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1ー22 止まる

△▽△▽


アルアル鳥の料理は、今日も最高だった。あまりにアル達が毎晩のように歓喜に湧いてる姿を知ったこの宿の料理長が手間が掛かってほとんど利益のでないメニューを出したのである。



‼️。


‼️。


‼️。


「・・・・・・・・・・もう、死んでもいい。」


トンファが物騒な言葉を一言。


それぐらい美味しいのだ。


「これは、どんな事になっているのですか?」

アル達は、涙を流しながら、このとてつもなく旨い料理について質問をした。


数分後、ニコニコしながら料理長、自らがやってきて説明をしてくれた。この料理は、アルアル鳥の料理の中でももっとも難しい手法により料理をしなければならないらしい。何故ならば、この料理は高度なマナ操作による火加減調整と絶妙な塩加減。塩加減は、その日の湿度、気温、お客さんの体調の全てを考えに考えた上で味付けをするという。一言でいえばただの鳥の丸焼き。だがそれこそ単純ゆえに誰でも出来るわけではない。



実は、料理長は2日前から寝ずに一晩中、この料理の完成に没頭したのである。


お客は3人が3人とも涙を流しながら、アルアル鳥の丸焼きを食べていた。彼は失敗した。その涙による塩分は計算に入れてなかった。


だが、お客さんは旨い。うまい。そして死んでもいいとまで称賛していた。彼は、料理人として長い修行の末にこの宿で働くようになってから、自分が自信をもって出した料理が旨いと称賛されたのは初めてではなかったが。これほどまでに喜んでくれるお客さんを見るのは初めてだった。



アル達は、この時に何も言わずとも3人が同じ事を考えていた。

この計画に、この人は必要だと。いや、この人がいなければ完遂出来ないと!


△▽△▽


アル達は、翌日の昼すぎに倉庫街でラムズさんと合流してから町の代表がいる建物に向かった。


「大丈夫だよ。そんな緊張しなくてもフォーさんは、優しい人だから」


そんな事を言われても、生まれてから今まで、偉い人になんて会った事など無いわけで緊張しないでもよいと言われると余計に緊張した。


通された客間は、豪華というわけではないが、とても品のある部屋だった。

少し待つと。客間の扉があいて一人の老人が入ってきた。


獣人で有る為に、フォーさんで有ることがすぐ判った。




△▽


だが驚いていたのは、むしろフォーの方であった。

フォーは、久しぶりにラムズから連絡を受けていた。最近は、それぞれの役割がありお互いに忙しくしていた為。なかなかゆっくりと話す機会がなかった。


だが、数日前に彼から連絡があり久しぶりの再会を楽しみにしていた。

その際に面白い連中がいるから紹介したいと言っていたのは覚えていた。



まさかこんな事があるのだろうか!


