1ー41 花見
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春のぽかぽかとした陽気のある日。
アルは、ギム皇帝とバイヤさんの3人でランチミーティングをしていた。
「ところでアル殿。事業の滑り出しはどうだ?」
ギム皇帝は、アル殿の様子を伺いながら本日の本題をきりだした。
それもそうだ。何しろとんでもない金がこの事業で動く。国を預かるものとしては、その動向に注視せざるおえない。
その上、皇帝の権限でどうにもならないからだ。
なぜならアル殿は、今はこの国の法を遵守しているが治外法権を認めているのだ。そして、この国の軍事力を昇華するだけの影響力を持つ相手でもある。
だが、今のところ目立ちはするが悪影響もなく。むしろ奪う活動というより新しく初め。そして育てるという本質的な活動のため良物件としてメリットしか感じていない状況だった。
なによりもあの王国で食べた感動をもう一度味わう事ができるなら皇帝は、全面協力もいとわないと考えていた。
「今は、まだ漠然としてはおりますがまずは知って、見て、感じてって所からですかね。自分たちが何を目標に行動しているのか。社員一人一人が理解しないことには、同じ方向を向いているとは言えないので」
「ほう、兵法と変わらんな。アル殿は若いのに経験もなしでどうしてそのような価値観があるのだ?」
「経験がないと言われますが、そんなことはないですよ。ジル皇帝が焼いた故郷では、皆が協力しないと冬など越えられませんでした。人数は少ないですが本当に皆、家族のようでした。」
「焼いたの部分がだいぶ誇張だな。まぁ今のアル殿の帝国への貢献を考えればそろそろ、あの村にも帝国皇帝として陳謝しても良いと考える。そうえば子供が生まれたら一度、故郷に戻りたいと申しておったな。ならばその機会に是非とも村へ同行させてもらい陳謝と賠償をさせてもらいたい。どうだろうか」
アルは考える。これは相当な時短になる。何しろ転移で一瞬で村に帰れるからだ。
ギム皇帝の移動手段は間違いなくアレだ。
「それは、大変に有難いお話です。是非、喜んでお受けします。」
急に行ったらびっくりするだろうから事前に手紙をだしておこう。
今からおくれば、ギリギリかな。
以前だと、ここから村までは大人の足でも2年近くかかる。だが帝国と王国が通信手段として領事館を設けたおかげで国同士の連携がとりやすくなった。
その際、帝国から使っていない通信機器を貸し出していたので実現している。
ちゃっかり、アルがその子機の開発を手伝ったので王国が各主要都市との連絡もできるように利便性を高めていた。
帝国にもメリットがありその通話の内容までは判らないが、何処が何処に連絡をとったかは筒抜けのため怪しい動きを王国がすれば直ぐに判るという大人の事情もあったりする。
そう言うわけで、アルの家にもその通信機があり、事のついでに倉庫の町にも設置してもらっていた。なので、フォーさんやラムズさんと連絡を取り合うことができた。
そこで、手紙の内容を決めてそこから村まで送ってもらえば最短でギリギリといった具合だ。
そう言うわけで。早速ランチミーティングを済ませると午後には、家に一回帰ることにした。
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うん、何て書こう。
アルです。
ご無沙汰してました。
ローレルお爺ちゃんは、元気ですか?
あと色々あって、妻が3人になりました。
そして、子供が生まれるので夏ぐらいに里帰りします。
そのついでに、色々あって帝国皇帝が謝罪に行くから宜しく。
こんな感じか。
ん、短い!まぁいっか。
早速、受話器を取るとフォーさんが出た。
「アルです。聞こえます?」
「おお、アル君かどだい調子は?」
そんな感じで互いの近況を会話したあとに、本題を伝えると最初はビックリしていたが快諾してくれた。途中からラムズさんも会話に参加して話しは盛り上がった。そしてラムズさんがわざわざ足を運んで届けてくれることになった。
確かに、あの人ほど適任はいない。
ラムズさんも久しぶりに大岩の村に行ける機会が出来て嬉しいそうだ。
また、村での再会を約束して受話器を置いた。
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アルが南区へ足を運んだ時の出来事である。
今日は、従業員の働きぶりもかねての視察であるが、多少顔がばれているので変装していくことにした。お忍びと言うやつだ。
当然、こう言う時は清掃員の役と決まっている。
うん、なかなかのものだ。
裏口から入り、モップを片手にロビーを清掃していると、なかなかにどうだろう。
思った以上に忙しく社員が働いている。
そして、バケツに水をためてキレイな布を浸して丁寧に絞ると、
ロビーに飾ってあるアルアル鳥の彫像に手をかけようとした時だ。
「だめですよ!」
後ろから若い男性社員が声を声をかけてきた。
「さては、新人だな。いいかアルアル鳥様に触れる時には、一礼してから『アルアル鳥万歳!』といってから触れないといけないのです。このアルアル鳥様は会社のシンボルであり尊敬を持って接してこそ此処の社員である誇りなのですから。」
