40.夜陰に嗤う
錬金術師は寝台から身を起こした。
眠っていたわけではない。どうしたものか、何時の頃からか、夜は身体が睡眠を拒絶するようになっていた。
ただ昼間は不思議と眠たい。いや、夜明けとともに意識を喪うように眠り込み、日暮れとともに意識が戻る。
が、それが不都合であったことはない。夜しか起きておらずとも、気にする相手も勿論いないし、それを気に病んだ事も無い。
気になるのはただ一つ。大事なのはただ一つ。
灯り一つ無い部屋で寝台に腰を下ろしたまま、彼は今日のことを思い返す。久しぶりに迷い込んだ童子のことを思い出す。
白鼠のような子だ。やせっぽちの、けれど深い深い魔力を湛えた井戸のような子供。
身寄りも無い一人旅の最中で、北の都へ行くと言っていた。貧弱な身体と装備で、兵士になるのだという。
じんわりと、感情が高まっていく。
たった一人で、遥か遠く玄都まで。
勿論、主街道は決して危険な道ではない。街間馬車が走るくらいには整備され、巡視が回る地域もある。
危険ではない。
けれど、安全でもないのだ。
そんな道を、たった独りで。
彼は嗤った。
その眸に黄色く霞んだ光が浮かぶ。
その胸元に、もっと深い、もっと鈍い光が灯る。
朽ちていく夜の底、凝った闇の奥から。
浮かんでくる。
湧き上がってくる。
強い強い――欲望。
夜はまだ更けきらぬ。
ああ、寧ろ。
夜更けを越えて、夜明けを待って。もう一度日が暮れるまで、待ってもいい。
久方に、夜明けが待ち遠しい夜であった
起きてます、偽城主起きてますよ!
このヒトが動き出すまでにどこまで進んでいたか、気づかれなかったかがポイント。
用心深いパーティだと、部屋を探しに行って怪しまれたり、扉に閉錠魔法掛けて時間稼ぎしたり。
慣れた冒険者怖いわー




