旅の始まり
とある辺境の田舎町レルニスの
ギルドに長剣を持った一人の
剣士が入って行った。
剣士
「(田舎町のギルドにしちゃ人が多いな。
それだけ依頼があるということか。
中々期待できそうだな。)」
ツンツンした髪の体つきのいい軽装の
剣士はギルドにある魔物討伐依頼の
張り紙を見た。
剣士
「(目ぼしいのはハイオークに
キラーウルフ、ヘルバード
あとはコボルトキングか・・・。
中々な面子だが。
他には・・・ん?)」
剣士はひと際目立つ張り紙を見つけた。
剣士
「(キマイラかこんな辺境の地に中々の
大物だな。
しかも他の個体より少しでかいとある。
修業相手には丁度いい。
それに報酬金額も中々だな、ん?)」
剣士と同じように隣でキマイラ討伐の
張り紙をまじまじと見ている人間が
視界に入った。
杖にとんがり帽子、黒のローブを
纏っていて見るからに魔法使いとわかる
ような恰好であった。
奇麗な金髪のショートヘアが帽子から
覗かせている。
剣士
「(まだ若い10台くらいの小柄な女の子と
いった所か、まさかキマイラを討伐する
つもりじゃないだろうな・・・?)」
剣士がそう思っていると
魔法使いの女の子は受付に
女の子
「あの、すみません、その、
キマイラ討伐の依頼受けても
大丈夫でしょうか?」
剣士は驚き咄嗟に大声で言った。
剣士
「お、おい、ちょっと待った!
そのキマイラ討伐俺が
今受けようと思ってたんだ。」
女の子
「え、あなたもですか?」
振り向いた女の子の
肌は白く透き通ったような
色をしていた。
瞳は青く澄んでいて
幼さのある可愛らしい
顔をしていた。
剣士
「ああ、それより君がキマイラ
の討伐を?
君みたいな駆け出し魔法使い
が倒せるような魔物じゃない!
やめておくんだな。」
女の子は穏やかな表情で言った。
女の子
「大丈夫です。
駆け出しじゃないので
問題ありません。」
剣士
「いや、問題ないって・・・
君は魔物討伐の経験はあるのか?」
女の子
「はい。今まで何匹かは忘れましたが
沢山の魔物の討伐をしています。」
剣士
「正直信用できないな。
君のような若い子が魔物を何匹も
討伐してるとは到底思えない。
この依頼は俺が受ける。
君は別の簡単な依頼を
受けることだな。」
女の子
「それは出来ません。
私には目的があるので。
貴方はこのキマイラ討伐
を諦める気はなさそうですね。」
剣士
「当たり前だ。
こんな上物中々いないからな。」
女の子
「困りましたね・・・。
そうだ、この討伐依頼
一緒にどうでしょうか?」
剣士
「はぁ!?俺が君と一緒に?
どう見ても君が足手まといに
なるのは目に見えている。
それに報酬も半分になっちまう。
俺はごめんだね。」
女の子
「報酬は要りません。
それと私が足手まといかどうか
実力を見てから判断して下さい。」
剣士
「ふぅ、そこまで言うなら
いいだろう。
道中君の実力を見せてもらう。
そこで俺が無理だと判断した場合
すぐに戻ってもらう。」
女の子
「はい、宜しくお願いします。
私はレンカと言います。」
剣士
「俺はセイルだ。
言っとくが俺はまだ君の実力を
見るまで一切信用しないからな。」
レンカ
「はい。」
セイル
「(それにしても何でこんな子供が
キマイラの討伐なんて、
そういえばさっき目的と
言っていたような・・。)」
レンカ
「それではセイルさん、キマイラ討伐の
依頼済ませてしまいましょう。」
セイル
「ん、ああ。」
二人は受付でキマイラ討伐の依頼を受け
ギルドを後にしようとした。
ふとセイルは自分の前を歩いている
レンカの足元が目に入った。
セイル
「(ん!?裸足!?
