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片翼の天使

 「今はルシェが思い出してくれる事を期待して待つ事にするよ。ホント、ありがとうなクラリン」


 クラリンはニッコリとほほ笑んでくれた。

 そうだよ、命が助かったうえに目まで覚ましてくれたんだ。

 これ以上を望むのは、今は贅沢ってもんだろうがよ。

 これまでも何とかなったんだし、きっとこれからも上手く


 (そんな時間はないよ)


 「え?」


 この声は・・・ユッグドラジルの雫を手に入れるのを助けてくれて以来、また聞こえなくなった声。

 俺をこの世界に連れてきた張本人。


 「どうかしたんですか?日詩さん」


 「声が聞こえる」


 「声って、日詩さんが言っていたあの?」


 (ここでの務めは今はもう十分。次の世界に行こうか)


 「は?ちょっと待ってくれ!まだ俺はこの世界でやり残してる事が」


 (じゃあ少しだけ待ってあげる。別れの挨拶くらいはしておきたいもんね)


 あ・・・見える・・・半透明ではあるが、声の主の姿が見える。

 俺の目の前、片方にだけある翼をはためかせ、頭上からゆっくりと降りてくる人の形をしたそれが・・・


 (フウ、ようやくここまで魔力が戻った。あなたたちのおかげね)


 「日詩さん!?どこかに行っちゃうんですか!?」


 ガバッとクラリンが抱き着いてきた。


 (んー、その子にも聞こえた方がいいか)


 「え・・・?これが、この声が日詩さんの聞いている・・・?」


 テレパシーの範囲をクラリンにも聞こえるようにしたのか。

 ビックリした顔をこちらに向けているクラリンの目元には、涙が光って見えた。


 「ああ、俺をこの世界に連れてきた声の主さ。クラリン、見えるか?」


 クラリンを引き寄せると、両手でクラリンの腰を持ち、俺の見ている方に体の向きを変えてやる。


 「この方が・・・」


 (あなたたちには世話になったし、特別ね)


 それは右片方だけに翼を持つ人間。

 身長はクラリンと同じくらい、目鼻立ちが整っていて、ヨーロッパ辺りに住んでいそうな女の子に見える。

 その表情は自信に満ちた顔をしており、テレパシーで聞こえてくる声にも自信が感じられる。


 「天使」


 「え?天使?」


 クラリンは知っているのか、この者が天使だという事が。


 (そう、私は天使。名はシャーディ。理由わけあって翼を半分無くしてて。あなたたちが集めてくれた二つのオーブによって、ここまで魔力を戻す事が出来たわ。テレパシーも自由に使えるようになったし、名前も思い出す事が出来た。ありがとう!)


 魔力が切れかかっていて名前を忘れていたのか。

 オーブにはすごい魔力が秘められているとは思ってたけど、そこまでの力があったとは。

 

 (この世界に住むエルフの娘、ルシェルはキーとなる人物よ。それを、あなたたちは見事に救ってくれましたー!ワーパチパチ)


 シャーディという名のこの天使、おどけた様子で手などを叩いてはいるが顔は真剣だ。


 (ルシェルは本当は命を落とすところだったんだ。後々彼女にはこの世界で必要とされる役割があるの)


 「そっか。それは良かった・・・けど、どうしてもすぐに他の世界に行かなくちゃダメか?」


 クラリンがこちらを向いてすがるように腕の中に納まる。

 離れたくないんだな・・・。


 (そうだねえ、今すぐってわけではないけど、そろそろ次の世界に行かないとフラグが立たないのよ)


 「へ?」


 (次の世界、ワーキャットの世界なんだけどね、そこでのキーとなる女の子を助けるためのフラグが、あと数時間で立たなくなってしまうって事)


 「マジか・・・」


 それは当然、このシャーディにとっては都合の悪い事なのだろう。

 ん?そうだ。


 「俺の世界が滅びるってのは、それにも関係がある事なのか?」


 (もちろんよ。じゃないとこんな回りくどい事するもんですか)


 さいですか。


 (本当は私が何とか出来ればいいんだけど、ほら、翼が片方しかないでしょう?)


 「うん」


 (左の翼が元に戻るまでは、私の力はテレパシーで相手と話す事と、転移させる力しか使えなくて)


 「なるほど・・・じゃあみんなとはここでお別れなのか・・・」


 「そんなのは嫌です!」


 「クラリン?」


 腕の中にいたクラリンが、俺を強く抱きしめる。


 「私は日詩さんと離れたくなんてありません!どうしても行くというのなら、私も一緒にお願いします!」


 「え・・・そんな事出来るわけが」


 (いいわよ)


 ザ・ワールド!




 ・・・・・・・・・・・・そして時は動き出す。


 「そうなの?」


 「ホントですか!?」


 (ただし、二人までにしてよね。それ以上はまた魔力が枯渇しちゃうから。それと、キーとなる人物は連れて行けないわよ。この世界に必要だからね)

片翼の天使は次で最終回です

続きは名前を変えて投稿する予定ですが、次からはもっと面白く出来るようにするため、更新は不定期になるかもしれません

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