スライム君、成り上がる。
"始まりの草原"
ボクはこの草原に暮らしている、スライムのスラ太だよ。今日も良い天気だね!!
いつものようにペッチンペッチン動いてたら、道行く勇者に剣で切られたよ。勇者は「やった、経験値――」やら「お金がすくないな――」やら言っているけど、ボクを突然切りつけた挙げ句、お金を盗るなんて酷いじゃないか!!
それに、キミに何か危害を与えたかい!? 与えてないでしょ!!
所詮、ボクは序盤の経験値狩りの餌食になるだけの存在なんだ……
……そんなの嫌だ!!
このままただペッチンペッチンするだけのスライムじゃいけないんだ。もっと強くなって勇者……あわよくば、魔王だって倒してみせるんだ!!
そう思ったらまずは、レベルを上げるしかない!! 装備よりも何よりもボクのレベルアップだ。
ボクは必殺"ペッチン体当たり"を持っている。というかそれしかない。ドンドン強くなって技を増やしていこう。
あ、さっきとは違う勇者が来た。よし、行くんだ、ボク!!
「勇者、ボクが相手だ!!」
「あ?」
勇者はボクにガンを飛ばして、剣をおもいっきり振るかざしてくる。
痛いよ!! スライムだからすぐに体くっつくけど、痛覚はあるんだよ?! ボクの目には勇者が悪者に見えてしまうよ……怖いよ怖いよ、勇者が。
この戦いは勇者が勝ったけど……次は負けないよ!!
よく考えたら……勇者と戦うにはボクのレベルが低いのかな? そうならば、ボクも冒険だ!! ボクに合った敵は……。
ゴブリン、違う。ドワーフ、違う。スケルトン、違う。
……あれ、ボクって最弱なんじゃない? 勝てそうなヤツがいないや。こうなれば、あり金つぎこんで装備でどうにかしよう。さっき言ったのは撤回!! 装備のチカラ借りないとどうしようもないや。
ここから五分位で"始まりの村"があって、そこに装備屋さんが有ったような気がする。昔遊び半分で行ったことあるくらいだから、そんなに覚えてないや。とりあえず行ってみよう。
「いらっしゃい!! あれ……君、スライムだよね。何しに来たんだい?」
「ボクの装備が欲しくて……」
「ふははは!! 最弱のキミに装備かい? 笑わせないでよ」
お店の人はまともにとりあってくれない。
「ボク、強くなって勇者、魔王を倒すんだ!!」
「ふははは!! おかしくて笑いが止まらないよっ。ふははは!!」
「ボク、ホンキなんだよ!?」
ボクは、ねばって笑い転げるお店の人を説得してようやく。
「わかったわかったっ。お前さんに合いそうなのこれくらいしかないよ」
ボクにヘルメット装備、なぜかフルフェイスのサビ臭いものをボクにかぶせた。これしかないし、これ以上何も装備できない。
鏡で見てみると、打ち首された頭が、ひとりでに動いているようにしか見えない。それと、ガシャガシャうるさい。
お店の人はまた、笑い転げる。
「ふひひひっ!! それにするかい?」
「これしかないし、装備屋はこの村にここしかないでしょ? だったらこれで妥協するよ。どうせ、先々の装備屋さんでなにかしら手に入るだろうし」
ボクはあり金全てはたいて、この装備を買った。
ガシャガシャしながら元いた草原に戻って、敵と戦ってみよう。
ゴブリン、笑い死ぬ。ドワーフ、笑い死ぬ。スケルトン、笑い死ぬ。経験値が手に入らないよ!! そんなことあるのかい?!
というか……笑い転げるんじゃなくて、笑い死ぬってどういうことっ!!
……経験値が手に入らないよ。どうすればいいんだろう。
「ヒッヒッヒ……そこのスライム、チカラが欲しいのかい?」
「え、誰ですか?」
「ワタシは通りすがりの魔法使いのババアじゃぁよ。面白いウワサを聞いて、ここに来てみたら……ヒッヒヒ」
「ボクをからかいに来たの?」
「いいや。お主にいいものをやろうと思ってのぉぉお。ホレ」
ボクに怪しげな色の液体が入ったビンを差し出す。
「これは?」
「ヒヒッ!! 飲んでみるんじゃぁな」
言われるまま飲もうとしたけど、お面が邪魔して飲めない。脱ぎたいけどなかなか脱げない。
「ヒッヒッヒ!! ブぁぁぁ!!」
ババアが笑い死んだ。みんなしてボクをバカにして許せないよっ!!
ようやく脱いで、これを飲んでみる。苦い、苦い、辛いという割合の飲み物。ハッキリわかりやすく言うと、まずい。
飲み終わって、ふと瓶のそこを見てみると。
”ジョーク品。パーティの罰ゲームにどうぞ”
ボクはビンをババアに投げつけた。やっぱりバカにしに来たんじゃないか!!
……もういいや、地道に頑張るしかないか。
この場から移動しようとした時、ババアの袖からお金が出ているのを見た。
そういや、笑い死んでもお金は残るんだよね。だったら、お金を集めて財力で勝つしかないよね。
そう思ったら、まずここで資金を集めまくろう。
ボクは装備を身に付け、ペッチンペッチンガシャガシャしながら勇者や敵を次々笑い殺す。一週間もすると、旅をするには十分な資金が集まった。
「ふはは……」
始まりの村の住人が全て笑い死んだ、最後は装備屋の人だった。なぜ、あの時死ななかったのか不思議だけど、そんなこと今ではどうでもいいや。
次の村に行くと、ウワサが広まったのか誰ひとり外出をしていなかった。
ここでボクは容赦なく、家という家や店という店を自ら訪問、来店する。
怯えている人もボクを見て笑いだす。そして死ぬ。
この村もあっという間に滅んでいく。
呆気なく次々村を滅ぼし、流石に申し訳なくなったので。次の手を考える。
こんなに沢山の資金があるんだから、何かをしてみよう。そこで思い浮かんだのが、自分の会社を作ること。事業内容は勇者、魔王等々……とりあえず敵を蹴散らす兵器を作ること。
まず人を集めないといけない。このままだと笑い死んでしまうから、ヘルメットを外して活動することにする。意外に人が来たから、正直驚いている。
その人達、社員は一生懸命兵器を作りそれを売っていく。売上は上々で、半年もすればどの村にも負けない程の武器屋さんになったよ。
巨万の富をを手に入れたボクには、かわいい女の子がベタベタくっつくようになった。誰にも見向きされなかったのに……お金のチカラはすごいや。
それと、沢山の社員を持って運営出来ているなんて……すごいことになったなぁ。
お金と権力を手に入れたボクは再び始まりの草原に向かう。我が社の武器で勇者や敵をボコボコにする。大量の経験値がボクの元に来て、ボクは手っ取り早くレベルが上がっていく。
もう体が限界な程にレベルが上がっても、見た目が変わる訳じゃない。だけど、ボクが"ペッチン体当たり"をしたら敵が倒れてくれる。
これなら……魔王さえ倒せるかな、武器もあるし。ボクと社員とガールフレンドを連れて、魔王の城に向かう。
大量の来客に魔王は。
「な……なんなんだお前ら、ピクニックにでも来たのか?!」
人数の多さに驚いている。
「やい、魔王。ボクが相手だ!!」
「は、スライムのお前がか? ふははは……っは」
魔王は笑い死んだ。
魔王だけならず、周りの人達全員笑い死んだ。
そんな終わり方ある?!
魔王を倒したボクはこの世界の魔王として君臨し、勇者どもを笑い殺す。
今のボクは誰にも負けない。