今靴を履いてなかったような・・・)」
セイルがもう一度レンカの足元を見た。
ローブで見えにくいが、歩く瞬間確かに
靴も靴下も何も履いていない足が見えた。
セイル
「(やはり見間違いじゃない、彼女は
裸足だ、しかもかなり汚れている。
ここまで裸足で歩いてきたのか、
でも何故!?)」
レンカ
「どうかしましたかセイルさん?」
セイル
「レンカ、靴はどうした?
何で裸足なんだ?」
レンカ
「これは私の特異体質の
影響で裸足に成らざるを
得ないと言いましょうか。」
セイル
「特異体質?」
レンカ
「はい、その特異体質で
靴を履くと二日と持たず
壊れてしまうんです。
一応サンダルは持っている
のですが必要な時以外は
履かないようにしているんです。
でも不憫とは思っていません。
それとどのような特異体質かは
後でわかると思います。」
セイル
「初めて聞く体質だな。
まあ君が不憫と感じて
ないのであれば
問題ないのだろう。」
レンカ
「それでセイルさん実力を
見せるというのは?」
セイル
「ああ、それなら
道中通る森に弱い
魔物がいるだろうから
それを一人で倒してもらいたい。」
レンカ
「わかりました。」
セイル
「危ないと判断したとき俺は手を
貸すが、その時は君とはお別れだ
レンカ。」
レンカ
「はい。だけど多分問題ありません。」
レンカは全然問題なさそうという
感じで答えた。
セイル
「そうか、じゃあ行くぞ。
(これからキマイラや他の魔物の
相手をするというのに
全く物怖じしない。
本当に実力があるのか、単なる
強がりなのか、まあすぐに
わかることだ。)」
二人は森へ向けて歩き出した。
暫くして
セイルはレンカの特異体質というのが
気になっていた。
セイル
「(特異体質か、
後でわかると言っていたが
魔法を使う時に何かあるのか?)」
セイルが色々考えているうちに
森へ着いた。
レンカ
「森に着きました。
ここから先出てくる
魔物を倒せばいいんですよね?」
セイル
「ああ。」
レンカ
「では、行きましょう。」
二人が森へ入り
少し歩いてから
またセイルは気になった。
セイル
「(森に入ったが足は
大丈夫なのだろうか・・・。)」
セイルは隣を歩いていたレンカの
足元をちらちら見た。
地面には木の枝や小石が散乱している。
それに森の中は湿っており
地面も所々ぬかるんでいる。
その上をレンカは表情一つ変えずに
裸足で歩いている。
セイル
「(丈夫な足だ、特に心配する
事もないだろう。
ただ少し気になるなあの足
・・・不思議な感じがする。)」
暫く歩いていると
魔物がレンカの視界に入った。
レンカ
「ゴブリンが3匹ですね。」
セイル
「この位置から見えるのか?
俺も目は良い方だが
何も見えないぞ?」
レンカ
「確かにいます。
ですが少し遠いのでもっと
近づきます。」
セイルとレンカはゴブリン達の
いる方へ静かに歩いて行った。
セイル
「お、本当にいた。
それにしてもよくあの位置で
分かったな?」
レンカ
「私も目はいい方なので。
では早速討伐します。」
するとレンカは精神を集中し始めた。
足元から全身に光が伝わっていく。
セイル
「こ、これは!!す、すごい!!!
(だがなんだこれは!?
ただの魔力ではない。
あの足元から伝わる力は
一体なんだ!?)」
レンカ
「はあ!!」
レンカは杖の先から光弾を放った。
放たれた光弾は3つに分離し
それぞれのゴブリンめがけて
飛んで行った。
ゴブリン達は光に気付くが間に合わず
直撃を受ける。
ゴブリン
「グェア~~~~!!!」
ゴブリン達は一撃で息絶えた。
セイル
「すごいな、レンカ!!
