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1ー21 刻む者

△▽△▽


「腰が痛い。アル、揉んで」

「私も痛い。アルさんお願い」



朝から夫婦漫才のような会話を繰り広げる。茶褐色の細い体付きのわりに引き締まったお尻と豊かな胸のトンファ。


ニアは、薄緑色の流れるような髪から白い肌がみえる。豊満な胸ではないが形のよい乳房と柔らかいお尻からしっぽをフリフリしている。


急に昨晩の事を思いだし、おとなしかったモノがまた元気になっていた。これは、永久に終わらないのかもしれない。


それを見た少女達は、さっきまでの発言を撤回して新しく迎えた夫婦の形を体現するのである。


彼らは、昼過ぎにようやく二度寝の後に行動を開始した。



宿屋の主人は、親切な人でアルアル鳥の仕入れ先やこの先の目的地までの道のりに詳しそうな人を紹介してくれると言う。


アル達3人は、倉庫街に向かっていた。

ここは、町の中心に巨大な倉庫があるがその周辺にも小さな倉庫が立ち並び物の出し入れをする人達が世話しなく働いていた。


「最近、妙に暑くないか?」

「そうなんですよ。どうも倉庫を冷やす装置の調子が悪くなってきているようで近々、大規模なオーバーホールを実施するだかしないだかで上は、揉めてるらしいですわ」


そんな会話が聞こえてきた。

確かにここの通りに来てから体感の温度が上がっている気がする。


アル達が宿屋の主人に教えてもらった倉庫屋の前まで来たところだった。

売り買いではなく、単純な保管か出庫の家業を生業としているようでアームズ消失後にまた以前のような賑わいを見せるようになったと言う。


その為、ここら辺は15年ほど前までは閑散としていたらしい。

店主は、暇な若い頃に個人に配布された簡易な機能をもつアームズを片手に大陸中を旅したことがあったらしい。その際に筆記で自前の地図を書き記した私記をもっており、知るものは知る有名人でその写しを求めてやってくる人が多いらしい。


だが当然タダというわけではない。自分の人生の多くの時間をかけて書き上げたものを安売りする人はいない。またその対価は、必ずしもお金と言うわけでもなく訪れる者によって違うとの事だった。



「お邪魔します。ナギサ亭の主人さんからご紹介にあずかりましたアルと申します。」

ここでトンファとニアを妻ですと紹介して変に気を悪くされても困る為。旅の仲間として名前だけの紹介にすませることにした。



話に聞いていた通り、彼らを対応したのは風貌が一風変わった店主であった。

全身に刺青を施し、顔にまでびっしりと何かの模様が彫ってある。遠くからでもその人であることは気付くであろう。そして髪はなくスキンヘッドで眼光がなにしろ鋭い。歳は、40歳ぐらいだろうか奇抜な赤の作業着で露出は激しく年齢がよくわからない。


たぶん、彼が目的の人間でなければ間違えなく声をかけることのない人種かもしれない。

ぱっとみてこの人は、まともな部類の人ではないと感じてしまう。


挨拶もそこそこに、彼についていくように奥の部屋に通された。小さな絵が飾ってあり、竜が描かれていた。かの有名な「刻印の試練」に出てくる竜がモチーフだと教えてくれた。


「話は、大体きいている。アル君は、どこの生まれだい?」


アルファ村出身と言うべきかどうか一瞬、悩んだすえ正直に答えることにした。


「おお、そうかあの大岩の村か」


まさか王国から最も遠い場所にある辺境の村まできたことがあるとは、中々に凄い。


正直に答えてよかった。もし適当なことをいっても彼にはすぐバレていただろう。そして話は彼の村での思いで話や当日の村の様子などが去年までの村の様子と何年たっても対して変わらないことに納得するのである。ある意味何もない見た目的な変化のない村だからね。


そんな感じで終始、僕らの話やすいように共感できる話題をつくってくれて見た目は変わっているけど全く印象と違う彼のギャップに親しみを感じた。


「話が長くなってすまなかったね。つい若いころの思い出の地の一つだったから熱が入ってしまった」


正直、あの村が大陸中を旅した人間の記憶に残るようなものなのかは現時点では、不思議でしょうがなかった。


「君達には、地図の写しについては問題なく提供しよう。ただ当然、条件がある。いや、願いと言ったところだろうか。ここに風景の一部を絵のように複写できる魔道具があるのだがこれで「刻印の試練」の砂浜と、もし会うことが出来たのならば「竜」をおさめてきてはもらえないだろうか。」



