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Lycoris radiata  作者: 緋泉ちるは
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名付けの影響?

 目覚めると違和感を覚えた。


 いつも誰かしら抱えて寝るのでこの時期寒いと感じることはなかった。


 しかし、今日は肌寒さを感じ目が覚めた。


 妙だ。


 体は何かを抱えている。しかし、その感触はフォレストウルフではない。


 では、誰だ?


 重い瞼を開け、霞む目を擦りながらそれをみる。


 まず、目に入ったのは黒と緑が混ざった黒い毛…。フォレストウルフの毛並みと同じ色だ。


 しかし——。


 「え、えぇ!?」


 衣服をまとわない少女が私の横ですーすーと寝息を立て、私の胴にしがみつくように眠っていた。


 頭にはフォレストウルフの名残を残した耳が、お尻と腰の間あたりにふさふさとした尻尾がある…紛れもなく獣人の姿だ。


 〈おはようございます〉


 (お、おはよう。 これってどういう状況?)


 状況が呑み込めない。確か、昨日はモカと共に眠りについたはずだ。


 〈主人様の名付けにより妖樹狼は新スキル人化を習得しました〉


 人化?ということは、これはモカなのか。


 〈スキル習得は進化の際に個体名モカが望んだ結果だと推測されます〉


 (モカが望んで…? どうしてまた…)


 〈単純に主人様に近い姿になりたかったのかと〉


 「ん…ん~?」


 私が動いたのが原因だろうか、モカが目を覚ましそうだ!


 まずい!


 何がまずいって裸の少女の隣にいる私の貞操がまずい!


 モカが悲鳴をあげたりしたら、きっと他の仲間が寄ってくるだろう。その時の私の立場は…?


 「……おはよ、ございます」


 しゃべった!モカがしゃべった!


 私の心配を余所に悲鳴を上がることなかった。


 「お、おはよ」


 「この度は…リーダーのお陰で進化に至ることができました。それに感謝し、忠誠をお受け取りください」


 そういうと、モカは仰向けに寝転がり両腕と両足を開いた。狼というか犬が服従するときにやるポーズだ。


 「ちょっと、見えてる!色々と見えてるから!?」


 引いてあった布を剥し、モカへと被せる。クッション替わりの葉が舞い、部屋の中へと散乱する。


 「何故、忠誠を受け取ってくださらないのですか?」


 布から顔だけだし、哀しそうな瞳で私を見据えてくる。


 「忠誠は嬉しいよ。だけど今は、ね?」


 しっかりと見てしまった。小ぶりな胸に細いながらも引き締まった白く綺麗な体、つるつるなー…。


 やめておこう。


 「それならば、直ぐに私のお腹を撫でてください」


 布をめくり、再び裸体を晒そうとするモカを止める。これはしっかりと説明する必要がありそうだ。


 「モカは貴女は今人間の体をしています」


 「はい」


 「その体は、無暗に人に見せてはいけません」


 「それは、狼の姿でいろってことですか?」


 「いや、そうじゃなくて。私、今服を着ているでしょう?」


 「はい」


 「これは大事な部分を隠す為に着ているの」


 「毛がない部分、防御が弱いと言う事ですね」


 違うけど…まぁ、とりあえず服を着てくれるならいいか。


 「なので、その姿で生活するのなら服を着てもらいます! その後でなら忠誠を受け取ります!」


 「わかりました」


 (精霊さん!)


 〈はい、主人様!〉


 (モカの服を作りたいんだけど、どうすればいい?)


 〈それでしたら、次元収納をお使いください! 既に用意してあります!〉


 いつの間に!? というか、スキル覧にあったのは知っていたけど戦闘スキルではないので確認していなかった。


 〈次元収納はあらゆる物を収納できるスキルです。正し、生きているものは収納できないので注意してください。尚、収納している間は状態を維持できますので、水や食料の鮮度を保つことも可能です〉


 でた!商人泣かせの神スキル!


 次元収納を念じるとウィンドウが脳内に現れる。現時点では収納されているのは私の服とモカの服だけだった。


 (というか、何でモカの服って名前で収納されているの?)


 〈マスターの名付けを予想し予めご用意しておりました!〉


 ぐ、有能すぎる。


 〈スキル補足ですが、魔力が空になると次元収納が解け、収納されているものが消失する恐れがあるので、失いたくないものは私に預けることをお勧めします〉


 何と、私の中に居る精霊も次元収納を持っているらしい。


 〈正確には私の次元収納を主人様と共有した形です。他にも私と共有しているスキルがありますか確認しますか?)


 (それは、後でいいかな)


 落ち着いたら、戦闘スキル以外も確認しよう。それよりもまずはモカの服だ。


 次元収納からモカの服を一式とりだす。


 「とりあえず、私は外に出ているからそれを着たら外に出なさい。着方はわかる?」


 「はい、リーダーの着方を見ていたので大丈夫かと」


 ちゃっかり見られていたのか…。狼だと思って油断していた。今後は気をつけよう。


 私は家から出てモカの着替えを待つことにした。


 外に出ると、他の仲間が小屋の前で待っていた。


 「アナタ達…どうしたの?」


 どの狼を見ても期待に満ちた目で私を見ている。嫌な予感がする。


 「リーダー…お待たせしました」


 小屋からモカが現れると、狼たちが尻尾を振りながら大きく吠え出した。


 「ありがとう…」


 モカが照れながらお礼を言った。


 「リーダー…みんなも進化したいって」


 目を見た瞬間わかった。


 しかし、それには準備が必要だ。全員が進化し獣人化した場合、明らかに足りないものがある。


 食はあるが、衣と住だ。


 「これから、皆を進化を少しずつ進めたいと思う。だが、現時点で足りないものが多い。その準備が整い次第やっていくけど、それでいい?」


 「「「オン!!!」」」


 「まずは、モカ!貴女を正式に副リーダーに任命します。私の意を汲み取り、皆に伝えることを期待します」


 「はい」


 「では、仕事を振り分ける。モカは半数を指揮し、食料調達と家を作る作業を割り振りなさい。残り半数は、周囲を警戒しつつ森の開拓と防護柵を作る作業にあたりなさい」


 「わかりました。では、みんな行く」


 モカに従い15匹の狼が続いていく。


 残り半分が私に付いて作業を始めた。


 昨日家を作ったと思ったら進化して獣人となりこれからも増えていくことが予想される。


 忙しい日々が始まりそうだ。


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