エルフの村2
入口にある階段を上って、木の扉をノックするルシェの後ろ姿を見てから、キョロキョロと付近を見渡してみる。
やっぱりここが異世界という実感があまり沸いてこない。
確かにルシェは今まで見た事ないくらいに可愛いし、耳も尖ってはいる。
でも違いってそれくらい・・・
ガチャ
「おや、ルシェルかい。どうかしたのかね?」
そう言って出てきたのは、テレビで見た事のある、アフリカの異民族が着けているようなお面をかぶり、上半身は裸で下半身は腰ミノ姿の、どう見ても怪しい人物だった。
「森で、異世界から来たっていう人がいて。この人よ」
ルシェの紹介を受けて日詩は挨拶をする。
「どうも。日詩です」
ペコリと、お辞儀をしておく。
続けてルシェがこの怪しい人物を紹介してくれる。
「こちらがこの村の長老。村一番の魔法の使い手なの」
「これ、その話はよさんかい」
「ごめんなさーい」
隠す必要でもあるのか?と、日詩は思ったが、考えても仕方がない。
お面をかぶった長老とやらは、ひとつコホンと咳をすると、ルシェにこう告げる。
「今、評議会の者たちと、これからの事について考えておったとこなんじゃ。そうだ、お前さんたちも参加するといい。人数は多い方がたくさんの意見が聴けるからの」
そう言われて、ルシェと日詩は建物の中に通された。
中には四名、中年や高齢に見えるエルフたちがいて、円卓を囲んで何やら話し込んでいる。
「メッチェじゃ!そこはメッチェに決まっておろう!」
「何を言い出すかと思ったらメッチェだと?腰つきで言えば誰が見たってロレーヌだろうが!おっぱいだけが取り柄のメッチェとはレベルが違うんだよ!」
「分かってねえなあ。今の流行りはクラリン一択だ。お前らには貧相萌えの良さが理解できていない。ツルペタが至高よ」
『ロリコンは黙ってろ!』
「俺はジーナがいいと思う。あの色気はそんじょそこらの女には真似出来ねえ」
「もう、埒があかん。そうだ!長老に決めてもらおう!」
「ああ、それがいい。長老は誰がいいと思います?」
みんなの視線を受けて、長老はわなわなと手を震わせると、こう断言した。
「クラリンちゃんじゃ!」
『ハァ~・・・』
ガッツポーズを見せている中年の男一人を除いて、他の男たちからは一斉にため息が漏れた。
「何の会議なんだ?」
あまりのバカバカしさに日詩は呆れ、座った目を向けて男たちに問う。
「すまねえ、いつの間にか話が脱線していたようだ」
ロレーヌがどうのこうの言っていた男が、申し訳なさそうに言ってくる。
「おじいちゃん、何の会議をしていたの?」
ルシェが長老に向かって言う。
日詩は疑問に思ってルシェに問いかけた。
「おじいちゃん?」
「うん。長老は私のおじいちゃんなの」
村一番の魔法使いの孫娘が、落ちこぼれなのか。
そう思うと、日詩は涙を流してルシェに同情した。
「不憫な子・・・」
ルシェの肩をポンと叩き、もう一方の手で涙を拭う。
「ちょっと、なんなのよ」
こちらの気持ちはルシェには伝わっていないようだった。
「この方はどちら様で?見たところ耳が・・・」
ジーナ推しの男が言いながら、不思議そうにこちらを見ていた。
「これこれ、いっぺんに話すでない。会議は水不足についてじゃ。噴水の水が枯れてしまった原因を、すぐにでも突き止めて、手を打たねばならん」
そんな大事な話をしている途中に、女の話に脱線するなんて・・・大丈夫かよここの評議会とやらは。
「そして、この若者は異世界から来たという。えーと、なんか話づらいわい」
そう言って、かぶっていたお面を無造作に横に投げ捨てた。
出てきた顔は、思ったよりは若く見えた。
少なくとも評議会の連中の、一番高齢な感じのする男よりは遥かにそう見える。
「なんでかぶってたの?」
ルシェが問いかけるも、それを無視して長老が続ける。
「日詩と言ったかの。お前さんはどうしてこちらの世界に来たんじゃ?」
日詩はルシェに説明した時と同じ説明を、ここにいるエルフたちに話した。
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