21話 会話
俺がギルドに入って受付のエレに声をかけようとすると、声をかける前にエレが先に気付いたようだ。
眼をまんまるにしながらこちらに走ってくる。少し慌てている。
「どどどど、どうしたんですか。まだ、試験終わったわけではないですよね。ま、まさか途中で辞退したわけじゃないですよね。ま、まだ試験終了の連絡はラトリーから来たわけでもないし...試験は中止にもなってないし...え...え...?ど、どうして...え、よくわからないですよ...」
少しどころじゃなく、とても慌てていたエレはパニックになったのか受付の周りを行ったり来たりしている。
「お、落ち着いて───」
「落ち着いているば、場合じゃないですよ。さっさと本人に聞いて確かめ───あーどうしよう。ああああ」
すぐさま反論される。とりあえず、俺の方もなにがなんだか分からないので落ち着いてもらわないと困る。
「エレさん?エレさん?...エレさん!おーいエレさーん、エレさん!!!」
何度か言ってようやくエレさんは はぁはぁ、と息を切らしながら落ち着いてきた。
「落ち着いてください。深呼吸しましょう。」
「ふぅ.........」
「で、何をそんなに混乱してるんです?」
エレさんも落ち着いてきたので聞いてみる。
エレは深く息を吸ったあとに答えた。
「.........な、なんでトシキさんがここにい、いるんですか...」
「俺は、言われた通りにギルドの裏に行ったら看板があって───」
「か、看板!?あ、すいません続けてください。」
「看板に、闘技場は看板の裏にあるって書いてあって───」
「ギルドの裏に看板があるとしたら、看板の近くには多目的闘技場が有りますね...」
「でも、何にもなかったんです。」
「え...?何にもなかったって...」
「看板の周りにはそんな闘技場なんてものはありませんでした。と言うか建物すらありませんでした。」
「へ?それはおかしいですね......なんででしょう。」
「それで、ですね。裏側にあるって看板に書かれてたんで看板の裏を見たわけですよ。そしたら文字がかかれてて、」
「よくわかりましたね。で、どうだったですか。」
「暗号が書かれてた。たしか、北に5キロ行けって──あ、上にだったかな。」
「上ですか...確かにギルドでは、地図とかですと北を上にしますね。」
「俺もそう思って北に5キロぱっぱっと行ったわけですよ。」
「5キロをぱぱっと......」
「で行ったら、また看板があって西に100mかな、行けって書いてあって その通りにぶらぶら歩いていったら」
「...行ったら?」
「ズボッ!ですよ」
「ズボ...ですか。ところで、ズボってなんですか?」
「落とし穴」
「落とし穴ですか!?一体誰が...?」
エレさんの反応を見てるとコレ絶対、試験じゃないよな...
誰がやったんだろ...
「あ、誰がやったのか分かる方法有りますよ!」




