったらしい。

じゃあ、子供をもっと作れるか聞いたがそれは特異点があまり、するべき事ではないと釘をさされた。確かに、これ以上不確定要素を増やすのも悪い気もする。積極的な子作りはもうやめておこう!。


△▽△


ギム皇帝は、転送までの待ち時間に話しかけてきた。

「それにしても久しぶりの解放感だ。ある人が善意で天災から人々を救う提案をしたかと思ったら、自分の会社の事業拡大を暗躍し急成長したようだ。その上、社会構造を急激に変化させてくれたおかげで法整備と決裁書類の山で寝る時間もない。本当に過労死寸前なのだ。これは謝罪はほどほどに自然の中で息抜きせねば本当に精神が病んでしまう。」



「そんなひどい人がいるんですね。怖い怖い。」


「ち、自覚ありか。それにしても本当にやる事、なす事。人智を越えておる。(ヨメ)りも異常だが次は何をしでかすか事前に教えておいてくれると助かる。」


「はい。過労で倒れたら考えます。」


「・・・・・・・・。真竜様どうかこの者に鉄槌を!」


そんな感じで転送シーケンスが開始され大岩の村に向かうのであった。





△▽


大岩の村で村長的な代表を勤めるアーネムは、ローレンに事の次第を伝えていた。

アルが敵であったはずの皇帝とこの村に訪れると言う。また子供が生まれる上に嫁が3人も。トンファは分かるが他の二人のことはわからない。


もう、一生会うことなど出来ないと思っていたがこんな機会がおとずれるとは思いもよらなかった。もうあれから3年の月日が経っていた。


そして、その知らせを持ってきたのがラムズという男だった。見ただけで相当な武の使い手とわかったが、彼が言うにはアルとその妻達のほうが規格外だと言う。


アルは、何となく予想はつくがトンファまでもがすでにあの男より強いという事実にも驚かされた。


初夏に来るとのことで、村は噂で持ちきりになったがローレンはこの大気を満たす異様なマナの動きのほうが気になっていた。


ローレンの予想通り、雨が続き日照不足が深刻化している。

アーネムを初めとした村人達は、畑仕事も出来ず今年の冬を越えるための種植えした作物が根腐れしていくのを悔しそうに見つめるしかなかった。


ローレンは、少しでも村の為にと動く。そこで助けになったのがアル達が来ることを伝えにきてくれたラムズと言う男だった。彼は見た目は本当に強面の刺青が全身に入っているが心の優しい男だった。何でも世界中を旅した経験があり、このような雨ばかりの土地でも生き抜く民の術を知っていた。


ラムズ曰く、このような雨の多い土地になった場合でも森は環境にすぐ適用するらしい。畑などの安定した収穫は見込めないが森の中では潤沢に糧が得られると言う。


だが、雨で足場が悪く土砂崩れなどの心配もあるためそれなりの技術を身に付ける必要があるとの事だった。

早速、アーネムとローレンはラムズさんを講師に迎えこの異常気象に対抗する術を村の若い者を中心に教育をおこなった。


その結果、村人のほとんどが簡単なマナ操作からであるが高いマナ適正をもっていることが判明する。ラムズさん曰く、トンファが異常な素質があった事は偶然でも何でもなくこの土地に長年すみ続けた村人の遺伝的マナの素質が高いのではないかと言う見解だった。


確かに、この土地のマナの濃さは他の地域に数十倍はある。


△▽△

雨が降る中、村人達は10名規模の班を作り森で収穫や狩りをした。今までの生活スタイルとは異なるが生きる為に出来ることを協力してやり遂げるこの村の連帯感には感心しかない。


これに私がどれほど助けられたことか。

改めて、ローレンはこの村で生きることができた幸せを感じた。


危険ながら安定した供給元を確保した事で村人達の不安も、自然になくなる。

当初、初夏を予定していたアル達の来訪もなく。今回のこの異常気象が関係していることは間違えない。まぁ心配するだけ無駄である。アルなら大丈夫だろう。



あっという間に2ヶ月ほど経ったある日。

急に大気を満たす異常なマナの流れが安定する。

久しぶりに晴天を目にする。村人達は歓喜する。土が流れた畑を整備する者と、引き続き森の恵みを収穫する者に別れ日々を過ごすことになる。


そんな時、大岩に木箱が突如出現した。

村人達は、驚いた。アーネムが箱を開けると急に笑いをこらえるような表情をする。

「ローレンさん。アルからです!」


その箱の中には、豊潤な香ばしい香りと共に一枚の手紙が添えられていた。

中には、お皿にもられた巨大な鳥の丸焼きが鎮座していた。

まるで先ほど出来立てほやほやといった感じで湯気が立っている。


村人全員を集めて昼食とした。


皆の前で手紙が読まれる。


△▽


『皆さんお元気ですか。アルです。


本当はもう少し早く伺いたかったのですが、天災の影響でおくれました。

それもこの度、解決できましたので改めて来月には、子供と嫁たちを連れて伺います。

あ、皇帝もついてくるけどオマケみたいなもんだから気にしないでください。


追伸、この度うちの会社で作った新商品の一番最高級メニュー商品を贈ります。


ローレンお爺ちゃん、美味しいすぎるのでビックリして倒れないようにね。

村の人、皆で食べて下さい。


また感想を聞かせてください。


アルより。』


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