アルは、トンファとニアの為にどうせ海にいくなら。記憶にはほぼないが「刻印の試練」の先にあると言う白い砂の浜辺と透き通るような美しい海を見たいと考えていたからだ。


この旅の終着点である。


宿屋の主人には、どこの海にいくとは伝えておらず。ただ海を目指しているとだけ言ってあった。こんな偶然あるものなのかと思わずにはいられなかった。


「どうして、僕らがその浜辺を目指してるとわかったのですか」


倉庫屋の店主は、先ほどまでの表情から変わり何かとても遠くを見ているような面持ちになった。


「私が多くの場所を旅したのはもう理解してくれたはずだ。そもそもこの宛てのない放浪の旅を始めたのも竜の住まう美しいと歌われる浜辺への憧れからだった。」


「まわりの者は、そういった好奇心を失い。アームズの恩恵で何もすることなく、生きてるだけのものが多かった。私は、こんなにも美しい世界を自分の目で確かめなければ生かされている道理などないと思った。


そして、14歳の春に君と同じように海を目指して旅を始めたのだよ 」







△▽△▽


ラムスは、退屈していた。

この町は、昔。倉庫の町として栄えた。

人と物が大陸中から行き来して活気があったという。

少年は、そんな話を父親から聞いた。今では父は、毎日のように浴びるように酒を飲んで、だいたい寝ていた。母も数年前に他の男と何処かへ丗ていてしまっていた。


アームズにより食べる物にも苦労しない。

今日も発現させたパンとスープをたいらげると近くにいる先生の所へ向かった。

先生とは、獣人では珍しく温和で優しいが稽古になると、とても厳しい人だった。


数年前に流れ者としてこの町に住むようになり。倉庫街の使われなくなった一部屋をタダで借りて住んでいた。


毎朝、一人で体術の型をとる姿がそれは、流れるような美しさであった。

ラムスは、まだ8歳だったが毎日のように獣人のその姿を眺めては、ため息をついていた。


「僕もあんな動きができたらなぁ、、。」


ある日のこと、同じように稽古の様子を見ていると

獣人の男がこちらを手招きしていた。


「ラムスと言います」


ドキドキしながらその男に挨拶した。


「ラムス君か。君は毎日、私の様子を見に来ているようだが武に興味があるのかい?」


「は、っはい!。あんな美しい動きは見たことがありませんでした。私が知ってる男はみんな酒ばかりのみブクブクに肥って醜い限りです」



ガ、ハァハハハー!


唐突に男は笑い声を上げた。

「そうか、そうか。君はそうなりたくは無いわけだね。では私が武を教えてあげても良いが、どうする?」


少年は、キラキラした目をさらに大きくして

「はい! 先生。本日より宜しくお願いします。」


「先生か、、。まぁいいだろう。私の名前はもう捨てたがあえて名乗るなら犬族のフォーだ。」




△▽

それから、ラムス少年とフォーは別に働く必要も、これと言った用事もないため。常に二人は稽古をしていた。朝から晩まで。来る日も来る日も。

4年と言う月日は、あっという間に過ぎ去り、気付けばラムスは12歳になっていた。


「ラムス。そろそろ免許皆伝といくか」


「前にも言ったように我が武道には獣人族によりいくつかの流派が存在する。私が教えていたのは犬族の牙流。まだ長い武の一端を噛ったにしかすぎないが、十分に素質はある。大事な事は、地道にひたすらに修練に励むことだ。」


「この技が出来て初めて免許皆伝とする」


フォーは、深く息を吸う。そしてマナ操作をゆっくりとしているようだった。次の瞬間、先生の血管という血管が皮膚の上に浮かびあがる。皮膚全体が赤く黒ずんだような色に変わる。


そして、ラムスでは目で追うことができない速度で拳を繰り出した。

それがどれ程に威力なのか想像が出来ない。空を切った拳から繰り出された風が後ろの岩を粉砕していた。


「これは、犬族の中でもできる者は限られている。そして、もしお前が出来たならば人間としては初めてかもしれない。だが牙流を名乗る為には、これがなくては他の流派には通用しない。」


そしてフォーは、犬族にとっては秘技と言われる部類に入るこの拳がすでに今の世では受け継ぐ者もいなく、例え門外不出の原則を破ろうとも自身が見込んだこの少年が成し得ると信じた。


「まずは、概念を理解せねば決して出来ない技だ」


フォーは、ラムスにこの技の条件をなるべく丁寧に教えた。

しかし、人であるフォーがこの技を発動したとき果たして肉体が耐えられるのかそれだけが心配であった。その危険性も十分伝えた。それでもラムスは先生と慕うこの男を尊敬し、この技を覚えることが自分の使命だと考えた。


