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1ー13 愛する者

△▽△▽△▽


ローレンは、暇だった。

アルじぃは、実家にいた時ほど自由がないのか。研究室に一人で籠ったり。時に僕を置いて何処かに行ったきり数日帰って来ないことが多くなった。アジェルーダにとっては、ローレンは友達ではなくある種の観測機械のようなものであり必要な時に手元にないと困るため自らの側に置いていただけである。


それにたいしてローレンは、アルじぃは友達に近い存在であり。遊び相手がいなくなった事でひたすら暇をもて余していた。


そんな時、王国の公爵家の令嬢であるラル・エルサ・トリーニがマナ操作の習得のためこの土地に滞在していた。王国で2番目に広い領地を持つトリーニ家の長女であり頭脳明晰、そして可憐でおしとやかな性格だった。誰に対しても親切であり、けしてその身分をひけらかすことはなかった。彼女は15歳になっており十分に女性としての魅力も兼ね備える年頃になていた。



ローレンと言えば、同じ年齢になったが一般常識など誰も教えてくれる環境がこの研究施設には存在するわけもなく。同じ施設内の自分より遥かに年上の者と対等にマナについて語ることはあってもそれ以外で話す事はなかった。


エルサは、ここに来てマナ操作について学ぶにあたり大賢者アジェルーダより歳も同じであることからローレンを彼女の教育係に任命した。理由は他にもあり単純に少女相手に自らが教えるのが面倒だったからである。ローレンは、すでにこの歳でマナ研究によってこの集団が獲得したほぼ全てのマナ操作を自分のものにしていた。


施設内では、だれもが次の大賢者の責務を果たすのはローレンしかいないと思っていた。しかし、彼女との出会いにより彼は一人のまっとうな人間としての知性を獲得するのである。


「あなたの事よ。ローレン、優しさの前に相手にあわせて相手を思いやる。理解する努力をしなさい」


一体、どっちが教育係なのかわからない関係であった。エルサは、人として欠陥だらけのローレンに赤子を最初から育てるかのように次の日もまた次の日もローレンに常識的な振る舞いを教え続けた。ローレンも最初は、あまりにも鬱陶しいエルサのことが嫌いであったがある時を境に彼はエルサの事が好きでたまらなくなったのである。






エルサは、マナ操作の習得などどうでも良かった。婚約者が決まる前の花嫁修業のようなもので大賢者の元で学んだという肩書きが両親からしてみれば欲しかっただけだからだ。だから、両親からここに行くように言われた時は、無難に愛想よく振る舞い。適当に学んだら帰るだけの予定であった。


それが、、、あれ何なの?


大賢者アジェルーダが教育係として押し付けたのがとんでもない非常識男であった事が彼女の母性本能を刺激しのである。


だが、1年近く経とうしてもなかなか、ローレンは上達しなかった。そしてローレンとエルサは休日に行った旅先で大喧嘩をした。


「お前の言うことなんて守ってたら、いくら待ってもご飯が食べられないじゃないか」


「ローレン‼️ 食事の前に感謝するのは当たり前の事です。ちゃんとお祈りをしてから食べましょう。」


そう言って、エルサはお祈りを始めた。ローレンも最初はそれに従う素振りをしたが直ぐに目の前のご飯に手をつけようとしたその時である。エルサは、懐からおもむろに棒を取り出すとローレンの手をテーブルから払いのけた。


いつもならば、ローレンも悪いのは自分らしいので諦めてお祈りの続きをするのだが今日は、自分の好物であるアルアル鳥のクリーム煮であった為、我慢しきれなかったである。


「エルサなんか死んじゃえ」


そう言って席を立つと、エルサを一人のこしてその場から逃げたのである。


エルサは、今日はいつも頑張ってるローレンの為に遠出してまで彼の大好物であるアルアル鳥のクリーム煮が美味しいと大評判のお店で彼にご馳走をしてあげる予定だったのにとても悲しい気持ちになった。彼が席を去ったあと彼女は人目もはばからず大泣きしたのである。


△▽△▽


ローレンは、通りを一周してから改めて自分がいけないと気づいたのか。エルサが待ってるはずのさっきのお店に戻ったのだが彼女の姿はもうそこにはなく。お店の人が申し訳なさそうに彼に箱を手渡した。


「先程のお連れ様が私どもに依頼して、デザートの後にサプライズでこれをお客様に手渡すように言われておりましたが、急にお姿がお二人とも消えてしまいましたので困っていたところでございます」


ローレンは、店主からそれを受けとると隣のテーブルに座っていたお客に彼女が走っていた方向を聞いて慌てて追いかけるのであった。


その日は、本人は完全に忘れていたがローレンの誕生日でもあった。

箱には、バースデーカードが添えられており16歳の誕生日を祝う言葉と感謝の言葉が添えられていた。


ローレンは、実は生まれてはじめて誕生日を祝ってもらたのである。本来ならば小国と言えど、君主の息子ならばお祝いの席が開催さるのが常識だがあまりに特異な子供だった為にそんなものが開かれることは無かった。あったのは彼の記憶にない2歳の誕生日会が最後である。


彼は、自分が他の人とは感覚がずれていることは何となくわかってはいたが周りの子供が誕生日を祝ってもらうのを見て、決してそうして欲しいとは言わないまでも憧れがあった。