フォーは、目を見開いて一人の少女を見つめていた。


「ラムズ、何か気がつかなかったか?」


ラムズは、フォーの近くまでよると耳元で囁いた。

あの少年も、獣人の娘も、ただの人の娘すら3人が3人とも物凄い素質の持ち主だと。


フォーも感じた。最初は一人の娘に目を奪われたがその他の二人も普通ではなかった。こればかりは、普通の人にはわからない感覚であろう。


昔、フォーはラムズを育てるなかで彼の素質を感じた。だからこそ彼を育てる上げたわけだがこの3人は、それ以前の問題だった。見た瞬間にわかってしまうほどだ。


この3人にどうしても稽古をつけたい衝動を押さえることができなかった。


「アルと申します。二人は、私の妻でトンファとニアと申します。」


アルは、今回は自分の家族を正直に答えた。ラムズさんもその人が信用するフォーさんも信じてもいい相手だと判断したからである。



この若さで所帯持ちか。規格外とはまさにこの事だろう。

とりあえず返しておこう。



「そうか、お若いのに責任ある者のようだ」


そして、話は町はどうだとか。そんな世間話でお互いの緊張を解きほぐしていった。


フォーは、あらためて最初に感じた違和感というよりも興味をぶつけた。彼らが本当のことを言ってくれる確証などなかったが。


「私は、昔ある国で王につかえていた。犬族が王であった。」


その言葉だけで、フォーさんが何を聞きたいのかこの3人は理解できた。だが、まだ話を聞かねば容易に喋っていいことでもない気がした。



フォーは、話を続けた。

「国と言っても小国だが、王は大陸でもっとも強い男と言っても過言ではなかった。その王が属していた犬族は私もそうだが信仰がある。一つに己の武を高める事。そして祖に等しい力を得る事でもあった。」


「我らが祖は、狼族と云われる。狼族の一部のものが山から降り人間と交わることで犬族が生まれた。だが、狼族は決して犬族とは関わりを持たず。また両者の間には決定的な価値観の差があった。生まれた時から強者である存在と、そうで無い者の差だ。


犬族の長は、何度となく狼族との関係を正すために親から子へ、子から孫へと狼族の偉大を問い自らの祖として崇めた。結果、犬族に伝わる武の継承者が一人前になった際にその免許皆伝として、族長から渡される強者の証は、銀色の狼が彩られた短剣であるほどだ」


「改めて問いたい。私の目の前いるニアと申す者よ。お前は、狼族の血を濃く継いでおらんか? その深い緑の髪。犬族には見られない透き通るような白い肌といい。我ら犬族が祖と称える狼族の特徴に酷似しているのだよ」



ここまで直球だと隠し通す意味も無かった。

ニアは、アルの様子を見る。アルは、何も言わずに頷いた。


「わたくし、ニアは父犬族のジンを父に持ち。父を愛したことで狼族の村から去った族長の娘である母との間に生まれた子であります」


予想をこえた答えに、フォーだけでなく。自らの運命を変えたジンという名まで出てきたことで犬族の信仰までは知らなかったラムズも驚きを隠せなかった。


たとえ、『飛獣』まで武を極めた今のラムズでもまだあの手合わせをしたときの武の境地にまでは全くたどり着いていないと感じていた。


あのジン殿の子供であり、犬族が崇める狼族の娘。

一体、この先なにが合ってもこれ以上。二人が驚くようなことはなはずだ。


さすがに、アルまでもがほとんど伝説に近い、かの王の孫であることまでは想像すらできないだろう。


「ニアさん、正直に教えてくれて有り難う。実はここにいるラムズもその昔、王のジンと個人的な縁があったのだよ。ラムズも武人として相当なものだが君の父は、それを遥かに越えていた。 ご両親は、今は何処に?」


「・・・・・・・・・・・。私の記憶には、両親の記憶がありません。人間の心の優しいお婆ちゃん。いえ、私にとっては母のような存在に育てて頂きました。」


「そうか、すまない事を聞いた。」


そして、同じ獣人として、また同種の血をひく者として話が合うのか。フォーは、今や昔の犬族や族長とはどんな者だったか。他の獣人族についての話。今後、旅をする上で君は獣人族の族長クラスの強者なら誰もが君の血を求めて婚姻を迫ってくるであろう事。


