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元軍人の学園生活  作者: おかすけ
1/2

入学(1)

バン!と不愉快な銃撃音が戦場に響いた。

「くそっ」

これで今日は3発目。

おまけに、こんなに外したのはこの部隊に入ったばかりだった頃以来だったので、余計に腹が立つ。

「これも妙なことを言い出す父さんせいだ」

とはいえ、余計な感情を戦場に持ち寄るといつ死ぬか分からない。

実際戦場で死んでいくを同志を何人も見てきた。

自分だっていつそうなってもおかしくない。

幸い、今のターゲットは知能が低く、まだこちらの位置には気付いてないようだった。

気付かれた所で、こんな所で死ぬ気はないが、戦場に油断は禁物。

出来れば最も安全な方法で仕留めるのが好ましい。

それが、僕がスナイパーライフルを愛用する理由だ。

しかし、それも弾を外せば意味がない。

こんな奴に手こずったなんて聞いたら父さんになんて言われるか…

意識を集中させる。

頭から不要な物を放り出していく。

やがて、今感じるのはターゲットの位置と自分の脈拍音だけ。

その脈拍音も徐々に小さくなっていき、無音と化す。

肌で風を感じ、理想の弾道をイメージ。

そして、ターゲットが1歩右へと踏み込んだ瞬間。

引き金は引かれていた。

バン!と心地よい銃撃音が戦場に響いた。

放たれた銃弾は、理想の弾道を描きターゲットの眉間へと直撃した。

ターゲットが完全に消滅し、周囲に敵は見当たらない。

どうやらここら一体の敵は殲滅完了の様だった。

「ふぅー」

となれば早く父さんの元へ戻るべきだ。

一刻も早く父さんの真意を確かめなければならない。







「お前には近々、学校に通ってもらおうと思っている」

その提案は本当に唐突だった。

しかし、今年で十五になった僕だけど、物心つく前からこの対魔物の特殊部隊に所属していたわけで。

そんな僕が今更学校なんて通えるわけが無い。

小学校にすらまともに通っていなかった僕は、それはもう学校というものに憧れていたし、当然それは父さんも知っていた。

実の子でもない僕に、こんなにも良くしてくれる父さんには悪いけど今回は断らせて貰おう。

「今更僕が学校なんて…」

「おっとすまない。説明が足りなかったな」

「え?」

「お前にこれから通ってもらう学校は普通の学校ではない」

普通の学校…一般的に言う、普通科高校の事だろうか。

そんなことは分かっている。

普通科高校は魔法の素質がない一般人が勉強する所である。

父さんが僕にそんな学校に行けと言うはずもなく、ここで言う学校とは対魔物学園だと思っていた訳だけど。

「そんなのは分かってるよ」

しかし、父さんは僕がそう言うと、何故か少し驚いた様子だった。

「では何故乗り気じゃないんだ?」

何故って…

「対魔物学園なんて行かなくても僕はここでやって行けるよ」

対魔物学園とは、その名の通り魔物への対抗手段を教える学校で、世界各地に存在する、

普通なら力にに覚醒した瞬間からそこへ通うことになるので様々な年齢層が集まっている。

卒業条件は、5年以上在学していること、18歳以上であること、戦場でも十分生きていける力を持っていること。

覚醒者にとって対魔物学園に通うことは絶対義務だが、幼い頃から特殊部隊に所属していた僕が、今更そこへと通えと言われても学ぶものはあるだろうか。

「はっはっはっ」

「何が面白いのさ…」

父さんは心底可笑しそうに笑っていた。

僕は何か変なことでも言ったのか?

「お前はまだ何も知らないんだな」

何も知らない…僕が?

いったい父さんは何が言いたいんだ?

「どういこと?」

「すぐ分かるよ」

聞いてもはぐらかされる。

その後同じようなやり取りが何度か続いたけど、結局僕は何も教えられないまま任務へと追い出された。

そして今に至るってわけだ。

帰ってからこうして父さんにわけを聞こうとしたら、少し待っていろと言われてどこかへ行ってしまった。

そして待つこと約五分。

父さんは戻ってきた…隣に女の子を連れて。

「…その娘は?」

まさかの不意打ちに、中々回らない舌を必死に回してそう聞いた。

「お前が学校に行く気が無いらしいからな。実際にそこの生徒さんに来てもらったわけだ」

「それは必要ないって…」

「お前は自惚れ過ぎだ」

「なっ…」

「まあまずは話を聞け、な?」

どうやら父さんは本気で僕を学校に行かせたいらしい。

とりあえず話を聞こうと、隣の女の子へと視線を移した。

まだ1度も口を開いていない少女は、初めて口を開いた。

「私は私立司鼓峰学園生徒会副会長崇宮京子です。よろしくお願いします」

彼女は深々と頭を下げた。

歳は少し上だろうか。

胸元くらいまで伸びた髪は真っ黒で、瞳の色も同じく黒。

背は女性にしては割と高めで、大人っぽい少女だ。

とても美人だとは思うけど、特に特別な容姿という訳でもなく、唯一の特徴とも言える右目の下の泣きボクロが、より一層彼女を大人っぽく見せていた。

「よろしくお願いします」

「いきなりで申し訳ないのですが、あなたには是非司鼓峰学園へと来てもらいたいのです」

「理由を聞いても良いですか?」

「うちの生徒会長が戦闘であなたを見かける機会があったらしく、それ以来偉くあなたを気に入っていまして」

うーん。

あまり覚えていないが、そんなこともあったのか。

「気持ちは有難いんですけど、僕にその気はないって伝えて貰えませんか?」

「それは困ります」

「えっ?」

話が通じる人だと思ってたけど、案外頑固な人だった。

「会長に頼まれた以上、手ぶらで帰るわけには行きません。ここは一つ勝負をするというのはどうでしょうか?」

「勝負と言うと?」

「ただの喧嘩です。私が勝ったらあなたは学園へと入学する。あなたが勝ったら…何でも言うことを一つ聞くというのはどうでしょうか?」

「…」

まさかのこんなことになるなんて。

気は進まないけど女性に挑まれた勝負から逃げるなんて論外だ。

「良いでしょう。受けて立ちます」

「よろしい。男のそういう所、嫌いじゃないですよ」

どうやら随分と舐められているらしい。

彼女がどれだけ学園で実力者であろうとこの勝負、常に戦場で戦ってきたものとして、何より男として負けられない。


読んでくださった皆様、ありがとうございます!

元々自分はよくラノベを読むので、他の作品に影響されてしまうかもしれないので気を付けながら書いてます。

しばらくはのんびり更新していこうと思っているのでよろしくお願いします!

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