何日も何ヵ月も概念を理解しようと努め続けた。だが一向に技が発動することは無かった。そして2年の月日が更に経過していた。




それでもラムスは、諦める事はなかった。



そんなある日のこと彼らの前に一人の老人が現れた。いや老人などと呼べる者ではない。武を知る者ならばこの男がどれほどの実力があるか判らない存在であると。


フォーは、大粒の汗を額に垂らす。

「なぜ、王が此処に、、、、。私を処分しに来たのでしょうか、、、。」


老人は、笑うこともなければ無表情のままで言った。

「武の極みに向かう途中だ」


「その若造は、お前の弟子か?」


「はい、私の弟子です。「「人間」」のラムスです」


「そうか、「降獣」の手前といった所か。なかなか苦労しているようだな。人間ごときでそこまで達しているとはおもしろい。少し手合わせでもするか」


「、、、、、、王。誠に宜しいのでしょうか。それどころか私は犬族の掟を破りました」



「そうか、そんな事か。案ずる事はない。もう『族』としては、とうに滅びておる 」



何と返していいかも判らない。これほどの強者と手合わせが出来る機会は多分これを逃せば一生ない。そしてその相手に選ばれた自分の弟子に対して強い誇りを感じた。


「是非、宜しくお願いします。」



△▽


ラムスでも目の前の男が常人ではないことは、わかった。

一切の無駄がない。一体、どこまで鍛練を積めばこうもなり得るのか、、。

そして美しい強さだった。


「気負うことはない。だが、一言いっておく『降獣』しなければお前は多分、死ぬことになる」


ラムスも本能的にそれがわかっていた。そしてこれを受けた先生もそれがわかっていたはずだ。だがこんな機会を逃すものが一体何のために血もにじむような努力を重ねられるであろう。


「我、ジンなり」


「ラムス」



「よき名だ」


普通は相手を認める時、手合わせの後に名を名乗りあうのが儀礼である。

だが、命すらもかける場合はお互いの尊厳の為、先に名乗りあう。


それでも王が自らの名を名乗るなど、よほどの事がなければない。




ラムスは深く深呼吸をする。そして何万回と繰り返したであろう本質を探す。

いつもと違うことは、目の前には圧倒的な強者がいる。

そして私が一歩でも前に出れば次の瞬間、死んでいるはずだ。


己の中にある自分自身のマナを信じる。




△▽



『降獣』、、。

とりわけその技は、概念そのものが根本からことなる。


マナとは、触媒を必要としそれに属性のマナを込める事で発現する。

では属性とは何か?。火、水、風、土、雷、氷、、、、光、闇、、、。

いくらでもある。


だがその違いとは、なぜ区別できるのか。

なぜ、効果が異なるのか。

なぜ、結果が異なるのか。

なぜ、干渉するのか。



認識の違いでしかない。

それが、この概念の始まりの考えにあたる。


もし、すべてが触媒として認められるならば

戦いにおいて相手そのものを触媒として。火属性のマナを相手の体に込めてやれば焼け死ぬはずだ。だが、なぜかそれは出来ない。


それに一つの答えを出したのが『降獣』である。


マナは、マナを触媒として選べない。

つまり生物がマナを本質としている可能性である。


すでに何らかの触媒が存在し、その者自身が己の属性のマナで発現した存在であるという考えである。そして、『降獣』とは己の属性のマナを更に込めることで異常なまでに身体能力を高める方法であった。




△▽△


一歩、踏み出す勇気を。

自分の信念を。



お前は誰だ!


内包したマナの脈動を感じる。それは自分自身でありマナである。

心に込める。目の前の強者がどんなもので有ろうが関係ない。




それは、刹那。


だが、意識はそれよりもっと異なる時の流れにあり世界が止まって見えた。


△▽△▽


フォーは、感じた。ついに少年は、成し得たのだと。

少年の体がたぎるように血管が浮かび上がる。髪の毛が抜け落ち。皮膚が割け、血がクモの巣のように全身を這い廻る。だがその血はしたり落ちることはなく、皮膚の割れ目の間で凝固している。まるで神秘的な刺青のように彼の全身を覆う。


