表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/49

噂の出どころ

 「村に戻ってパロルを探しましょ!このまま放っておくわけにはいかないわ!」


 どのみち村には戻る予定だが、俺たちは急ぐ事にした。

 まさかそこまで恨まれていたとは思わなかった。

 ただのふざけた奴としか思ってなかったが、全力で殺害目標にされるまでだったとは。

 そっちは捨てておけないが、まずは何よりもルシェを元に戻す事が出来るかどうかだ。


 よし、やっと村に着いた!

 速足で噴水の前まで来ると、そこで目に留まったのは・・・ミュールさん?


 「でね、日詩君ってば私の事ルシェルだと思って告白してきてね、キスまでしそうになったの!」


 「まあまあ、フフフフ」


 「あらあ、面白い事になってるじゃない」


 遠目からなので何を言っているのかまでは分からない。

 ただミュールさんを中心に、奥さん連中と思われる人達が集まっており、にこやかに談笑している。

 これが井戸端会議というやつか。


 「次の日にはね・・・コショコショ」


 「いやーん、進んでるわね~」


 「えー、ちょっとお、そこまでしてるの?うらやましいわぁ。うちのとこなんて最近は・・・」


 俺は無事オーブを手に入れて戻ってきた事を報告しようと、その輪に近づいていくと


 「あら!あなたは!」


 「まあまあ、あなたが日詩君ね」


 「この子がルシェルちゃんと・・・」


 え?何だ?

 この奥様たちの反応はおかしくねえ?

 俺がキョトンとしていると


 「大方おおかた君の噂話でもしていたんだろう。僕もミュールさんから君がルシェルが好きな事と、おっぱい好きだという事を教えてもらったからね」


 「あ、私もよ」


 「え・・・」


 パッセが説明してくれ、ルメーリアはウンウンと頷いた。

 恐る恐るクラリンを見ると目を伏せ、やや顔を赤くして「はい・・・」と言った。


 「はあああああああああ!?」


 俺の情報がダダ漏れだったのはミュールさんのせいだったのか!

 ウワアアアアア


 「ちょっとお!ミュールさん!あんたって人は!」


 ミュールさんに詰め寄ろうとしたところ


 「まあお帰りなさい!帰りがけにどう?おっぱい」


 揉んでもいいって事か!?

 いやいやそれどころじゃない、俺今ちょっと嬉しかったのか?


 「そうじゃなくて!何を勝手に広めちゃってくれてるんですか!」


 「私のも揉む?」


 「日詩君、これからうちに来ない・・・?掃除したばかりだから寝室はキレイよ」


 「えー!?冗談ですよね?勘弁して下さい!あ、手を引っ張らないでー、寝室には行きませんって!」


 恐らく冗談で言っているんだと思うけど、最後の人!この人だけは本気だろ!?


 「助けてー!」


 


 「まあ!それでルシェルを治せるかもしれないのね!早くうちに行きましょう!」


 何とか話を聞いてもらうと、俺たちはルシェの元へと足を運ぶ。

 ひどい目にあった・・・引っ張られた手を見るとあざになっていた。

 あの奥さんにだけは一人で出会わないように気を付けなくては・・・


 家に着くと急いで二階にあるルシェの部屋へ。

 皆でドタバタと階段を駆け上がり、扉を開けると眠り姫がスゥスゥと寝息を立てていた。


 「お待たせ!」


 「よし、これで目を覚ますといいけど」


 「信じましょう!絶対目を覚ますわ!」


 「フフ、日詩君の愛が伝わってるもの、きっと大丈夫よ」


 俺の言葉に続いてパッセ、ルメーリア、ミュールさん。


 「では早速」


 そう言ってクラリンは水のオーブを、眠っているルシェの手に持たせて


 「回復魔法の得意なパッセさん、お願いします」


 「分かった」


 パッセは精神統一をしたかと思うと、水のオーブが眩しいほど青い光を放つ。

 五秒ほどでそれは収まり、再び淡い光に戻るオーブ。

 果たしてルシェは・・・

 皆で緊張しながらルシェの顔を覗き込む。

 

 「失敗・・・か?」


 「どうでしょうか」


 「うーん」


 「お寝坊さんねぇ」


 口々に難色を示しているが俺は諦めない!


 「まだだ!まだ終わらんよ!」


 「日詩君のキスで起きるんじゃないかしら?」


 「え?」


 ミュールさん・・・それはちょっとは考えもしたけども。


 「みんなが見ている前ではちょっと・・・」 


 俺がそう言った瞬間、ルシェルの目元がピクッと動いた。


 「ん?」と誰かが言い「今!」と俺はルシェの目覚めを確信する。


 ルシェの手にあるオーブをクラリンに渡し、オーブのあった手を握ると、ゆっくりと目が開いた。

 大成功だ!


 『やったー!』


 皆で大喜び!


 「あれ?私・・・確かウサギに・・・」


 ルシェがキョロキョロと辺りを見回して言う。


 「私ったらいつの間に帰って・・・?みんなどうしたの?」


 「良かった・・・」


 ルシェの手を握っている手にも力がこもる。

 アレ、自然と涙が・・・。


 「姉様!」


 ガバッとクラリンがルシェの寝ているベッドにダイブし


 「姉様はボーパルバニーに首を切られて死にかけてたんです!私と日詩さんは倒れてた姉様を見つけて、私が応急処置をしている間に、日詩さんにユッグドラジルの雫を取ってきてもらって姉様に飲ませました。傷口は塞がったんですが、姉様はずっと目覚めなくて・・・」


 と、泣きながらルシェにすがりつきながら経緯を話す。


 「おはよう、ルシェル」と、優しくミュールさん。


 「全く、寝坊助なんだから」


 ルメーリアはやれやれと。


 「目が覚めて良かったよ」


 パッセは素直な感想だろう。


 「そうだったんだ。ごめんなさい、心配かけちゃって」


 皆笑顔でルシェを見つめ、温かい空気に包まれた。


 「ホントに・・・もうどれだけ心配した事か」


 ああもう、涙が止まらないぜ。

 ん?ルシェがキョトンと俺を見てる。


 「あなたはどちら様?」


 「へ?」


 ザワ・・・胸がチクリとした。


 「それにクラリンの言う日詩って誰の事?私の知らない人よね?」


 そう話すルシェの表情は真顔で、冗談を言っているようには聞こえなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