「おお、そうでしたか。失礼した。アルアル鳥万歳!」
そして、丁寧に水拭きをした後に乾拭きをした。
「おお、気持ちがこもってる。なかなかに上出来です!」
さっきの社員が監督してくれていたようだ。
「先輩のお名前は、なんと呼べば宜しいですか?」
なりきり、清掃員のアルは先輩と呼んだ若い男性社員に聞く。
「俺は、レオって名だ。この春のから勤め始めたから先輩ってほどでもない。同期に近いから何か困ったことでもあればいってくれ」
「ここは、本当に良いところだ。社宅もあるし給料も悪くない。それよりも食堂が最高だ。飯がの為に毎日会社にくるのが楽しみでしょうがない。」
そうか、そうか。アルは嬉しくなる。
ついでに不満がないか聞いてみよう。
「何か不満とかはないんですか?」
レオは、少し考えた後に
「組織がでかいのか、他の部署との関わりが少なくて。本音を言うとうちの部署には女の子がいないから、、、。」
そうか! 交流は必要だな。
レオは、自分の話しを続ける。
「この時期だと、やっぱり花見で酒でも飲みながら話しが出来れば一気にお近づきになれるんだけど。女性を目の前に誘う勇気もなくてな、、、。うちは男兄弟しかいなくて酒でも飲まないと女性に免疫が無いせいで話しもまともにできない」
うむうむ、社員の要望を叶えるのも役目の一つだ。
それにしてもこのレオという男。なかなかにいいやつじゃないか。
後で秘書に聞いてみよう。
その後、レオが打合せがこの後あるといって足早に去っていった。
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後でわかったがあのレオという男は、王国出身であることがわかった。なんでも向こうの最高学府を主席で卒業したが自分が期待するような職に付けず。数年放浪したあとに帝都で生活するようになったそうだ。
ここの募集も偶然見つけたらしい。面接で唯一、面接監に質問の嵐をして最終的に面白そうだからという理由で採用されたとの事だった。
アルの感が冴える。あいつは、必ずこの社を次の高みに出来る人材かもしれないと。
取り敢えず『花見』だな!
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その週、社内広報に花見イベントを告知した。
就業時間中で給与も出て飲み食いタダ。
その上、家族も招待してもらっても良いとした。
そりゃそうだ。社員の家族も大切にしなければならない。
家族が勤める会社の素晴らしさを知ってもらえば将来。優秀な人材がこの会社を選んでくれる可能性もある。それに良い噂が広まる事は企業にとっても大事だ。
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その場所は、南区の公園だった。
天災や有事の際に避難場所としての用途もある。
そこには、数百年前から花を咲かせる樹齢700年とも言われる木があった。
春先に綺麗な花を咲かせる。
ザクラの木と言われ、分け木がされその周囲にも一回り小さいがそれでも十分な大きさのザクラの木が並んでいた。
この時期は、公園はその木の花が咲き乱れとても美しい風景が広がる。
その時期には、多くの人が花見を楽しみ露店も出て賑わいを見せていた。
その一角で非常に目立つステージが出来ていた。
会場と言っていいだろう。今日は、帝国の誇る歌姫『ウィンネ』が呼ばれていた。
アル財団の従業員は、総勢1000人ほどしかいない。だが今回は、家族やその親族までもがいた。そして5000人近い人が集まった。
社員には、事前に抽選券も配られ今日の最後には豪華商品の用意もされている。
会場は、『ウィンネ』が十分に盛り上げて最高潮に達していた。
そして、至る所で料理人が自慢の料理人を奮う。別にアルアル鳥に限定はしていない。食とは多様性の象徴でもある。食材からして好みがある。家族を呼ぶ時点で相互理解が必要だ。
そんな、会場にあるテントにアルとトンファ、ニア、エマがいた。
「えらい!。アルはさすが素敵なことを考えるのね」
トンファが誉めてくれる。
うん、そうだろ。そうだろ。
今日のイベントの詳細までは、シークレットだった。
準備期間は、ザクラの木が一番咲き誇るこのタイミングにあわせたため2週間しかなかった。この短時間で準備できた理由もある。バックにギム皇帝がいるのは言うまでもない。
軍を動員してもらったのだ。
その中心には、聡明なレジュダさんがいた事が大きい。そしてそのレジュダさんといえば、、、、。
ステージに上がっている。
今回のイベントには100名ほどの帝国騎士。それも選りすぐりのエリートが選抜され準備にあたった。その人達も労いを兼ねて家族込みで招待していた。
レジュダさんは、年齢は35歳になっていたが鎧を脱ぐと大人の女性から結構、20代の美人に見えるぐらいスマートで洗練された美人だった。
そんなこんなで、功労者として壇上に上がったのだった。
歌姫のウィンネさんは、魅力的な歌手でまた人を盛り上げるのも得意だった。
気付けばウィンネさんとレジュダさんが手を取り合い彼女の代表曲である『花』をデゥエットしていた。
そして、レジュダさんが異常に歌が旨いことが判明する。
