1ー始まりの始まり
少しだけ昔の物語
ローレンは、2人で酒を酌み交わしていた。
目の前の席に座るウエルズが40歳も目前に結婚すると、突然言ってきたからだ。
彼は、優秀な王国騎士であると同時にこの国の現王の子でもあった。
王と同じ赤黒い髪、顔は母親の方に似ている。
身分が高いにもかかわらず、誰とでも分け隔てなく接する人柄で
物腰は柔らかく、柔軟な発想と相手を気遣う優しさを
持ち合わせた男だった。
誰からも愛されるとはまさにコイツのことを言うのだろう。
ゆえに、女性にも当然人気があり色々な誘いがあっただろう。
なぜか、本人は興味がないのかこの歳まで独身であった。
この国は、王の子であっても必ずしも王を継ぐ訳ではない。
各領地の優秀な人材の中から次の王が選ばれる。
他の国でも同様の仕組みを取り入れようとしたところもあったが
派閥争い、暗殺、謀略などで結局うまくいかなかった。
なぜか、この国の領主一族は自らの存在が高貴なものでなく、
民に尽くすことが最良であると幼い頃より教育される。だがそれだけでは人の心など弱いもので流されて楽に生きようとするものだが
かれらは、それを好まざるようだった。
そのためか、常に新しい物流やシステムが王の着任と共に制定し、
どの周辺国家と比較しても豊か国であった。
人々は、商業と工業を中心に栄え。彼の父である今の王が
歴代の中でもっとも国を繁栄させたといってもいい。
王の功績の中でもっとも偉大な事は、希代の天才であり発明家であったことである。神々がこの大地に残したマナが存在する。マナ操作はマナを付加する触媒が必要でかなり限定的な範囲で水に火の属性のマナを与えるお湯を沸かしたり、火の水を属性を付加する程度であった。お湯を沸かすぐらいなら木をくべて普通に沸かした方が楽なぐらいだ。またマナ操作は誰でもできる訳ではなく、マナをある程度感じることの出来る人にしか扱えない代物だった。
王が王になる前、彼は大賢者アジェルーダの元で上級マナ操作を会得した後、試行錯誤の末に超小型の空間魔道具を発明した。
彼はこれを「アムーズ」と名付けた。
さながら神の手と言ったところであろう。
これにより、人々の生活は一変した。
マナ操作ができない人でもイメージするだけでマナが扱える。
物質の空間移動。
物質の収縮拡大。
物体の変換と還元、そして発現。
それらは、機能の一部でありこれを用いたシステム構築により
常に新鮮な食料。物の大量生産。
欲しいものが欲しいときに欲しいだけ手にはいる。
そんな夢のような道具。
一つの国が突然、神のような力を手にいれ。見たことも聞いたこともないような暮らしをし始めたわけだから、必ずしも良いことばかりではない。周辺国ならず、竜を信仰し古くから強大な力をもつ帝国などからすれば、面白くないわけである。
なんとかこのアームズを独占し、自らの物にしようと武力による戦争を仕掛けてきたのは言うまでもないが、アームズの前では全てが無力であった。
武力による交渉が無意味であると気づいた一部の国々は、同盟としてアームズの恩恵を受ける和平案へ移行。
それを拒絶し、それでも武力による交渉を望む国は、帝国側につくなど世界は数年で二分したのであった。