少年が何億回と繰り返した一撃の拳。目の前の1点に繰り出す単純な動きであった。


だが、それは避けることが出来ない純粋な力である。





王は、ずっと無表情だった。だが初めて口元を緩めた。自分の大好物を見つけた時のような静かな笑みだった。


王は、『降獣』など使わない。もうその領域ではないからだ。

だが、この力が全ての始まりであることを知っている。


そしてその場所にたどり着くものがほとんど居ないことも。


王は、手のひらでそれを受け止めると掴んで後ろに受け流した。

いや、投げ飛ばしたといった方があうかもしれない。


もし、少年が『降獣』を発動していなければ今頃。受け止められた瞬間に体の半分は砕け、掴まれたでは済まず全身を握り潰されていたであろう。王は人の目が見える範囲だけに力を及ぼしている訳ではない。王は一歩だけ前に足を踏み出していたがその地面は、すでに存在しない。




△▽△▽


「・・・・・・・・・・・ぁ、あ」


「目を覚ましたか、生きてるぞ。だいぶ鏡でもみたらびっくり人間になってるがな」


「・・・・・・・・・・出来たんですね」


「ああ、見事だった。間違いなくあの時の一撃は、私のそれよりも遥かに強かった」


そして、あの強き者は大変満足した様子でラムスが気絶しているあいだに去っていったという。そして去り際に、置いていったものがあった。


犬族の爪流免許皆伝とは、口頭なものではない。本来は犬族長が認め、その証である銀細工を施した狼の模様の入った短剣を手渡すことでそれを証明する。


これを持つ者だけが強者の証であり。そして何よりも更なる頂きを目指す者であることを誓う物でもあった。




△▽△


ラムスは、数日の休息後に旅に出ることを決心する。力としての強さを求めるのではなく、強く美しいものを見たいと。自らを磨き続け行き着いた先があの男のようだとしても、それが到底到達することのない存在であることを悟った。恐れたのではなく単純に武の深淵を覗くことが出来た満足感からだった。



フォーは、教えてくれた。王は、けして何者ものにも負けない信念があると。自らの力の源が己自身であることを力とした為、結果的に国を滅ぼすことになった。だが、王がいた国がもし己の信念を失いアームズなどというものに頼ったら、それは己の力を失うに等しく王が愛した国の消滅を意味した。


ラムスは、今ならその言葉を理解することが出来た。王にとっては、どちらを選んでも国は滅びたも同じである。ならば己の信念たる力を取る以外の道が無かっただけだ。


△▽


「今日か、旅立つ日にはちょうどよい天気だ」

「はい、先生。いって参ります。」


「今日より、ラムスから『ラムズ』と名を改めます。」


少年から大人へ。獣人族には習わしがあった。一人前になる証として、改名をするのだ。それにならっての事だった。



フォーは、この長くも短い6年の月日を思い出す。

ラムズはまだ、若い。今は今で、この先どうなるか。それは判らない。

考え自体も環境や経験により柔軟に変化するだろう。


私の教えた武は、考えや生き方の一つでしか過ぎない。時代によりそれが望まれるときもあれば、必要とされない時もある。


「ラムズよ。お前は、酒が嫌いだったな。だが次、会うときは是非、酒を酌み交わそう」


少年は、先生・・・・、いや。誠の『父』のような存在であるフォーの言葉を背に歩みだす。涙をみられるのが恥ずかしく。父を背に高らかに拳を天に突き上げて返事をした。


彼は、竜の住まう砂浜を目指した。


△▽△▽


ラムズが訪れる町は国は。どこもアームズの恩恵により対して変わらなかった。


皆が「昔は、、、」と語るだけだった。


この旅の目的を見失いそうだった。

わからなくなった自分が求めるものが見当たらなかった。


海を見れば少しは変わるのか?


