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Lycoris radiata  作者: 緋泉ちるは
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宴会の準備

 あれ、おかしいな。


 さっきの祝福ムードが一変、村人全員に一斉に距離を置かれた。


 傍らには報告の為収納から取り出したロッククラブの頭が転がっている。


 「み、みなも様……それはもしかして……」


 冷静が売りのココアでさえ顔を引き攣らせて距離をとっている。


 「ロッククラブの頭部だけど……何か問題あった?」


 状況が飲み込めない。向こうも同じらしく、あからさまな態度で、


 うわぁ、やっちゃったよこの人……。


 て顔をしている。


 「し、失礼しました。モカ様とステラが戻った時点で討伐は中止だと判断しておりました。それで、ミナモ様が戻られたのは無事撃退したのだと勝手に……」


 まさか、一人で討伐して帰ってきたとは思っていなかったようだ。


 エリアボスを迎撃し、村を守った英雄として私は祀りはやされていたらしい。


 「あっはっは!ミナモちゃんならそれくらいやってもおかしくないさ!」


 「ステラ!」


 「お疲れミナモちゃん!」


 「無事でよかった。傷は大丈夫? 痛みとかはない?」


 ステラの無事はモカの報告から聞いていた。しかし、無事なステラを見て衝動的に体は動いた。


 「こらこら、一応けが人だったんだからいきなり抱き着いたら危ないでしょうが」


 そういいながらステラは飛びついた私を優しく抱擁してくれた。


 ロッククラブとの戦闘で一番ダメージを受けたのはステラだった。


 「モカが治してくれたお陰でこの通りさ!」


 「ホントよかった。モカありがとう」


 「いえ、ミナモさまの指示を守っただけです」


 当たり前の事です。と言いたげだが、目を閉じ顎が少し上がっている。


 モカが褒めてほしいときや誇らしい時にやるわかりにくいがドヤ顔だ。


 本人に伝えると辞めてしまいそうなので内緒だが。


 ステラの無事もわかったところで、私は皆に告げる。


 「今日は、宴会しましょう」


 割れんばかりの歓声が巻き起こる。


 「ステラ、休みたいところだと思うけど大丈夫?」


 「勿論さ!ミナモちゃんこそ大丈夫かい?」


 「うん。今日は張り切らないとね」


 私が手料理を振舞う宴会は年に数回だ。


 痛覚無効があるお陰で痛みこそないが、体の節々が悲鳴をあげているのがわかる。それでも今日は宴会を開催したかった。


 少なからず住民に不安はあっただろう。それを乗り越えたんだ。今日開催しない理由がない。


 生きるだけで過酷な世界。いつもよりも豪華な食事をみんなで食べて笑って過ごす、今の私たちにとって一番の娯楽だしね。


 流石に日も落ち始め、私とステラだけでは住民みんなの食事を作るのは間に合わない。


 「私とステラはメインを作るから、貴女達はナンをお願い」


 10歳を超えた子供にも仕事を与えている。


 目の前の子供達は狩りが苦手な子たちだ。


 ステラから料理を教わっており、食材の下ごしらえや準備、後片付けなどを頑張ってくれている。


 最近では、主食として食べているナンもどきを作る事をステラから許可が降りたので任せる事にした。


 ナンもどきはジャガイモをすり潰し、山芋をすりおろした物と混ぜ、鉄板で焼いた料理だ。


 普段はそれを果実で作ったソースや森でとれる香草や香辛料で味付けした豚か鳥で出汁をとったスープに浸して食べている。


 焼きたてはモチモチしていて、果実ソースで食べればパンケーキのようなデザート系、山芋の割合を増やしてスープに浸せばすいとんように食べれる。


 最近では、平たく伸ばし、ほうとうのように食べるのも流行り始めた。


 「今日はこれを使って料理したいと思う」


 調理台の上に、先ほど倒したロッククラブの足を一本取り出した。


 「流石、ミナモちゃんわかってるじゃない」


