東京ステーション・ダンジョン~手違いで異世界が転生してきたので、選ばれた俺が元に戻さなければならない(汗)~
俺はいたって普通の高校生で、別段普通の生活を送っていた。そんな日常を繰り返してきたのだから、これからも平凡な毎日が続くのだと勝手に思っていたのである。
違った。違ったよ。どこだよここ。ふわふわとした浮遊感のある、見知らぬ空間。昨日は高校から帰宅して、風呂や夕飯などを済ませ、テレビとかネットサーフィンとか、あ、宿題やってねぇわ。いや、でも普通に自室のベッドで寝たわけで。
それで、目の前にはわかりやすくあたふたしている女子がいる。まるでアニメとかでよく見る、そういう衣装だ。アニメもラノベも漫画もそこそこ好む俺には、このような状況に凄く心当たりがある。一応聞いてみる。
「ええと、俺は死んだんですかね?」
「ひぃっ、ごめんなさいごめんなさい、すみませんなの……」
「で、死んだの??」
「しっ、死んでません!あなたは死んでません!」
「おかしいな、こういうー空間の狭間ーみたいな場所だと、あなたは何々をやらかして死にましたが、私が助けてあげます異世界で大活躍してね!的な文句を言う神のような存在がいると思っていたんですけど。俺は死んでなくて、あなたはそういう存在じゃないんですかね?」
「う、うぅ……あなたは確かに選ばれたのです……というか、私が当ててしまったのです……。それで、私も恐らくその、仰るような存在なんです……」
ちょっといじりたくなるような背の低めの可愛い子だったので、つい意地悪な口調になってしまったがまさか泣かれるとは思ってなかった。というと、まさしくいじめる側の発言なので撤回したい。そのまま生暖かい目で応援していると、もじもじしながらその子は話し出した。
「あの、えっと、私は失敗してしまったのです」
「ほぉ」
「あなたが仰るように、私はあなたを異世界に送る役割をもっているのです」
「へぇ」
「まさしく私はあなたから見ると異世界の天使でして」
「ふぅ。予想の範囲内」
「私は白羽の矢をあなたに当ててしまったのです。これは無差別の上、私ノーコンなので本当に運が悪かったと思ってほしいのです。あと、あなた頭に矢が刺さったままなのです……」
「ひぃ!ホントだ!気付かなかった……。でも痛くないな」
「抜きますね、よいしょ。抜けましたです!で、問題なのが、あなたを異世界に送るのではなく、異世界を……あなたの世界に送ってしまったのです……うぅ」
「はぁ?」
どういうことだ。異世界全体が俺の世界に?来た?いや待てちょっと待て。そもそも異世界転生自体ありえないことだと認識している。そういうのは好きだが、どうあがいてもフィクションだ。転生するのが俺、というならどうにか受け入れてもいいとして、異世界がこちらに転生?ええと。
「というか、俺一人を転生させるのもだいぶ魔力とかそういうの、必要ですよね?世界を転生させるってそんな魔力あるんですか?」
「私魔力だけは底無しなんです!」
「いや、はあ……どういうことだよ……」
「それが……見てくださいなのです。こちらの世界とあなたの世界が融合して、エキという場所がモンスターの棲むダンジョンになってしまったみたいなのです」
天使が手を差し出すと、映像が出た。駅は阿鼻叫喚の有り様だった。異形が乗客を襲っている。電車という狭い空間で逃げ惑う人々。駅に着いた。扉が開かれ、人と魔物が吐き出される。被害はどんどん拡大していっている。
「……と、まあ、こんな感じなのです」
「おい……」
「実はこちらの世界にある魔物の巣窟が、あなたの世界のエキの配置とぴったりだったみたいなのです」
「なんてことだよ……」
「で、こちらの世界では皆魔法が使えるものなのです。だから、そのうちあなたの世界でも魔法を使う者が現れると思うのです。あ、出た」
映像で男が火の玉を手から出したのが見れた。魔物は火に弱かったのか融けていく。後ろのスポーツ万能そうな男は電撃。隣の女子高生は氷。次々と放たれる魔法に魔物が飲み込まれていく。
「ということで、あなたは選ばれたのでこの人々と比較できないような魔力を持ち、私の手厚いサポートが受けられるのです!なので私の尻拭……いや、この世界を救ってほしいのです!!」
「尻拭い」
「ごめんなのです!」
「尻」
「許して!」
こうして俺は異世界とまざり合って、ぐちゃぐちゃになりつつあるこの世界を救うことになったのである。
「ところで、前置き長くないですか?それで、このお約束の空間からはいつ出られるんです?」
「えとあの、目覚めてください……今、朝の8時なのです」
「遅刻!!」
布団から飛び起きたが、緊急メールで高校が休みになったとのお知らせが届いていた。まあ当たり前か。
「おはようございますなのです」
夢だったのに、夢じゃない。枕元には制服姿の天使が正座していた。
「実は先程世界が元通りになるまで戻ってくるな、と上司から言われちゃいまして。しばらくガッツリお世話になるのです。そういえば、自己紹介していなかったのです。アンジュというのです!ええと」
「駅境乗継」
「エキ・ザ・カイノ=リツグ……さん、よろしくなのです!」
「ちげぇよ!エキザカイ・ノリツグ!うん、まあ、もう仕方ないしどうしようもないから、こちらこそよろしくお願いします」
「精一杯サポートさせていただくのです!」
布団を片付けて適当に荷物をまとめた。ダイニングに降りて、いきなり母の制止という足踏みを食らうのも嫌なので、部屋にメモを残して窓から出た。アンジュの浮遊魔法で安全な着地。まずは情報収集と能力の把握から始めよう。このおかしくなってしまった世界を元に戻す。降って湧いた非日常に、こっそり俺の心は躍っていた。
お疲れさまでした。ここまで読んでいただきありがとうございました。
ノリで書き出したのはいいものの、こいつどこに住んでるんだよ!!!となり、考えるのがめんどくさくなったので、俺たちの冒険はこれからだ!状態で終わります。
もったいない精神で供養させていただきました。
お粗末様でした。