少年は、2年ほどで『刻印の試練』の入口にあたる玄関口となる町に到着した。

ここまでの道のりは、けして楽なものではなかった。


だが、彼は試練に挑むことは無かった。

何故かそこに行ってしまうと、自分が求めていたものを知る前に旅が終わってしまう気がしたからだ。


彼は10年以上も大陸各地を点々と旅を続けることになる。

見たこともない大きな亀。とてつもなく深い谷。黄金に輝く廃墟。

巨人が住む小人の町。山の頂上に美しい泉のある大岩の村。


旅立つ頃、彼は『降獣』を習得した。そして多くの経験し、後にそれを発展させ『飛獣』と名付けた力まで自らを高めた。


彼が故郷に戻ったころ町は、姿を変えていた。アームズの消失により純粋な力がまた尊厳を回復するようになっていた。だがそれはひどいものだった。

略奪、暴漢、搾取。弱いものは容易く死んでいた。


彼は、先生を探した。彼は、町の倉庫街にまだ住んでいた。

フォー先生は、歳はとっていたが昔と変わらぬ目をしていた。


「先生、ただいま戻りました。」


「・・・・・・・・・ラムズ。よく戻ってくれた。漢の顔になったな」



先生は、弱い子供や女性、老人。心優しい者を集めて倉庫街で力を振るうものから皆を守っていた。


その晩、十数年前に交わした約束を果たす。


「こんな所だ。なにもかが今はおかしくなっている。だが正常に戻すのに私だけでは、まだ時間が掛かりそうだ。手伝ってはくれないだろうか」


ラムズは、断る道理などなかった。

むしろ、力とはこの為にあるのではないかと思った。



そんな時だった。

石が投げ込まれ部屋の窓が叩き割られる。

「よーぉ。フォーの旦那。今日はいつもと違うぜ」


外を見ると柄の悪い人達が50人ほど、こちらの様子をみていた。


「おれも根っからの悪人ってわけじゃねぇ。倉庫と保管してある酒、、あと女を渡すなら見逃してやってもいい」


大抵の奴は、たいした事のなさそうなチンピラだが一部に流れ者として加わったのであろう実力がありそうな傭兵も混ざっていた。



フォーは、自分の信念を呪った。

『降獣』とは、己の信念である。そしてフォーの信念は、とても矛盾していた。彼は武においてその力を使うことが出来た。だが、武もないただの悪人程度にはその力を使うことが出来なかった。己に課した枷である。その為、多勢に無勢で力を使えなければ少し強いだけの存在にしか過ぎない。


弱いもの達を背に守り抜くにあまりにも非力であったのだった。



「先生、私に任せてください」


ラムズは、そのような信念ではなかった。

彼は、『飛獣』を発動させた。

体中に刻まれた刺青が青色に光輝く。


まわりの全ての人がその光に目を奪われる。

フォーの後ろに隠れていた子供が一言つぶやく。

「・・・・・・きれい。」



次の瞬間にラムズの姿はそこにはなく。

50人近いならず者達は、気絶してその場に倒れていた。

フォーにも何がおきたのかは、正確には判らなかったがそれがラムズがたどり着いた武の極みだと理解した。


ラムズはフォーと共にこの町の治安と建て直しに尽力した。



『刺青の男』と彼は呼ばれた。非道な者たちは、彼の前では無力だった。ならず者達は心を入れ替え、倉庫街の力仕事に汗を流した。数年のうちにこの町のは、復興をとげることになる。誰もがラムズを慕い、町の代表としてその名をあげたが、彼はそれを断った。私は、先生の考えに助力しただけで私自身を育てた先生こそこの町の代表に相応しいと。


誰もがそれを否定することはなかった。復興を成し遂げた立役者としてフォーが代表を務めることになった。



△▽△▽


遠い記憶が甦った。


目の前の少年が思い出させてくれた。強い意識を感じる。


「あぁ、君がなぜ『刻印に試練』の浜辺を目指しているか判ったかという質問だったね」


「単純さ、そんな気がしたからだよ。私は、これでも多くの場所を訪れ見て感じて。また多くの人と出会う機会を得た。アル君達と先ほど話をしながら君の人となりも見させてもらった。君も色々抱えていそうだが信念のよなものを、感じずにはいられなかった。


そういう意味でただの海など目指すはずがない。そう感じただけだよ」


そう言いながら、倉庫の店主であるラムズさんは笑みを浮かべた。


「もう、答えは決まっているのだろ」


アルは、底知れない人物であると感じながらも優しいラムズの言葉に


「はい、是非、僕たちにやらせて下さい」

そう答えた。


ラムズさんは、写しに少し時間が欲しいといった。

彼は、必要な情報を必要なだけしか提供しない。彼が時間が掛かるといった訳は、それだけアルに期待することが多く、最初で最後になるであろう自分の半生を彼に伝えるべきだと考えたのである。あったばかりの少年にこれほどの期待をした自分も驚いたが間違えようのない確信があった。ラムズのそんな思いは知らずともアルは、人間として信頼できる相手で好きになった。



ラムズさんは、待ってる数日に紹介を出しておくので、町の代表に会っていってくれないかと言われた。彼いわく、エマのような犬族は一時的にならず者の代名詞として各国で虐げられその姿をほとんど見ることが失くなってしまったそうだ。だがフォーのように男が犬族の尊厳を回復したことで少しはまともなったという。


それでもこの町では、犬族はフォーひとりだけなのでエマさんが会っていってくれると喜ぶはずだと言うことだった。


2日後、ラムズさんが同席して町の代表であるフォーさんに会うことになった。


△▽□▽


















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