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第71話 陽の光は降り注ぐというのに

「それにしても、またしてもやってくれたわね、チクニー。」

 アカネは腕組みして激怒している様子だ。


 前回の話から一週間ほど遡った時間軸になる。魔王と別れたアカネ達は今後の動きを話し合っていた、が、まずは反省会である。その題材は、もちろん今回の逃亡劇の最大の戦犯、チクニー・コンコスールだ。


「エルヴェイティに続いて二度目だね。学ばない奴。」

 ビシドも腕組みして正座するチクニーを見下ろしている。


「確かに今回のは、ちょっと短絡的すぎる行動だったと思います。」

 さすがのエピカも少しあきれ気味だ。


「死んで詫びろ、ゴミめ…」

 アカネが怒っているのでなんとなく流れでアマランテもチクニーをなじるが、実は彼女はあまり状況を把握していない。


「す、すいません…あの…怒ってますよね…?」

 恐縮しながらチクニーが当たり前のことをアカネに訪ねる。


「別に怒ってはいないけど…こんな奴にも陽の光は平等に降り注ぐんだなあって、大自然の偉大さに感動してるだけ。」


「宇宙規模でディスられた…」

 アカネの答えにさらにチクニーが恐縮する。


「真面目な話、なんでこんなことになったかあんた分かってる?」


 アカネの答えにチクニーが答えるが…

「その、実は今回のことで魔王と決戦するのが既定路線だと思いこんでいた節がありまして…」


「違う、あんたはね、自分の頭で考えて行動してないからよ。

 結局『自分は奴隷で、最終的な責任は主人が取ってくれる』って思ってる。だからろくに考えずに安易な行動を取るのよ。

 前にも言ったけど、あんたほんとに自分が解放奴隷になった後の事ってちゃんと考えてる?自分で考えて行動してかなきゃならないんだよ?」


 アカネの言葉にこの話を初めて聞いたエピカが驚いた。チクニーを解放奴隷にすると言う話が本気だとは思っていなかったからだ。


「このままじゃあんたはたとえ身分が自由市民でも、自ら望んで奴隷になるよ。」


 チクニーはそのアカネの言葉に「まさかそんな」と半笑いで答えようとしたが、アカネがまじめな顔だったので黙ってしまった。


「アカネちゃんは本当面倒見がいいね。

 とりあえず、そいつは置いといて、今後のこと決めない?」

 ビシドの提案であるが、これももっともである。ノルア王国の事態は一刻を争うのだ。


 魔王は「今更バレても問題ない」と言っていたのだ。おそらくもう事態は『詰め』の段階にまで進んでいるのだろう。ここから通常の行程でパレンバンまで戻ればおそらくは2週間はかかる。式神や使い魔、伝書鳩を持たないアカネ達にはそれを短縮する方法はないとの読みで種明かしをしたのだ。


 しかし具体的に何がおこるのかは分からない。単に選挙や法案で民主化や王政廃止が起こるのか、それとも革命やクーデターによる軍事的な動きが起こるのか。


 アカネが熟考した後発言した。

「確かに全員で通常通りにパレンバンまで引き返せばその『事態』には間に合わないかもしれない。でも、ビシド、あんた一人ならどう?

 あんた一人なら荷物も殆どいらないし、アタシ達が足を引っ張ることもない。パレンバンまで全力で戻って、ヘイレンダールのスパイがいることを伝える。

 これならどのくらいで出来る?」


 これにビシドがしばらく考え込んでから答える。


「…一週間…それだけあればパレンバンまでいけるかも。」


「目的をはっきり決めておいた方がいい。具体的にパレンバンで何をするのか。」

 アマランテが助言をする。確かにビシドは戦術的には臨機応変な動きができるが、戦略的な動きまでは頭が回らない。アマランテが自分の立場で考えて困るであろう事を助言したのだ。


「そうね。さっき言ったとおり基本的にはナクカジャ王とマヌンガルにヘイレンダールのスパイがいることを伝える。さらに事態が進行していたら、すでに革命やクーデターが起こっていたら、直接ナクカジャを助けてあげて。私たちもすぐに後を追うから。」


「オーケー。今日はもう遅いから。明日の朝からたつよ。」

 アカネの指示にビシドが答えた。


「しかし、実際これから魔王軍とのつきあい方はどうするんですか?ノルア王国の件では敵対しますけど、じゃあ、現状敵なのか、っていうと微妙ですよね?

 この冒険の最終目標ってどうなるんですか?」


 しばらく考え込んでからこれにアカネが答えた。

「基本的にはやっぱり魔王は倒す。あいつらの野望をくじく方向で動く。それは変わらないよ。」


「それは…やっぱり魔王の弱者を支配して思い通りの駒として使うって方針が許せないからですか…?」

 先ほどのラップバトルの際助けてくれたエピカがアカネに問いかけた。


「あいつは…魔王は弱者は自分勝手で何も考えてない生き物だと思ってる。でもそれは違う。弱者には弱者の、強者には強者の戦い方があるんだ。それをあいつに思い知らせてやる。」


 ゆっくりと考えをまとめると、アカネがさらに語り出した。


「アタシの元いた世界にね、こんな童話があるのよ…

 『三匹の山羊のがらがらどん』っていうんだけどね…」

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