表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

90/196

90 愛国女子高生と非国民オッサン

 二階堂さんを背負った俺は、相撲部部室のプレハブに到着した。


 ほっ。


 ここに戻ってきたことで、ようやく自分のホームに帰ったのだと安心する。


 ある意味、今の俺にとっては一番の安心安定安全な居場所ということなのだろう。昨日借りたばかりの一軒家はまだ慣れていないし、ここに居れば女子高生三人と合法的に一緒にいられるし。


 プレハブ内では、クロハが一人で四股踏みをしていた。恵水はソファに座って休んでいた。


「あ、赤良! 戻ってきたんだ! どうだった?」


 相撲部部長であるクロハの問いに答える前に、相撲部監督として、俺にはやるべきことがある。


「クロハ、恵水、手伝ってくれ。二階堂さんが魔貫光殺砲を撃って、魔力切れ状態ってことらしい。ソファに座らせてやってくれ。そして、冷凍庫にアイスクリームが残っていたら、食べさせてあげてくれ」


 二人は迅速に動いてくれた。さっきフォースフィールドの魔法を使った恵水は、既に休んである程度回復しているらしい。


「アイスは、あるにはあるけど、味の贅沢を言われたら対応できないからね」


 恵水が二階堂さんをソファに座らせている間に、クロハは冷凍庫の扉を開けて中を覗いて、渋い表情をした。


「別に味なんかどうでもいいだろ。カロリーのあるものを食べさせたいだけだ」


「抹茶とストロベリーとピーチとクッキー&クリームとベルギーチョコと宇治金時とマンゴーとピスタチオが、それぞれ一種類ずつしか入ってないから」


「そんなに種類豊富にあるのかよ!」


 というよりも、そんなに広い冷凍庫とは思っていなかったのだが、にもかかわらず、そんなに多くのカップ入り高額アイスクリームが入っているとは。魔法みたいだな、と一瞬思ったけど、この世界には魔法が実在して、女子高生でも魔貫光殺砲を撃てちゃったりするのだ。俺は撃てないけど。


「桃アレルギーとかあったら困るから、自分で好きなのを選んでよ」


「じゃあ、抹茶で」


 二階堂ウメさんは和風テイストを選んだ。さすが、名前がよく言えば和風で、悪く言えばババくさい人だなあ。と俺は妙に感心してしまった。


 いやいや、驚くべき場所はそこじゃない。


 クロハのアイスクリーム好きぶりのすごさと、様々な味を網羅する準備周到さだ。


 二階堂さんが抹茶アイスクリームをちびちびと食べ始める。


「ねえ、さっき、二階堂さんが魔貫光殺砲を撃った、って聞いたけど、本当なの? ってことは、火災の現場に魔族が居たってこと?」


 クロハが二階堂さんに問いかける。


 魔族? 


 近年、というか最近というか、ここ数分の間に頻繁に聞くようになったワードだな。魔族って。


「いや、違うよ。魔貫光殺砲を撃った、のは、脱出路を塞いでいた瓦礫を消し去るため、だよ。でも、あの火災は放火だと思われる、から、犯人は、たぶん、魔族だね」


 それを聞いてクロハと恵水は深刻そうな表情で顔を見合わせた。


 二階堂さんの言葉を嘲笑したりウソだときめつけたりもしない。魔族なんていう荒唐無稽なワードが出てきているのに、どこまでも真剣に受け取っている。


「事故じゃなくて放火だっていうの? だったら確かに、製麺工場なんかを狙う理由なんて、普通の旭川市民には無いだろうから、消去法で犯人は魔族ってことになるわね」


 恵水のお言葉だ。


 たしかにラーメンは旭川市民のソウルフードだから、製麺工場を破壊しようなんてする不届き者は旭川市民にはいない。だけど、旭川市民じゃないとしたら、なんで消去法で魔族になる?


 それに、消去法、っていうのも乱暴だな。確かな証拠も無いのに、犯人を魔族だって決めつけているんじゃないのか?


 現代日本の法律では、99.9%クロであったとしても、0.1%でもシロである可能性があるのなら、無罪になる。法治国家って、そういうもんだよな。


「なあ、三人とも。その、魔族、って奴がどんな奴なのか俺には分からないんだけど、そいつが犯人だと決めつけてかかるのは危険じゃないのか。冤罪の危険もあるし、かえって真犯人を見逃してしまう流れになってしまう可能性もあるんじゃないのか?」


 俺、大した学歴が高いわけでもない普通の高卒だけど、まともなことを言ったつもり。日本は教育水準と民度の高い国、のはずだ。


「赤良……これにはさすがに呆れたわね」


「監督……魔族を擁護するかのごとき発言をするなんて……非国民ですか……」


「そもそも今、魔族がどんな奴が知らない、って言いましたよね? 今時、小学生や幼稚園児でも知っていることを……」


 三人の口から異口同音に呆れの声が漏れた。


 え、ちょ待てよ。なんか俺一人だけ孤立無援状態っていうか、三人に包囲されて四面楚歌って感じじゃないっすか。


「てか赤良、そんな基本的なことも知らないで、相撲部監督とか言っていたの? 相撲の技術的なことだけを知っていて、その奥にある精神を知らないってことでしょ。ホントにマジで呆れた。魔族は、両国国技館を破壊した、日本にとっての不倶戴天の敵だよ」


 クロハのその発言は恐らく、女神としてのものではなく、この異世界旭川に住む一般人レベルの知識としてのものなんだろうな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