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1ー32 漂う

▽△▽△



エマは、空中要塞バハムの自分の部屋に戻ってきた。

いつもなら、研究施設の部屋へ直行して数日たつとトロアに強制的にこの部屋に連行されるぐらいしか使わない場所であった。

だが彼女にとって短時間でも十分な癒の空間と化していた。


空中要塞バハムでもこのような個室を与えられるのは上級士官以上であり。エマはその中でも騎手隊長のレジュダと同じぐらいの広い個室を与えられていた。通称「うろこ部屋」と呼ばれるほど私的に改装されれたその部屋は、帝国博物館の標本展示室のように世界中のあまたの「うろこ」がディスプレイされていた。


その部屋の中央にベットが申し訳なさそうに鎮座している。

彼女は言う、「うろこ部屋」で数時間も寝れば全ての疲れがとれると。



エマはドキドキキしていた。

仕事が手につきませんわ。


「ワイバーンの逆鱗」。


これの価値は天文学的であろう。何故ならば、人類が手に入れることが今後無いからだ。別に「うろこ」というカテゴリーでなくても上位種の竜の遺物などほぼ存在しない。国宝どころか人類の秘宝と言えるレベルである。それだけの価値の物をアルさんが私の為にプレゼントしてくれたのだ。



彼女は、運命と言う言葉はあまり信じていない。


全ては確証に値するデータをもとに考えるからだ。

だが、それが自分の本質でないことも良く知っている。この感情をデータとして観測する事も制御することも出来ないからだ。


あくまでもデータやそれに至る行動は、目的のための方法を選ぶための数字でしかすぎない。感情や心は、全く別に存在する。


「やはり、私の想いは変わらないのですね」


それが無理な事も許されないことも判っていた。

父は許すだろうか。全てを受け入れてくれるだろうか。


エマは、お父様に逢いたかった。この想いを相談したい。けど、、、。

あれだけ、私の為にしてくれたお父様を裏切るような真似だけは出来ない。


私は、アルが好き。

あの、昔の楽しい一時が想いの始まりだとしても。

これは運命なのかしら。



、、、、私はアルが好き。


そう、私の夢を叶えてくれる唯一の人だから。


エマは、自分でもわからなくなっていた。

この締め付けるような気持ちが何なのか。


好きってなんなのか。

今はひたすらに、会いたい。


そして、苦しい。


彼女は、静かに部屋を出ていく。






△▽△▽


バハムに戻られたお嬢様がいつもと様子が違うことを、トロアは感じていた。

数日前、皇帝陛下からのお誘いを私は快諾した。お嬢様には、事後報告だった。

従者としては、主人に確認もせずに重要な事を一存できめるのは、本来あってはならない行為だとも判っていた。


でも、あまりに仕事に没頭する彼女が心配でしょうがなかった。

それだけのつもりであった。


あの宿の夕食。


めずらしくエマ様は、本心から笑い楽しんでいた。ひごろ一口も飲まないお酒を彼女はよく飲んでいた。あまり、人と楽しむと言うところを私は、見たことがなかった。10歳のころ由緒あるサリード家に奉公にだされた。その時は、エマ様はまだ旅に行かれており私は面識すらなかった。12歳になると一通り、実務を覚えたのにあわせて、お戻りになられたエマ様につかえるようになった。


エマ様は、学業に励まれ。寮において身の回りのお世話をさせて頂いた時もご卒業までの数年間、一度もご友人などを招かれる事がない方だった。


私は、エマ様が女性として幸せになることを夢見た。でも彼女は、彼女が愛するモノが明確にありそのために生きている。それでもいつかそんな喜びを分かち合う相手が出来る事を信じていた。




△▽△▽△


「おい、あの少年は誰だ?。お前しってるか」


「知らないなぁ。皇帝陛下が客人と言われる位だから相当な名家の者なのではないか?」


「まぁ、確かに服装も貴族様だし。連れの2人の女性も超美人だしな。」


「あーーーー。人生は不平等だ!。なぜ神は二物を偏って与えるのだ!」


「お前いつから信仰を変えたのだ。わが竜神たる主は、説いているではないですか。



力をもって愛を語れ。

弱き者は、心まで弱くなってはいけない。

力とは、想いの有り様であると。



「色んな解釈が、あるが俺は思う。気持ちで負けんな!ファイトだろ!」


「あーーーー。お前が同僚で良かったよ。

  負けない。俺らにはエマ様がいらっしゃたのだ!この心の敗北を癒す女神様。」


裏ウルロボスの、会員(No13)と(No24)はそんな休憩時間を終え、部署へ戻るのであった。



△▽△


アル達は、展望ラウンジに通されていた。ギム皇帝は、少し準備があるとのことで席を外していた。


トンファとニアと言えば周りの視線など気にせずに、初めて見る壮大な眺めを楽しんでいた。ここからなら王都の全体がよく見える。


高度は、5000mほど上昇した所で停止し、その場に浮かんでいた。

上から見て初めて気づいたが王都は、幾つもの綺麗な円が重なったような構造になっているようだ。一番外の外壁から中央に向かい幾つもの壁がありその中央に王宮があった。


城塞としての造りも完璧のようだが、それはあくまでも陸地からの侵攻にたいしてだ。この上からの守りを持つ感じではないので、仮に空中要塞バハムからの攻撃があったとしたら、なすすべなく陥落するだろう。


