エルフの少女2
「オークの子供ね。焼くと美味しく食べられるわ。十川日詩、アレ捕まえてくれるの?」
イノシシじゃなくてオークだったかぁ。なるほど、そう言われてみれば手足の形が違う。
なんか、こっちに来る前にも突進されていたような気がするなぁ。
とりあえず、横にかわすと、思った通りにオークはそこを通り過ぎた。
急ブレーキを掛けて止まると、またこちらを向いて突進してくる。
捕まえたいのは山々だが、いかんせんこちらは丸腰である。
「うーん、基本的にはどう捕まえてるの?」
「罠ね。それか魔法を使うか。あなた魔法は?」
ひょっとして、こちらの世界でなら魔法が使えたりするんじゃないか?
「よーし、いくぜ。ファイアーボール!」
天を指さし、叫びとともにオークに突き付ける。すると、指先に小さな火が灯った。
「おお!やった!出来た!ぐえっ」
喜びも束の間、オークの突進をモロにくらい、後方にすっ飛ばされると、先ほどの穴に尻から落っこちた。
「はあ!?つっかえないわねー」
そうしている間にもオークは反転し、今度は少女に向かって突撃をかましてくる。
が、少女がそれをかわすと、オークは木の幹にぶら下がったエサを、ジャンプして器用に口に咥えると、そのまま走り去って行った。
「逃げられちゃった・・・」
少女はガクッと肩を落とし、落胆していた。
「ええと・・・悪いけどまた出してくれる?」
日詩がそう言うと、少女は据わった目だけをよこして、チラとこちらを見た。
そして日詩に向かってぼやきながら歩いてくる。
「十川日詩、あんたきちんと役に立つんで」
ズサアッ
そんな音だけを残して、少女の姿が突然消える。
彼女も落とし穴に落ちたようだった。
「二年間無駄にしている理由が分かった気がする」
自力で這い上がった少女に助けられておきながら、日詩はしみじみと呟いた。
「ちょっと多めに掘った穴が仇になるなんてね・・・それより、十川日詩、あんたきちんと役に立つんでしょうね?」
「あ、それを言いかけたんだな」
指摘してやると、手を腰に当てて「うるさいわね!」と、怒鳴った。
「んっと、俺の名前、わざわざフルネームで言わなくてもいいから、日詩って呼んでくれるか?」
適当な岩に腰を下ろし、日詩は彼女に向かって話す。
「十川日詩じゃないの?日詩なの?」
それに倣い、彼女も適当な岩に腰を掛けた。
「まあどっちも正解なんだけど。省略して、日詩ってだけでいいよ」
「分かったわ」
「ところで、君の名前は?」
「私はルシェル。省略して・・・シェルでもいいわよ」
そう言われると、どこかで見たような貝殻のマークを想起してしまった。
「いや、ルシェって呼んでいいかな?」
「どうぞ。ところで日詩は、どうしてこんな事してるの?」
「こっちに来る前の自分の世界でさ、死にかけてるところを、なんかよく分からない声に助けられたんだ。その代わりに、救って欲しい女の子がいるから救ってくれって」
「へえ~、世界をまたぐ魔法なんて、相当な使い手なんでしょうね」
「テレパシーだかってので聞いただけだからなあ。本体はなかったから、どんな姿をしているのやら」
「そっか。これから行く当てはあるの?」
「ない。良かったらルシェの村に連れてってもらえるかな?」
この森で一人、当てもなく彷徨っていても野たれ死ぬだけだ。
「しょうがないわね、付いてきなさい」
それほど嫌そうな素振りを見せず、あっけらかんとルシェは言った。
ルシェは立ち上がると、手を差し出して起こしてくれた。
そして日詩を先導し、前を歩いていく。
案外いい子なのかもな、なんて日詩が思っていたその矢先、目の前の彼女の姿が消えた。
ルシェはまた自分の掘った落とし穴に落っこちていた。
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