30話 エベレーター
「ありがとうございます。」
「いえ、助けてもらったのはこちらの方ですし、こちらこそありがとうございました。」
「じゃあ」
「はい、また来てください。」
剣を無料でもらい、帰ろうとした時、俺は坂のことを思い出した。
「あ、そういえば、他の階に移動する時って坂だけなんですか?」
「坂だけ...?世界中、坂だけだと思いますよ。坂以外になにかあるんですか?」
「はい、階段ってものとエスカレーターとエレベーターがあります。」
「階段とエベレーターとエスレータ....ですか。」
「エレベーターとエスカレーターです。」
「その、階段とエスカレーターエベレーターって言うのはどんなものなんですか?」
俺は近くにいた人に何か書くものはないかと聞いた。
その人は今すぐ、と言って部屋を出ていった。
...俺説明下手だからな。
絵でわかってもらえるかな。
「持ってきましたっ!紙質は最高級のもの、イトゥージのものを使っております。繊維の原料となる木材はブランド名にもなったイトゥージ山のものをつかっております。また、洗い流す際の水も───」
「あ、ありがとう。こんな高そうなもので良いんですか?」
「もちろんですよね。オーナー。命の恩人さんには何でもしますよね。あ、それでですね。このペンもですね当店が扱っている中で最高級のものを用意いたしました。このペンは───」
「あ、ありがとうございます。ワーナーさん?いいんですか?」
「ああ、いいんだ。」
ワーナーさんはニコニコしながら座っている。
「じゃあ、説明を始めます。」
最高級と言われるペンを持つ。
握り心地は最高だ。
「まず、階段というのはその名の通りに段になっています。こんな風に、」
最高級の紙に最高級のペンで階段の絵を描く。
4段くらいの段とフロアを書く。
「階段か。便利そうだな。」
「そうですね。うちなら坂なので削ればできそうですからね。」
「階段はこんな感じです。」
「エベレーターは?」
ワーナーさんが聞く。
「ワーナーさん、エレベーターです。エレベーターと言うのは───籠ですかね。」
「かご...」
「そうです。こんな風にかごがあって、」
そういって俺は四角を書いた
「かごは、頑丈なロープで吊り下がっているんです。」
俺は四角の上に線を引く。
「そのロープは滑車と繋がってて、片方の紐を引っ張るんです。」
俺は棒人間と矢印をを書いてわかりやすくする。
こんな感じだ。
「人力か。大変そうだな。」
「あ、いや、ワーナーさん。これ人力じゃないです。こう書いただけで、力を調整できればなんでも良いんです。」
「便利そうだな。今度詳しく教えてくれないか。作ってみたいから。」
「いや、俺もあんまり詳しくなくて、知っているだけなので。」
「おお、そうか。じゃあ、こっちで実用化に向けて工夫してみるよ。」
「あと、エスカレーターっていうのがあるんですけど、詳しく知らないんですよね。」
「お、そうか。どんなのなんだね。」
「階段が動くんです。回ってるというか...紐有りますか?」
「ああ、あるよ。これだ。紐が関係あるのかね。」
「いえ、イメージですけどこんな感じです。」
俺は紐を結んで輪っかを作る。
そして、輪っかの外側から手を入れる。
腕をクロスさせるように。
そして、手をぐるぐる。
「ほら紐、回ってますよね。こんな感じです。実際はこんな平面じゃなくて、階段みたいになってるんですけど...」
「そうか。技術者と相談してみるよ。なんかあったら相談してもいいかね?」
「はい。いいです。いつでも来てください。森に住んでるんで、」
「え!?森ぃ?野宿か?」
「そうです。」
森って涼しいし、過ごしやすいんだよな。
「今すぐ、私の社員寮で暮らしてください。」