△▽△▽


エルサは、目を真っ赤にしてうつ向きながら当てもなく歩いていた。

喜ばしてあげるはずだったのに、今日ぐらい好きにさせてあげてもよかったのかも知れない。あれだけひどい事を言われたのにも関わらず、エルサは自分を責めていた。


通りの脇道に入るとその場でしゃがみこみ、先程よりも激しく嗚咽をもらしながら泣いた。


「もう、私はひと一人まともに喜ばせてあげることすら出来ない子なのね」


そう、言葉を漏らすと彼女はまた立ち上がり一人で帰りの馬車を手配し先に帰宅した。





、、、、探しても見つからない。


ローレンは、焦っていた。

何度も何度も同じ通りをぐるぐると周り、エルサを探した。

なんでこんなにも嫌いなはずのエルサを探しまわっているのか、自分でも分からなかった。



2日間も彼は同じ町を探し続けた。

彼女が馬車で帰宅した事が分かった時は安心したが急にこのまま帰宅しても彼女にあわせる顔がないのと自分の不甲斐なさを感じた。


初めて心の底から自分の為に色々してくれている彼女の優しさに気付き申し訳ない気持ちで頭がおかしくなりそうだった。


どうしようもない気持ちのまま彼は歩いて施設まで帰る事にした。



△▽△▽△


もう、あれから4日もたつのにローレンが帰ってこない。

エルサは動揺していた。私が勝手に一人で帰ってきてしまったから彼は怒ってどこかに行ってしまったのではないか。何か事件に巻き込まれてしまったのではないか。

彼女は、頭の中でもいろんな妄想をしていた。


いったい、何処にいってしまったの‼️ ローレン。






私が気に掛けていたことを知っていたのか誰かが部屋の前で教えてくれた。

「ローレンが帰ってきたみたいだ」

エルサが施設の屋上に向かうと確かに、遠くの方にローレンらしき人物がゆっくりと歩いてくる姿が見えた。


‼️


いても立ってもいられずエルサは、その場から走り出した。

別に掛ける言葉など何も考えて無かった。素直にローレンが無事に帰って来てくれたことを喜んで、ローレンの元へ駆け出していた。



ローレンの方は、歩き続けながらエルサに何って言ったらいいのか判らないまま施設が見えてきた為、さらに足取りが重くなった。


エルサ怒ってるだろうなぁ。あんな事を言った後だし、さすがに許してもらえないだろうなと半ば諦めていた。下をむいていたローレンは、ふと頭をあげると向こうから走ってくる人影がみえた。


息を切らしながらドレスの裾を汚し走ってくる少女がエルサであることはローレンは直ぐに分かった。そして彼女は近くまで来ると足を止めて。



「お誕生日だったのにメチャクチャにしてごめんなさい‼️」

そう言って頭を深々と下げたのである。


彼女は、怒るどころか、、許すどころか、、、、何の非もない。どうみても自分が悪いのに謝ってきたのだ。その瞬間、彼の中で何かが変わった。


目の前で謝る少女をみてボロボロと大粒の涙を流しながら、ローレンは生まれて初めて自分の意識で泣いたのである。


「エ、エル、サァ、ごめん、なさぃ うぅーーーーーー」

いつも何考えてるか分からなくて、すぐにツっぱねるローレンが小さな子供のように大泣きした。お互いの不安が溶けた事でエルサまでもが泣きはじめ、二人は肩を抱き合い泣くのであった。



「ローレンのバカ、、、、、次にこんなに心配かけたら、もう絶交なんだからね、、」

すこし落ち着いたエルサがそう言うとローレンは、何度も何度も謝り。二度とエルサに心配をかけさせないと約束するのであった。


△▽△▽△▽



エルサは、実家に帰る時までローレンの面倒をみた。最初の出逢った時の一年間とは違い。残りの1年はエルサの言うことを素直に聞いたローレンは、全く別の人間に生まれ変わったかのように礼儀作法や人としての情愛を学んだ。


その後、一度は王国でも力のある公爵家の令嬢であるラル・エルサ・トリーニのトリーニ家に正式に養子として迎えられ婚約するところまではハッピーエンドで終わるはずだったが公爵家専属の主治医の診断で、子が作れない事が判ると容赦なく婚約は破談した。


公爵家の家長としては、どんな形であれ次期大賢者と称されるほどの優秀な若者の子供が欲しかったのである。しかし、世の中には暗黙のルールが存在し大賢者ともなれば世界の中立であり犯してはならない存在。またそれを破る欲深きものは容赦なく。より強者によって淘汰されるのがわかっていた。この者はいずれこの家から出ていかなくてはならない存在となりえた。子供ができればまだその子がトリーニ家の血筋を継ぐ事ができる。愛の為だけでこの代々続くトリーニ家を潰す訳にはいかなかった。



エルサもローレンへの恋心はあったものの血筋を途絶えさせるような真似もできず。親の意向に沿うことになった。だが、ローレン自身はそんな事はとても些細なことだった。彼女が正式にかの王に嫁いだあとも施設に戻ることはなくエルサが育ち愛した場所で過ごすことの喜びを感じていた。両親が娘の近況を従者のものから聞いたさいにあまりにも孤独で不憫だった為、彼を建前上は優秀すぎる警備兵として推薦し、娘の元に送り出した。




エルサの良き理解者として彼が彼女をそばで支え、そしてのちに彼女の息子の面倒まで見るようになるのは至極自然な成り行きであった。ローレンの普通の人間としての感情の全てが彼女のお陰で得たようなものなのでエルサが愛するものが全て彼の愛すべき対象であった。


エルサがもし慈愛の心でローレンに人の心を教えていなければ全ての始まりも無かったかもしれない。


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