アルは、とんでもない女を嫁に貰った事になる。

大陸中の獣人の猛者達を敵にまわしたという事実であった。


つまるところ、旅が始まった瞬間から詰み気味な気配が漂っているとのことだ。


「獣人族は、単純な強さで判断する事が多い。もし君たちのうち誰か一人でも獣族に伝わる流派の一つを習得出来れば無用な争いは避けられる。

だが、そう容易く習得出来るものでもない。才が有るものでも5年。君たちの旅の目的はわかり兼ねるが、時の許す限り助力させてくれないか?」


アルは、自分たちがこうも大切に扱われた事に感動していた。

こんな元々、逃亡しているような身分なので幸運な巡り合わせに運命を感じた。


「是非、宜しくお願いします。」


フォーは、ラムズの方に向き直ると頷いた。

それだけで、この二人の間では、やり取りが成立してしまうのだ。


□▽△


次の日から倉庫街の一角に空き部屋があったのでアル達は、いつ終わるかもわからないため宿から此方にお世話になることになった。

フォーさんは、村の代表でもある故に早朝の一時だけ顔を見せる程度しかできなかった。その代わりに直接的な指導は、ラムズさんがしてくれた。


ラムズさんは、最初が肝心とばかりに自分の倉庫業を一旦、友人に頼み。朝から晩まで3人の面倒をみてくれた。




半年は、あっという間だった。

季節は、秋も手前になっていた。


「まだ、早いことは判るが先に目標となるものを明確にした方がよいと思う」


そう言うと、ラムズさんは自分が昔にフォーさんから見せてもらった時のように『降獣』をみせ、空を切る一撃を見せた。普通ならばこれで少しは驚きの表情を見せるはずだが3人は、別に特別なものを見た様子でもなく、凄いといいながらもよく技の原理を理解しようとしていた。


ラムズは、思い出す。自分は、確かに2年の月日を掛けてこの技を習得したが。きっかけ自体は、一瞬の事であったのではないかと。そう考えると彼らが3人の何れかは、意外に容易に習得してしまうのではないかと考えたのである。


フォーがラムズにこの技の発動には、人間にとっては肉体への負担が多くその為に武の基本の型をひたすら繰り返し器を広げていたのだ。

もし、彼らが『降獣』を器が伴う前に発動した場合。最悪、死ぬ可能性すらあった。だが、彼らはそんなことは、最初から判っているようだった。


アルという少年は、自分とは見ている世界がまるで違うようだ。

ラムズが『降獣』を発動した時に、びっくりしたのはその現象そのものであると言うことだった。内包したマナの濃度が急激に上がったかと思うと、肉体とマナの境がよくわからない状態になっていたと言ったのだった。


まさに、その通りなのである。

ラムズが『飛獣』と呼ぶものは、信念による肉体のマナ強化により身体能力を上げるのが『降獣』ならば、マナ強化から、さらに自身の肉体と自身のマナに境をほぼ無くす状態が『飛獣』に至る概念である。この場合、一時的に見せかけの肉体は残るがほとんどは、マナの性質に近く。己のマナをどうしようが自由な状態となる。


この少年は、1回見ただけで私がたどり着いた武の答えに、たどり着いていた。


「もしや、出来そうか?」


それに対してアルは、「やってみないと判らないけど肉体と繋ぎ止めるものが、しっかりしていないと戻ってこれなくなるかもしれない。フォーさんやラムズさんが言う信念みたいなものが強くないと引き出した瞬間にどっかに持ってかれる感じだと思う」



ラムズは、すでに目の前の少年は自分が教えられるようなレベルではなくその先を見ているように見えた。



普通の人間は、マナと物質的なものを明確に線引きするため決して発動することはない。だが彼は最初から持っているのだ。その上位の概念を。


アルはこの場所ではやめた方が言いといった。

仮ににここで発動した場合に予想外のことが起きたときに問題が多いとの事だった。





△▽△▽

化け物アル、彼女らはそう呼ぶ。ラムズと意味不明な話をし始めるので完全に置いてきぼりになったトンファとニアは、二人をほっといて練習する事にした。



最初はトンファーから

私は、アルの大切な妻よ。私の全ては私の守りたいものを守るの!


トンファの周りから白い蒸気のような煙が上がる。彼女は、煙を操作するように周囲に散らばせた。トンファの『降獣』ー「壁」の誕生であった。



その様子に、気づいたラムズが驚きの表情をしている最中に、、、。


次はニアが自分の番とばかりに前にでる。

私は、強くても一人は嫌。私が全てを砕くの邪魔ものなんて噛み散らかす!