ゴブリンとはいえあんなあっさり
しかも詠唱もなしに
同時に倒すなんて!」
レンカ
「これで私が足手まといじゃない
ということは証明できたでしょうか?」
セイル
「ああ、文句なしだ。
というより本当に一人で
キマイラを倒せてしまいそうな腕前だ。
そんなに若いのにどこでそんな
能力を?」
レンカ
「お祖父ちゃんに鍛えられましたから。」
セイル
「お祖父さんに?」
レンカ
「昔はちょっとした有名人だったそうです。
けど私にとっては
普通の優しいお祖父ちゃんでした。
でも奴が・・・!」
セイル
「奴?」
レンカ
「・・・実はそのお祖父ちゃんの仇の
手掛かりを手に入れるために
キマイラの討伐に来ました。」
セイル
「お祖父さんの仇の手掛かりを
キマイラが?」
レンカ
「はい。確証はありませんが
そのキマイラが手掛かりに
なると思うんです。」
セイル
「そうか、君は色々と背負っていたんだね
君の事を誤解していて悪かった。」
レンカ
「いえ。わかってもらえればそれで
いいんです。」
セイル
「それじゃ、こんなところでちんたら
していられないな。
早く行こう。」
レンカ
「はい。」
レンカとセイルは再び歩き出した。
セイルは不可思議な魔力と
レンカのお祖父さんの事が
気になっていた。
セイル
「(あの足から出る魔力のせいで
レンカは裸足なのか。
だが普通の魔力ではなかった。
あれは一体・・・。
それにレンカのお祖父さん、
レンカにあれほどの魔法を
教えたんだ。
普通の魔法使いであるはずがない。
レンカもその祖父さんも
何者なんだ?)」
レンカ
「セイルさん、またゴブリンが!」
セイル
「ちっ、邪魔な雑魚共だ!
今度は俺もやるぞ!」
そのあと二人は森で何匹かの魔物と
遭遇したがあっさりと討伐した。
森を抜けると山岳地帯に出た。
セイル
「そろそろキマイラの住処が近い。
キマイラはライオンの頭と山羊の体、
蛇の尻尾を持つ魔物だといのは
知っていると思うが
やつは炎と毒を使う。
レンカ、君が強いのは
分かったが油断せず
十分間合いを取って攻撃するんだ。」
レンカ
「はい!」
セイルはレンカもさすがに
緊張しているだろうという風に見えた。
しかしレンカはキマイラというより
キマイラから得る手掛かりの
事を気にしていた。
慎重に歩いているとレンカはキマイラを
見つけた。
レンカ
「セイルさん見つけました。
討伐依頼書にあった少し
大きめのキマイラです。
(あれが無い、違うの?)」
レンカはキマイラの体を見回した。
本来ないはずのものが
付いているかどうかを確認している。
セイル
「ああ、俺にもあの大きさと開けた
場所だから見える。
(だがなんだあのキマイラは、
大きさだけじゃなく禍々しい
気を放っているぞ!!)」
レンカ
「あのキマイラ、ちょっと普通では
ないですね。
もう少し様子を見ましょうか?
(あれは見当たらない、
別の個体種なの?でも
あの禍々しさ・・・。)」
セイル
「ああ、もう少し様子を見て・・・。」
するとキマイラが2人に気付き
雄たけびを叫びながら飛んでくる。
キマイラ
「グォォォ~~~~~ン!!!!」
セイル
「何!この距離で気付かれた!!