そんな事を考えていると。

「お待たせした。さぁ早速、自慢の空中要塞バハム観光といこうではないか。本日の案内を務めるのはーーーーーーー。


この私。皇帝ギル本人である!


そして、内部の詳しい説明と技術紹介や質問への回答は、帝国の誇る頭脳明晰、容姿端麗の特務研究室長であるエマ嬢が務めさせてもらう」


ここは、盛大な拍手をしておく。

「ギムおじさま! 待ってました。 カッコいい!」

ニアは、あい変わらずここが何処だか判っていない。


はい、ここは帝国の最重要拠点であり動く伝説。

帝国の象徴であり、畏怖と尊厳そのもの。その帝国でも、限られたエリートだけがこの空中要塞バハムで働くことが許され。それ故、皇帝陛下への忠誠心は、皇帝を神をみるに等しい。


そんな彼らの視線があるなかで、皇帝陛下を愛娘の如く

「ギムおじさま」と呼べるニアの常識はずれの行動が、後にある噂をもたらすことになる。


それは、別の問題としてとりあえずアル達は施設内部の観光ツアーにスタートしたのであった。


本当に。この空中要塞バハムは広い。大きく5層に別れていた。

一番下から最下層がドックと言われる場所で、火器の類いや陸戦用の戦車などが配備されていたいた。上階の第2層は、訓練施設と補給庫が大半をしめている。この訓練施設が特殊で内部でマナを用いた戦闘訓練を可能にする特殊な防壁空間を展開できるようになっているとの事だった。エマもその原理自体は理解出来ないと言う。というかまだ興味の対象外らしい。


ただ、機能としては誰もがレバーを下げるだけでその様な環境が出来る為。施設として大いに有効活用していた。


「どうだろう、この辺で一つレセプションと立て込もうではないか!

この帝国は、階級と身分制の両方をしいておる。身分は、生まれながらにして決まっているもの故、個人の力ではどうにもならん。だが階級は違う。己の力一つでどうとでもなる。


そして、帝国ではエマ嬢の家柄のほうがある意味特殊で彼女の家は貴族身分としても全く別の存在として考えてもらったほうがよい。むしろ帝国では階級制の方が重んじられる傾向にあるのだよ。


そこで、我が軍の中でもマナ操作に長けた選りすぐりの手合いを用意した。

どうだろう、アル殿。一度ここらで己のが私と足を並べている強者である事を周りに示しておいた方が今後、色々と都合が良いのではないか? 」


アルは、考える。危ない橋は、渡らない。石橋を叩くような橋は渡らない。

うん、断ろう。そう思った矢先。



「ギムおじさま!。 ちょうど体がなまって来たところなの。

 是非、お願いしたいわ。でも私一人で終わりそうでもいいのかしら?」



なんだ!この挑発的な発言。本人はいたって無邪気な返答であったはずだが、、、。

やっぱり、彼女だよね。後ろをむくとヤル気満々のニアが屈伸をしていた。



「おお、やってくれるか。 実に勇ましい!。 

我が帝国の誇るエリートども。このニア嬢が手合わせを承諾して下さった。勝った者には、50日の特別休暇と賞金を与える。手加減など無用。


我こそは、武勲をあげたいと思うものは、前に出よ」



こんな機会は、めったにない。皇帝陛下の御前で試合をするなどとは、誰がこの時思ったであろうか。それに相手は、犬族と思われる細身に美少女。それなりの武は知っているような感じだが所詮、お貴族様のおままごと程度だと誰しもが考えた。