その女性を稲妻のごとき衝撃をもって見つめる社員がいた。
その名前はレオと言う。女性とまともに会話する勇気もないこの男が突然、壇上にあがる。
酔ってなどいない。決して勢いに任せたのでもない。
ただ、一人のこの美しい女性の事をほっとけなかったのだ。
レオは、まるでミュージカルのようにステージ上に上がった。そして歌を歌う彼女らの前で堂々とそして繊細に愛の歌を返すのである。
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時は少し前にになる。
「皇帝陛下がお呼びです。」
何事かとレジュダは、陛下の元へ向かう。
「悪いが、アル殿の事業で非常に大切な案件が生じた。悪いがレジュダに全権をまかせる故。頼みたい。」
レジュダは、少し躊躇した。皇帝陛下といい。アル殿といい。自分がいかに凡人であるか思い知らされる。まったく、考えが及ばない世界にいるからである。
「どのような命令であってもこの命をかけて望む次第であります。」
そうかとばかり、皇帝は一枚の紙をレジュダに手渡した。
「こ、これは、、、、、」
「では、2週間後を楽しみにしている。」
んな・・・・・。馬鹿な。
1日がとてつもなく長く感じる。つまらないとかではなく。分単位の対応なのである。
これは、もしかしたら軍の新しい緊急時でも冷静に正しい答えを出す事の訓練なのではないかと途中から思い始めるような業務量であった。
式典の準備には経験があったがこの手のイベントには不馴れである。
しょうがないので、妹のウィンネに相談した。
彼女は、帝国でも随分有名な歌手になっていた。
血を分けた姉妹であったが年が離れていた事やレジュダは、10歳で騎士学校へ出たこともあり。その後、両親の間に授かった妹だった為に一度も会うことはなかった。
ある時、兵の慰労を兼ねたお祭りでウィンネが歌うことになった。
その時、初めて妹を目にする。さすが姉妹だけあってどことなく似ている。二人の生きる環境が違い過ぎるため言われないとわからないレベルだが、二人とも美人であることにはかわりない。そこで妹のウィンネの方から声をかけてきた。
「レジュおねーちゃん?」
「ウィンネなのか?」
最初は、お互いによそよそし感じだったが直ぐに打ち解ける。
ウィンネは、村でいつも自慢の姉の話しを聞かされていたと言う。
そんな、姉のような分野には、自分は適正がなかったが憧れの姉を思い唄を歌ったところ評判になり、気が付いたら今の状態になったという。
彼女の代表曲である『花』は、妹が会ったことのない姉の事を思い浮かべながら作詞した曲で、帝国中で歌われるようになる。
レジュダも耳にしたことはあったがまさか自分の事を想ってつくられたとは思いもしなかった。それから、この曲の事が好きになったのである。
レジュダは、久しぶりに妹へ連絡をとる事にした。
そこからは、トントン拍子で話しが進み。今日にいたる。
その場の雰囲気に押されて、レジュダはステージに上がる羽目になる。確かに功労者と言われればそうかもしれないが、これは流石に騎士がすべき舞台ではない。
だが、ウィンネは近場の飲み屋で一緒に歌いましょう。ぐらいの乗りで『花』を歌う事になってしまう。最初は、妹にリードしてもらう形で歌っていたがいつの間にか熱唱していた。
そんな時だった。急に一人の若い男が壇上に上がってくる。
最初は、花見の酔っ払いかと思ったが、ウィンネが平然と楽しんでいたので演出か何かだと思い直す。なぜなら、ウィンネに引けを取らないぐらい美しい歌声だったからだ。
『花』に合わせて独特の調和がとれた被せをしてくる。三人の声が複雑に絡み合いまるで聖堂で反響する讃美歌のようだった。
歌が終わると、あれだけ騒がしかった会場中が静まりかえっていた。いつの間にかその歌に聞き入っていたのだ。
少しの間のあと、どことなく拍手が聞こえる始めるとそれに呼応するように会場中から喝采の拍手が贈られていた。
そして、拍手が鳴り止むとその若い男は、皆が聞こえる大きな声でレジュダを見つめこう言った。
「僕と結婚してください!」
‼️
△▽
人は、一瞬で互いに恋に落ちることがある。
レシュダは、苛立っていた。
私は、国に忠誠を誓った帝国騎士隊長である。こんな下世話な男に公衆の面前で恥をかかされている。
これでは、騎士の名を汚す。
特に私は、女と言うハンデがある。恋沙汰があれば騎士隊長と言う立場も怪しくなる。世の中がどう思うなど判りやすいものだ。
彼女がもし腰に一太刀あったならば男は斬られていたであろう。
いつもの彼女ならば、そうしたはずだ。だが、今日の彼女は違った。
苛立ちは、動揺のせいだ。
この名前も顔も知らない男なのに気になってしょうがないのだ。
それは、一緒に歌っているときからだった。体の一部が混じりあうような精神的一体感を感じた。
そして今まで感じたことのない感情と、自分が女で良かったと思うのである。
あーー。わからない。
『好きです』ならまだわかる。
それなら、冷静になれば対処できる。
『結婚してください』では
選択が2択しかない。
もし、運命という言葉が存在するなら彼女の選択を称賛したい。
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