いったん引いて体制を立て直すぞ!」
レンカ
「・・いえ、このまま行きましょう。
前の岩陰以外
隠れられるような場所がほとんど
ありません。
私が援護するのでセイルさんは
その隙に攻撃して下さい!」
セイル
「ちっ!仕方ない援護任せるぞ!!」
レンカは精神を集中し始めた。
セイルは前方の岩陰に隠れながら
前に出る。
キマイラは前に移動してくるセイル
に向けて突進してきた。
レンカ
「はあ!!!」
レンカはキマイラに向けて光弾を
発射した。
ゴブリンに放った光弾より遥かに
大きい。
キマイラは光弾に気付き回避する。
しかし回避した所にセイルの剣が
振り下ろされる。
セイル
「もらった!!」
キマイラの首から血が噴き出る。
しかし剣の食い込みは浅く
致命傷にはならない。
キマイラ
「グルアアア~~~!!!!」
セイル
「ち、浅かったか!」
キマイラがいきり立って再び
セイルに向かってくる。
レンカ
「大丈夫ですセイルさん、
そのままで!」
すると先ほど外れたレンカの光弾が
上空からキマイラめがけて
飛んでいく。
キマイラは避けようとするが
間に合わず直撃を受けた。
キマイラ
「グガアアアアア~~~~!!!!」
キマイラの頭は吹き飛びその場に倒れた。
レンカはセイルの元に駆け寄っていく。
セイル
「ふう、ありがとうレンカ、助かった。
それにしても凄い魔法だな。」
レンカ
「いえ、そんな、セイルさんが
引き付けてくれたおかげで
私も集中できました。」
セイル
「にしても、このキマイラやはり
普通じゃない。
レンカ、君はこのキマイラの
事を・・・!!危ない!!!」
レンカ
「え!!!」
倒したと思われたキマイラの尻尾
から毒液が発射された。
セイルは咄嗟にレンカを庇い
毒液を受ける。
セイルの左腕に付着した毒液は
皮膚を爛れさせる。
セイル
「ぐああーーー!!!!!」
レンカ
「セイルさん!!そんな、私を庇って!」
レンカがセイルの左腕の様子を見る。
腕の周りに毒が広がっていく。
レンカ
「これは、すぐに治療しないと!」
セイル
「レ、レンカ、す、すぐに逃げるんだ!
やつは危険だ、見ろ!」
キマイラは立ち上がり見る見るうちに
顔が再生していく。
そして体が段々と凶悪な出で立ちになり
背中から何かが現れ始めた。
それはデモン(悪魔)であった。
レンカ
「(あの額のクリスタル!)
デモンの額には黒光りする
クリスタルが埋め込まれていた!
セイル
「な、あれはデモン!
キマイラと融合しているのか!!」
デモンキマイラ
「クハー!!ヨクモヤッテクレタナ
ニンゲン!!!
マサカコノオレガケンゲンスルコトニ
ナロウトハ。」
セイル
「くっ!に、逃げるんだレンカ!!
早く!!!」
するとレンカは持っていた薬を
セイルに塗った。
レンカ
「とりあえずそれで毒の勢いは
少し収まると思います。
ですが危険なことに
変わりありません。」
セイル
「あ、ああ、すまない、それより
早く逃げないと殺されるぞ!!」
レンカ
「大丈夫です。
あのキマイラは私が
倒して見せます!」
そう言うとレンカは杖ととんがり帽子
それに黒のローブを脱いだ。
セイルはローブを外したレンカの姿
に驚いた。
セイル
「な、君は武闘家!?」
レンカは拳法着を身に纏っていた。
だが武闘家が本来身に着けない
騎士などが使う
ガントレットや司祭などが
身に着ける十字のアクセサリー
も身に着けていた。
レンカ
「武闘家とは少し違いますが、
これが本来の私の姿です。
黙っててすみません。」
セイル
「だ、だが、やつを倒せるのか?
あの禍々しい姿、先ほどのキマイラ
とは訳が違うぞ!」
レンカ
「はい、あいつを倒せなければ奴に
グライスにも勝てません!」
セイル
「グライスだと!!!
魔王ゼルスの側近だったあの!!
