3話 小屋
俺はトシキ。日本人で地球人。今は地球にはいない。今、どこかもわからない星にいる。
俺は無類のゲーム好きであり、料理好きだ。
変なゲームをプレイ中に死んだ。
死んで転生的なものをしているのだが、誤算があった。誤算というより予想外だったということなのだろう。
こういうゲーム好きが転生しました───と言うような小説が地球上に存在する。
転生した世界がゲームと同じような世界だったというパターンだ。俺の場合もそうだと勝手に思っていた。
それが誤算だった。ゲーム───『PRO』とこの世界はまるっきり違っていたのだ。
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目を開いてあたりを見回す。小屋の中にいるようだ。
自分の服を確認する。
この世界の一般的な冒険者の服装は分からないが動きやすい服装だ。
腰にはベルトとポケットがついている。
小屋は森のなかに立っているらしく、あたりは静かだった。
「ステータス」
...なにもおこらないようだ。『PRO』だと、コレで開いたんだけど。
ステータスが確認できない。このままだと自分の力が分からないまま戦うことになる。危険だからどうにかステータスを開く方法を探しながら、食料調達にでもいくことにするか。
小屋の中にあった、小さめのナイフを取って小屋の外に出る。
ナイフは石で出来ているようで武器としての性能は低い。
...武器を早いうちに調達しておかないとな。
俺は草花が生い茂った森を歩き回る。
森に生えている木の陰で太陽が直接当たらないせいか気温は涼しく、過ごしやすい。
しばらく、奥に進むと木々が段々と少なくなっていった。そして、開けた場所に出た。
ピンク色の花がいくつも咲いている。葉っぱはギザギザしていて硬い。
見た目だけは『PRO』で出てきたルーラル草に似ているな。
コレも、回復薬にできるかな...
『PRO』でのルーラル草は回復薬の原料になる薬草だ。
ただルーラル草で作った回復薬はルー薬といわれ、回復薬の中では回復力が著しく低い。
HPを10程度回復させる回復薬だ。
いわゆるゲームで初期に買い溜めて、あまってしまうポジションの回復薬だ。
ルー薬でも、あるに越したことはないな。ちょっとした怪我でも命取りになるかもしれないしな...
ルーラル草に似たピンクの花を20本ほど抜く。
次第にあたりが赤く染まってきた。
ま、今日はコレくらいでいいかな。暗くなる前には小屋に帰りたいし…
俺は小走りで今まで来た道を引き返した。
...食料になりそうなものはなかったな。この小屋に何かあると良いんだけど。
小屋に帰ってからルーラル草に似たピンクの花を机の杖に置き、小屋の中を探す。
小屋は木で出来ていて、高さが低い机が一つと椅子が二つ、よくわからない木箱が隅においてある。
部屋の広さはざっと6畳ほど。その他には特に何もない。
椅子と机と木箱以外何もないから隠すような場所がない。
...食料になりそうなものはないか。今日は食事なしか...この辺の森で食べられそうな動物もないし、倒せそうにない。
近くに街があるかもわからないまま外に出ても危険だ。
早いとこステータスを開く方法を探さないとな...
俺は木箱を持ち上げて別の場所に移す。
暇潰しだったが少しは何かあるのをねがっていた。だが木箱の下には特に何もなかった。
...なにもないか。あー暇。木箱壊して見るか。
現実で家に侵入してツボとかタルとか壊すの夢だったんだよな…
(ガッ)
乾いた音がして木箱の破片が飛ぶ。
「あっ!!」
木箱があったあたりには何かの宝石らしきものが転がっている。
緑色をした1.5cmほどの石だった。
...魔石か?『PRO』でもこんな形をした石があった。魔石と呼ばれ、魔力が含まれる特殊な石だ。
魔力には大きく分けて4種類ある。
戦闘に使うMPのような魔力。
自分で役割を決めることができる魔力。
わかりやすく言うとプログラムできる魔力といったところだろうか。
例えば戦闘用は魔力を消費して魔法をつかうが、このプログラム魔力は魔力だけじゃ使うことが出来ない。
魔力を形のあるものに入れないといけないのだ。
スライムや鎧などさまざまだ。
『いかなる攻撃も受けない』とプログラムした魔力を鎧に埋め込めば最強の鎧が出来上がるし、『攻撃を受けたら姿をドラゴンに変化させる』という魔力をスライムに埋め込めば、ドラゴンになるスライムなんてものが作れるのだ。
どちらも高い技術が必要とされる。
初心者にもできるのはせいぜい、少し強くなった気にさせる鎧とかだろう。
他の2つはレアケースと言って良い魔力だ。
この2つはまず使うことがないのでいいだろう。
さっきの魔石に含まれる魔力はプログラム魔力だ。
それにたしか、魔力を込める用の石もあった。たしか、石晶といったはずだ。
この魔石にどんな魔力が含まれているかは分からないが何処かで使えそうな気がする。
これは大事に保管しておく必要がありそうだ。