シッポの毛が逆立つ、深緑の髪が広がりを見せる。目の瞳孔が開いている。

その次の瞬間、彼女の姿はそこには無く跳躍したであろう足元の地面は大きく消滅していた。

ニアの『降獣』ー「翔」


数分後、恥じらう乙女のように赤面状態で戻ってきた。

自分でも意識はハッキリしているらしいが興奮状態を押さえるのが大変だという。





△▽△▽

たった、半年か。 自分の境地にああも容易くいたる彼女らにラムズも呆れるしかなかった。フォーに、その報告をしたときは彼ですら最初は耳を疑っていた。





そして、あの場所では出来ないと言った。

アルを見て事実を認識するのであった。


アル達一向は、町からだいぶ離れた山の裾野にきていた。

フォーさんとラムズさんが同行してくれた。


アルは、『降獣』を一つの概念として理解したと言う。その上で全く別のものかもしれないが師に一度見てもらいとのことだった。


「アルーがんばってー。」

「愛するアルさん、遠くからでも愛おしい」


トンファとニアは、その様子を遠くから見ていた。

間違って人が迷いこんで、被害似合わないように道を塞いでいる役目を仰せつかっていたのだった。


「では、やります。」


アルは、信念とよばれる自己のマナ自体に強制力があることを認識できた。色々な制限や人により効果が異なる個性のようなもの。つまり概念自体も自由に決めることのできるオリジナルのマナ属性であると言う認識である。

火は熱い。氷は冷たい。雷は痺れる。それら属性の概念が性質や効果を決定しているにしかすぎない。


もし、このマナの決めつけている属性概念自体が、マナを触媒なしで発現できないという間違った認識とおなじであるならば・・・・・・・・・・・。



アルは、信念と言う考えそのものを否定する。これはただの概念である。

純粋なマナと物質の関係を、整理。



発動イメージ完了。


あたりの音が全て消える。

目の前に巨大な大岩が現れる大地から発生したものではない。空間に発生したものだった。そのつぎに大岩がくだけ散る。砕けた小石の一つ一つがいつの間にか炎に変わっていた。


草原が一瞬にして炎に包まれた。大気を揺さぶるような大きな炎の竜巻がうねり狂う。そしてその炎が消えたあとには、、、、。


草原が凍てつくように凍結していた。

この凍結は、翌年に春になっても溶けることはなかった。

溶けたのは、夏も終わるころだったという。


△▽


フォーもラムズも自分が何を見にきたのだろうか。

身体を強化した延長上にある現象。そのために己の信念を信じる事。


その全てが少年の前では無意味だった。いやそう言ったものではない。決して比べても意味のない存在。かの王、獣の王、大賢者、、、そんなようなものだろう。


何かを成すべきために生まれいく者達との出会い。

また人生の一旦に楽しい出会いができた。そう思うことにした。


△▽□


久しぶりに、アルアル鳥の料理に舌鼓をしていた。

この半年間のトレーニングにより3人とも自身の体つきが変わり一回り大きくなった。特にアルの身長は伸びて、トンファとニアを越えることができた。


一昨日、化け物アルはまたもや訳のわからんことで草原を氷付けにして一人満足したように帰ってきた。トンファもアルもこの手のやつは2回目なのでもう少し規模を縮小すべきとか質素に結果を確認したほうがいいとか。


夫の行動をしっかりと注意できる妻に育っていた。

あまりに怒られすぎて、へこんだアルが可哀想になったので元気付ける意味で久しぶりに例の宿屋でアルアル鳥を食べに行くことになり今にいたる。


「アル、大きすぎる力は不幸にしかならないわ。偉大なるアルアル鳥に誓って!」

「はい、私アルは15歳になるまで刻印の力は使わない事を宣言します。」



「よろしい。ってもうすぐじゃないアルの誕生日。」

「え、そうなのですね。では盛大にお祝いをしないと」


秋の訪れを告げる。




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