しかしやつは45年前に
勇者によって魔王共々
滅ぼされたはず!?」
レンカ
「いえ、グライスは生きています!」
セイル
「なっ!!!生きているだと!!」
デモンキマイラ
「ホウ、コムスメ、グライスサマヲ
シッテイルトハキサマ、ユウシャノ
ケツエンノモノカ。
ソレトコノオレヲ
タオスダト?ムダナコトヲ。
コチラノジュンビガトトノウマデ
ニニゲテイレバヨカッタモノヲ。
マアニガシハシナイガナ。」
デモンキマイラは完全に傷が癒え
戦闘態勢を整えていた。
デモンキマイラ
「キサマノチニクハ
サゾビミデアロウ
ユックリイタブッテ
クイコロシテヤル!!!」
デモンキマイラは先ほどより
数段早く突進してきた。
セイル
「早い!やられる!!!」
セイルが一瞬目をつぶった時
レンカはデモンキマイラの突進で
若干後退したもの両手で止めていた。
レンカの体は魔法を使う時以上に
光に覆われていた。
デモンキマイラ
「ナッ!ニィイイ!!!」
レンカ
「うぅっ!!はあ!!!」
レンカはデモンキマイラを投げ飛ばした。
デモンキマイラは岩の壁に激突する。
デモンキマイラ
「グオオーー!!!オノレェ!!!」
セイルは驚きすぎて大きく口を開けたまま
毒の痛みも忘れてボーっとしていた。
レンカはデモンキマイラを投げた方向へ
すぐさま距離を詰める。
デモンキマイラ
「バカメ!!ケシズミニナレーー!!!」
デモンキマイラは距離を詰める
レンカに向かって口から炎を吐き出した。
レンカ
「!はああ!!!」
するとレンカは足で地面を全力で蹴り
空中へ回避する。
地面にはレンカの足跡がクッキリ
残っていた。
デモンキマイラ
「アマイワ!!!」
デモンキマイラは尻尾から
毒液を噴射した。
先ほどよりも量は多く
毒液がレンカに掛けられる。
レンカ
「くっ!!!」
デモンキマイラ
「フハハ!ソノタイリョウノドクヲ
アビテハソクシダロウ、クハハ!!!」
強力な毒液によりレンカの服の一部が
溶け落ちた。
皮膚も爛れるかと思いきや
レンカの体に張られた
光によって毒液は消滅していく。
デモンキマイラ
「ナニィ!
ナンダアノヒカリハ!!」
レンカ
「油断していたつもりはなかったの
ですがやはり簡単にはいきませんね。」
デモンキマイラ
「ムスメ、キサマノソノカラダノ
ヒカリハナンダ!
レンカ
「魔物、いえ悪魔に教えるような事は
何もありません。」
デモンキマイラ
「キサマハキケンダ
イマスグコノバデ
ハイジョシテヤル!!」
するとデモンキマイラは
両手を上に掲げ
呪文を唱え始めた。
レンカもデモンキマイラの
一撃が危険だと判断し
精神集中した。
レンカの足には魔力と
闘気が入り混じった
魔闘気が集約されていた。
デモンキマイラ
「ワガアンコクマホウデ
キエサルガイイ!!!」
デモンキマイラは詠唱を終え
暗黒の球をレンカに向け放った!
レンカもそれを迎え撃った。
レンカ
「お祖父ちゃんと私の力が
一つとなった一撃
受けろぉ!!!」
レンカは暗黒の球を蹴りで
弾き返した。
デモンキマイラ
「バカナ!!!」
デモンキマイラは咄嗟に空中へ
逃げた。
しかし弾き返した暗黒の球が
デモンキマイラから反れた後
上空へ行きデモンキマイラ
目掛けてまた飛んで行った。
デモンキマイラ
「ナニ!コレハサキホドトオナジ!
ダガオレノマホウガナゼ!?」
レンカ
「私の魔闘気は自由に
方向を操れます。
その暗黒の球の表面に
私の闘気を流し込んで
操ったんです。
自分の魔法と私の魔闘気
であの世に行きなさい!」
デモンキマイラにレンカの
魔闘気が纏われた暗黒の球が
直撃する。
デモンキマイラ
「グゴベルグエウオーーーー!!!!」
デモンキマイラは跡形もなく消滅した。
黒いクリスタルだけを残して。
レンカ
「(やはりあのクリスタルだけ
残った。あれの痕跡を辿れば
・・・う!少々気を
使いすぎました、か・・・
もう足にしか力が・・・。
全身にあれだけの
魔闘気を送るのは
かなり体力を消耗しますね。
まだまだ鍛錬が必要ですね。)」
セイル
「はあ、はあ、
おーい、レンカ、大丈夫か!?
