1ー3 始まりの始まりの終わり
王は、アームズを無尽蔵に人々に供給した。
全ての人が食べるものにも着るものにも困らず、自らの発想で未来を見いだして欲しい。恒久的な安息と生きる喜びを。
だが、働かず未来を想像することもやめた民を見た時に
70歳近くになった王は、自らの犯した過ちにようやく気付いた。
欲望、嫉妬、妬み、、、差別、格差。それをアームズが埋めてしまった。
満たされた人は、何も出来ない。理由がない。
全ては民のために人が人であるために。
アームズには、禁忌事項が無数に存在する。王のもつアームズにも当然、存在する。当初、次のアームズ管理者を選定した後に受け継がれる者が適切でなく暴走した場合に備えたものだ。
時が経つほどアームズへの依存は高まり、喪失時の影響が計り知れないことから全アームズのバーストは王のもつアームズにのみある制限付きの機能であった。
そして、王はこの先待ち受ける人の苦悩、絶望、そして死を判った上で自らの贖罪を行った。誰にも相談することなく。発動した。制限は使用者のバーストである。この日、人に全てを与え同時に全てを奪った死した王となった。
その時を境に世界中のアームズが消滅。
発動した時期が悪かった。秋の終わりであった。
冬にそなえた食糧、備蓄などの準備がされていない。何年も放置された田畑ですぐに食べ物ができるわけもなく。まして冬に狩りにいける人間など一部の人間ぐらいだった。水とほんの少しの食糧で冬を越えることは出来ない。
その生存した人のほとんどが閉塞された区域であまりアームズの環境になかった辺境の村などである。彼らは、自給自足なのでほとんど影響がなかった。帝国は、アームズに頼っていた部分は多かったが元々独自の技術も保有していたため。王国諸国に比べると生存人数は多かった。王国内でもアームズの本質を嫌い旧来の体制の保持を優先する領土などもアームズが浸透しないこともあって影響は少なかった。
アームズの浸透から50年後。
アームズの依存が高すぎた者は得たものをほぼ全てを失った。
その命すらも。
王国を中心とした社会の崩壊後、徐々にアームズに頼らなかった領地を中心に旧世代のシステムに戻る形で王国は復興していった。帝国側も影響は大きく、無用な争いをする力もなく静かになった。
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ウエルズは、父である王の失踪とアームズ消滅により。周囲の人、国民その全てが一夜で私を避難し怒り苦しみの矛先をむけた。
ウエルズには、結婚してから数年後、最近になってようやく授かった息子がいた。
息子は、妻と同じ銀色の髪だった。その妻は産後に体力が回復しないまま急激な環境変化に耐えられず体調を崩し呆気なく亡くなった。その傍らには、まだ小さい赤子が母親の乳を求め泣いていた。
自分の無力を呪った。何も出来ない虚しさ。
それでもこの子に罪はない。
ウエルズは、毛布に我が子を抱くと雪のちらつき始めた王都を逃げるように出た。
馬乳を温め息子に飲ませる。ウエルズは、ここ何日も何も食べてはいない。
最後は、わかっていた。私が尽きればこの子も死ぬことぐらい。
この子ぐらい生きてる限り幸せでいてほしかった。
いや、私が少しでも一緒にいたかっただけなのかもしれない。
、、、、、、。
どれだけ歩いたであろう。
雪の中、意識が遠退いていく。遠くで明かりが近づくのは見えたが既に体力は限界を迎えていた。最後は、吹雪から我が子を守るように覆い被さりながら意識が途絶えた。
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「あと、少しだ。もう少しだ。」
「… … 」
ウエルズと赤子をようやく小屋に運びこみ暖かいスープを作り始めた。
赤子の方は、こんな状況でもすやすや寝息を立てているが、ウエルズの方は、極度の疲労と寒さで意識がない。
「ウエルズよ、寂しいじゃないか。30年以上の付き合いなのに何も言わずに出てくなんってなぁ」 口ではそう言いいながらもそれがお前なりの優しさだと、理解できる。王の息子と言うだけで冷遇される状況じゃ。迷惑かけたくないお前の気持ちも痛いほどに、、、。
ローレンは、もう60歳近かった。だが、王国騎士としてアームズが有ろうが鍛練を怠ったことはない。周囲が無駄なことをいつまで続ける気かと噂するなかでも。ローレンとウエルズと稽古の日々は欠かしたことはなかった。
それだけ、ローレンにとってもすでにウエルズは息子のような存在だった。
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久しぶりに暖かい部屋にいた。
いや、小屋か納屋とよんだほうがいいだろうか。それでも十分な安らぎだった。