「では、これより第一試合をおこなう。ルールは、シンプル。相手を戦闘不能にした時点か、敗北を認めた時点で勝負を決する。火器や魔道防具の使用も許可する」



アルは、思う。うん。普通こんなイタイケな美少女相手に戦車とか持ち出す奴初めてみた。


第一試合の相手は、希望者が多かった為に戦車部隊の6名一班のグループが抽選で当たった。彼らの主要武器?っておい。戦車を6人で乗り込み各担当が操作するようだ。

パッと見。連続射撃砲が2基、旋回補助にブースターエンジンが搭載。あとは主砲に、、。おい、それはここで使っても良いものなのか!。」



「えい、はじめ!」


次の瞬間の事は、ほとんどの者が理解することが出来なかった。


‼️


「勝者、エマ嬢」


すでに理解するものが一名、勝敗の宣言をする。さすがギム皇帝である。


エマは、涼しい顔をしながら。戻ってくると準備体操がようやく終わったと言い放った。


彼女の後ろには、綺麗に半分になった戦車が横たわる。


第一試合のインパクトが強すぎた為に、当初予定していた希望者が自体。

再抽選が行われる事態となる。



もう、普通な奴が出る幕ではないと理解。

武の才がある者が名乗りをあげた。


「お待たせした。これより第二試合をはじめる。はじめえ!」


あいては、エマと同じ獣族である虎族であった。何だか個人的に恨みでもあるのだろうか。闘志といより殺意に近いオーラを放っている。


見る者が観れば良い試合をしていた。常人には見えないので衝撃と閃光ばかりだが。

虎族にもそれなりの奥義があり、その男も免許皆伝保持者のようだった。


以外に戦闘が続いているので、アルはギム皇帝に聞いてみた。ずいぶんと強い兵をお持ちではないですかと。そうするとギム皇帝は、にやけながら隣にいる騎士隊長の女性名を聞いていた。


おい、あんだけ強いのに知らんのかい!


「なんと、清掃係のボムと言うのか。即刻、騎士に昇格させよ。」

なんか、言い感じの人材発掘に貢献してない?。


だが、長いといっても数分後、大きな体格に虎族の男は気絶したまま大地に伏していた。ニアも楽しかったのか、目が人のそれとは違う感じに一瞬なっていたがすぐにいつもの可愛い妻に戻っていた。


「勝者、エマ嬢!」


うん、実際のところ対人でいまの虎族の男より強いやつ要るのか?うん、多分いないなぁ。

すでに第三回戦の予定をしていた騎士は、姿を消していた。自分の実力をしっかりと把握して辞退するのも大切なことだ。


「うむ、よいよい。時に人は強者の前に無力なものよ」

「では、レセプションはこのぐらいにしておくかの。他に挑戦をしたい者はおらんと言うことでよいか?」



その時、一人の少女が手を上げる。




・・・・・・・・・・・・・・・。


おい、なんでお前さんが手を挙げる。


トンファが恥じらいそのままに小さく手を挙げる。


「おお、皆のものこの手合わせは、貴重じゃぞ。一生に一度見れれば良いレベルのものじゃ」


「では、気持ちが変わらぬうちに第三試合を始める。」



それ、多分。終わんないパターンですよ。

多分、長いよ。


夫である僕が約束するよ。

長いよ。うん、、、。


「ギム皇帝、先に行きましょう。」

「やはり、そうかでは最後まで見れないのは惜しいが時間も無限ではないからの。次に向かうとしよう」



アル知っていた。トンファとニアは、お互いに相手の手の内をほぼ全て理解し、愛していた。だからどんな攻撃がぶつかりあっても力が均衡し、終わらない。


夕食時にお腹が減ったと、どちらかが気づくまでは続く。まだ先ほど、間食したばかりなのでまだ続くだろう。



△▽△▽



「おい聞いたか。あの美少女やばいらしいぞ。訓練場でまだやってるらしいから見にいこうぜ。」


「え、まだ見てないの?」


「ん、もう見たのかよ。どうだった?」


「絶対、夫婦喧嘩はしない方がいい相手だ。強いとかそんな甘いレベルじゃない。あれを二人も連れてる少年のほうが恐ろしくて、俺はもう彼女達にちょっかいを出すことは一生ないであろうとここに宣言できる」


「、、、そうか。では、やめておこう。」



この一件を境に、この空中要塞バハムで生活するものは彼女達を見付けても、可愛らしいだけの少女と思う事は無くなった。


知の女神がエマ様ならば、

武の双剣は、トンファとニアと言うことで落ち着く。



△▽△△


皇帝陛下は、怖くないのか?。隣で同行するレジュダは内心そう思っていた。なんだ、あの化け物じみた力は!。彼女は、軍略や戦略的面において長けているが今まで想定していた盤面の駒でこれ程までに強い駒など見たことがなかった。武などと、舐めていた。


現実を見せつけられたのである。この世界の理を理解するもの達の存在を。

彼らのほとんどは、歴史の表舞台に姿を表さない。影では、与えた影響は計り知れないだろうがそのような者の一つの特徴が自由に生きていたと言うことだ。


束縛されず、束縛せず。

国を持ったりもする時はあるが、それは周りが勝手に集まっているにすぎない。

彼らがそう言う存在なのか。レジュダは、皇帝陛下のお考えの先がわからなかった。

考えてもしょうがないと判断したときは、思考をやめるに限る。

彼女は、皇帝陛下とアル様とエマ様を引き連れて中央制御室へ向かっていた。




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