痛!って俺も大丈夫
ではないがな、はは。」
セイルは毒の進行を遅らせる
薬を塗ってもらったとはいえ
毒自体が治ったわけではないが
普通に歩いていた。
セイル自身は結構タフであった。
レンカ
「セイルさん!そうだ傷が、
今手当てをします。
しゃがんで左手を
出して下さい。
足が汚れていて
すみませんが。」
セイル
「あ、ああ、だが
手当といったってどうする気だ?
って足が汚れてって何?え!?」
セイルの傷口近くにレンカは
右足を触れさせた。
すると見る見るうちに
毒と爛れた皮膚が治っていく。
セイル
「レンカ、これは高等な
回復術と解毒じゃないか!
こんな魔法、並みの司祭でも
使えない。
君は賢者でもあるのか?
どうなっているんだ!?
というか何で足?」
レンカ
「すみません、もう足にしか
力が入らなくて
回復と解毒はお祖母ちゃん
に教わりました。」
セイル
「お祖母さんから・・・。
君は一体・・・」
レンカ
「それより先にあれを
回収します。」
セイル
「あれ?あの黒いクリスタルか。」
レンカは黒いクリスタルを
取りに行こうとした瞬間
クリスタルから声がした。
謎の声
「ふはは、よくぞデモンキマイラを
倒した。
貴様が勇者かどうかは知らんが
生憎だったな。
このクリスタルから私の魔力の
痕跡を辿ろうとしたようだが
無駄なことだ。
このクリスタルの魔力は全て
我が回収した。」
レンカ
「何ですって!
それに私の魔力って!!
まさか!!!」
グライス
「我が名はグライス、
亡き魔王ゼルス様の側近にして
現魔王グライスである!」
レンカとセイル
「グライス!!!」
グライス
「我は力を取り戻し
この世を力と欲望に塗れた
混沌の世界へとしてくれよう。
ふはははは、待っているがいい。
その日まで絶望と恐怖に怯え
ながら生きているがいい。」
グライスの声が止むと
黒いクリスタルは砕け散り
粒子となって消えた。
レンカ
「グライス、お祖父ちゃんの仇
いえ、全ての人々にとっての
諸悪の根源・・・!」
セイル
「まさか、本当に生きていたとはな。
にしてもレンカ、君はやつの
ことをどこで?」
レンカ
「そうですね、セイルさんももう
無関係ではないですし
色々話さなければいけませんね。
ですが、一旦町へ戻りましょう。
実はこう見えて
ヘロヘロなんです。」
レンカは気を張っていたが
自分の体が限界であること
を理解していた。
レンカはちょっと疲れ気味に
でもちょっとにっこりと
微笑ましい笑顔を見せた。
セイル
「ははは、なんだ、可愛い所あるじゃ
ないか。
大人ぶらずそういう笑顔も
見せた方がいいぞ!」
レンカ
「なっ!もう、セイルさん
からかわないで下さい。
でもありがとうございます。
お蔭で緊張の糸が少し
解けました。」
セイル
「そうか。俺もほとんど
何もしてないが驚きすぎて
どっと疲れたぜ。
町へ戻るか。」
レンカ
「はい!
(見ていて下さい
お祖父ちゃん、私は
必ずグライスを倒し
この世界に平穏を
取り戻します。)」
これは裸足の少女レンカの
旅の物語である。
人物紹介
レンカ
裸足で魔法使いの恰好をしている女の子。
金髪ショートヘア。白く透き通ったような
肌と青い瞳をしている。
身長158cm。16歳。
祖父の仇グライスを探すため旅をしている。
足元から発生する魔闘気の特殊体質により
靴がすぐに劣化し壊れてしまう。
そのため必要な時以外は常に裸足である。
本来の力を発揮する時にローブを脱ぎ
武闘着姿となる。
他にも騎士が装備するガントレットや
司祭が身に着ける十字の
アクセサリーも身に着けていたりする。
回復術や解毒もできる。
色々と謎に包まれている少女。
セイル
修業中の旅の剣士。
ツンツンした髪、ガタイのいい肉体
をしている。
身長183cm。22歳
長剣を使用している。
自分の技を磨くため世界各地を
放浪している。
辺境の町でレンカと出会い
一緒にキマイラの討伐に
向かうことになる。
かなりタフである。