 「これで出汁をとったら美味しそうかなって思ってね。身は鶏肉と合わせて団子を作ったらどうかな?」


 「いいと思う。団子に鳥の軟骨も混ぜて食感も楽しむようにしたら面白そうだ!」


 方針は決まった。


 今日のメインはカニで出汁をとった、カニ身と鶏肉で作った軟骨団子スープだ。


 私がスープを作り、ステラが団子を作る。


 まずは寸胴に水を張り、水の状態から足を茹でる。


 沸騰するまでの間は、身を取り出す作業をステラとともに行う事にした。


 「やっぱり固い……」


 身を取り出すのには苦労した。


 包丁が甲殻を割ることができない。


 「私に任せるさ!」


 ステラは甲殻に包丁をあて、ゆっくりと包丁を滑らせる。


 「ほい、ミナモちゃんは身の取り出しを頼むね」


 「え…………」


 あっさりと開いた甲殻は身がぎっしりと詰まっていた。しかし、私が驚いたのはそこではない。


 「ステラが化け物になっちゃった……」


 「失礼な事言うんじゃないよ!」


 「だって! あの甲殻を簡単に裂くとか怖すぎ!」


 あんなに苦労して倒したロッククラブを簡単に……。それができるなら戦いの時にやってほしかった。


 「違う違う。私もさっき新しいスキルを手に入れたのさ」


 「新しいスキル?」


 「うむ。料理人EXってスキルで、食材ならば自分の望む結果に加工できるってやつみたいだね。ロッククラブとの戦闘でランクアップしたんだと」


 ロッククラブを倒したことにより、ステラのスキルは進化したらしい。これは経験値とは違く、討伐に貢献した功績という形で祝福を得た結果のようだ。


 〈主人様も獲得の権利を所得しています。ランクアップさせますか?〉


 (ん、他に効果は?)


 〈料理人EXのスキル効果は、材料加工と結果改善がついております。結果改善はいくらまずい料理を作ろうと美味しい料理に改善できるスキルです。ただし、ランクアップさせることにより、同時に獲得保留してあった甲殻破壊のスキルが破棄されます〉


 甲殻破壊とは戦闘スキルで甲殻の部位破壊が簡単になるスキルらしい。


 (どっちがおすすめ?)


 〈アリルテウス様より授かった武器の恩恵が受けれないので料理人EXをお勧めします。甲殻破壊は打撃スキルですので〉


 確かに、あの切れ味であれば硬い甲殻も関係ないか。


 私はひっそりと料理人EXを取得した。


 ステラのお陰で料理はサクサクと進んだ。


 お湯が沸騰したら作業をわけ、私はスープの灰汁とりをしながら味付けと入れる野菜の処理。


 ステラはカニ身と鶏肉を豪快に混ぜ、団子を量産していく。


 弟子たちもナンをどんどん仕上げていく。


 2時間近くかかったが、料理は完成した。


 料理人EXのスキルが気になったので結果改善を行ってみたが、味見したステラが絶賛してくれたので有益なスキルだろう。ちらりとみられたので私が料理人EXを獲得したのはバレたかもしれない。そこは、先に料理を始め、ステラに料理を教えた師匠として負けられないからね。


 「ミナモ様、後は私達がやりますので、乾杯の準備をお願いします」


 料理ができないココア、ラテ、フラットが給仕をしてくれるという事で後はお願いした。


 宴会の日は幹部が率先して動くことを推奨している。幹部自らが振舞う事により、部下や住人から信頼をあげることを目的にしているからだ。まぁ、モカは食べる専門なので大人しく座っているけど。


 「わかった。後は頼んだよ」


 乾杯の支度のために、私は調理場を離れた。


 「ご苦労様、もう少ししたら宴会が始まるからその頃には戻っていいからね」


 保護した子供の見張りを頼んだ者に言葉をかけ自室にはいる。


 子供は私のベッドに寝かされていた。


 未だに目を覚ます様子はない。救助したときは顔色が悪かったがそれも大分落ち着いている。


 もう少し休ませておけば自然と目を覚ますだろう。

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