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序章──謎のゲーム──

トシキが料理以外で夢中になっているもの。

────それは、ゲームだ。ゲームの中でも特に好きなジャンルがある。

それはRPGそしてもう一つ得体の知れないおじさんから貰ったゲームだ。



いいゲームがなく店から家への帰り道。

使わなかった財布の中にあるお金が意味もなく使いたくなったトシキは最近流行りのたいやき屋によりつぶあん、こしあん、芋あん、季節外れの期間限定桜たい焼きとくず餅を大量に食べて帰っている途中だった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「そこの君。ねね、君。君。」

「え、俺っすか?」

「そそ。」道の隅に敷いてあるレジャーシートの上に座っている黒いフードをかぶった人が声をかけてきた。

「俺に何の用ですか?」


いかにも怪しいおじさんに声をかけられたことにトシキは驚いていた。


こういう人って悩んでそうな人に声をかけてるんだっけ…?俺、そんな顔してたかな…それとも、そんなんじゃないのかな…


「君、げぇむ好きでしょ、────ね?」


げぇむ…?あ、ゲームか。なにも返事してないのに───ね?ってこの人、大丈夫かな…ゲームは好きだけど...


「まあ、そうですけど…」

「やっぱりそうだ。やっぱね、見たらわかっちゃうんだよね。うんうん。ね。やっぱそうだと思ったんだよ。ね。」

「え…それだけですか?───すいません。帰ります。」


怪しすぎる…かかわらないほうが良い気がする───帰るか…


「いやいやいやいや。ちょい待って。───ね?これこれ。見てこれ。コレ新感覚げぇむ。」

「はぁ…コレですか…」


ワイヤレスイヤホンのようなサイズをしているその物体がゲームなのだろうか?

コレだけでは画面も表示できないだろうし、操作もできそうにない。遊べそうもない。


「ゲームなんですか?これ。何もできそうにないですけど…」

「君、あれ知ってるか?アレアレ。」

「アレ?アレってなんですか?全くわかりませんけど」

「あの…えっと、赤きしわくちゃレッドボールだ!」

「赤きしわくちゃレッドボール?」


レッド…?redのことか?赤きで重複してるし───赤いしわくちゃのボール…何だそれ。全くわからん


「どんなやつです?その…赤きしわくちゃボールってのは」

「食べ物だよ。た・べ・も・の。わかるかね。君。た・べ・も・の。」


赤くてしわくちゃな球体の食べ物───梅干しか…?


「梅干しですか…?」

「あああ、そうだそうだ。思い出したよ。君。うんうん。梅干しじゃ梅干し。」

「で…なんで梅干しなんです?」

「梅干しを想像すると酸っぱくなるでしょ。ね。君」

「まあ、はい。」

「視覚で味覚これすごいよね」

派手な赤い服をきた50代位のおばさんが奇妙な顔をしてトシキの後ろを通っていた。


目の感覚で感じたものなのに味を感じるということなのだろう。確かに人間の脳って不思議だよな。想像で感じるなんて


「はぁ」

「コレを耳に入れる」


ワイヤレスイヤホンみたいって正解だったんだな。


「そーすっと、詳しいことは知らんがさっきみたいになんか補ってげぇむができんだってね。ドウ?気になる?  気になるよね。うんうん。いいよ。梅干し…だっけ?を思いださせてもろったし、まけてやるよ。」

「梅干しで合ってますよ。まだ、買うとは言ってないんですけど…」

「ぜってー買うべきよ。ね。うんうん。1万円にしとくから。ね。」

「1万円!高すぎますよ!全然まけてないじゃないっすか!そんなに持ってないっすよ。」

「ええ、まあ、620万を1万じゃなぁ…まけてるって言わないよな…」


金銭感覚大丈夫なのか…?少なくとも日本人だしな。日本に慣れてないってこともないと思うけど…。


「じゃあ、何円持ってんだぁ?」

「へ…?あ、623円ですけど…」

「うん。それで良い。うんうん。まいどー。はい早くお金、出して。早く、早く。おっけぇおっけぇ。はい。まいどー」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

言われるままにゲーム買わされたトシキは微妙な顔をしながら帰っていった。


...ええっと─────6199377…


絶対損してるよな────酔ってんのかな…酒臭くはなかったしな。詐欺か?623円で?こんな金持ってなさそうな学生相手に?んーどうしよ。明日返しに行くか...今日行っても追い返されそうだし。


その次の日、トシキが同じ場所に行ってもその男は姿を表さなかった。誰に聞いてもそんな人はいないという。昨日のことさえも知っている人はいなかった。


派手な赤い服をきたおばさんでさえも──────










「ええ、あなたのことは見かけましたもの。でも、一人で道の片隅の方へ向いて何か喋っているんですもの。」

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