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海蛇

 底から浮き上がり、水中を漂っていても、揺れによる震動が伝わってくる。

 とてつもなく大きな揺れ。

 ヤバイなこれ。


 壁は横にスライドしたかと思うと少しずつ浮上していき、ついにその先端が現れる。

 あまりにも大きいから、それが何なのか予想出来ていないと分からなかったと思う。

 うん、奴だ、間違いなくリヴァイアサンだ。


 「やっぱ出てきちまったじゃねえか」


 三人でパッセにジト目を向ける。


 「罰はこの状況を乗り切れた時に甘んじて受けるよ・・・」


 「もう気付かれてるでしょうけど、離れましょ」


 ルメーリアの言葉に皆で頷き、そっとその場を離れていく。

 しかし次の瞬間


 「無駄だ」


 と、重低音のサウンドが辺りを支配した。

 俺たちはヒィ!とすくみ上る。

 ああ・・・ここで食われて終わるんだろうか。


 「ごめんなさい!」


 突然クラリンが前に出て、頭を下げて謝罪する。


 「私のひいひいお爺ちゃんのした事をどうか許してください!お願いします!」


 おお・・・なんて勇気があるんだ。

 リヴァイアサンを見ると、とにかくでかい。

 顔は横だけでも十メートルはありそうに見え、その巨体は恐らく地球でのどの建物よりも大きいに違いない。

 長さに至っては計測不能だろう。


 「マドックの子孫か」と、リヴァイアサン。


 「はい!」


 クラリンが怯むことなく勢いよく答えた。

 マドックってのがふざけた迷惑爺さんの名前なのか、どうでもいいけど。

 しかもクラリンは正確には子孫ではなく、そういう設定だというのにその姿勢には感動すら覚える。

 

 「どうか過去の事は水に流していただけないでしょうか?リヴァイア様!」


 ん?リヴァイア様?


 「勝手に略すな」と、リヴァイアサンが答える。

 

 「え?だってリヴァイアって名前なんじゃ・・・」


 クラリンが首をかしげて言う。


 「あ、リヴァイアさんだと思ってたのか」


 「なるほど!そういう事か」と、パッセがポンと手を叩いて納得した表情をしている。


 「やだもう!クラリンってば天然さん」


 ルメーリアがクラリンの横に移動して、頭をコツンと小突いた。


 『ハハハハハ』と、アメリカンコメディのように、顔を突き合わせて大笑いする。


 「じゃ、そういう事で」


 俺は片手をスチャっとリヴァイアサンに向けると、申し合わせていたかのように、みんなでそそくさとその場を後にしようとする。


 「待たんかい」


 デスヨネー。

 この手は通じなかったか。


 「お前たち、私が軽く息を吸い込んだだけで終わりだという事を分かっているのか?」


 怖ええ!

 だが、これは言わずにはいられない!


 「きさま、一体何人の生命を、その腹を満たすために吸い込んだ!?」


 「ちょっと!あんた何言ってるのよ!」


 「そんな口聞いたら怒っちゃうよね!?バカなの?死ぬの?」


 「うう・・・せっかく勇気を出して謝ったのに・・・」


 みんなが散々に俺を責め立てる。

 さあ、リヴァイアサンはどう答える!


 「え?・・・今思い出すからちょっと待っていろ」

 

 マジかよ・・・。

 全員が拍子抜けしていた。




 「思い出せない」


 そりゃそうだろ。

 リヴァイアサンはしばらくうんうん唸りながら、ああでもないこうでもないと考えていた。

 

 「まあいい。ところで、お前たちは私がいる事を知っていたのにも関わらず、どうしてここに来た?」


 いいのかよ。


 「友達を助けるために水のオーブが必要なんだ。そこを通してくれないか?」と、俺は簡潔に説明した。


 「友達ぃ~?好きな子の間違いでしょう?」と、すかさずルメーリアが意地悪そうに指をこちらに突き付けて言うと、続いて


 「日詩がルシェルにゾッコンなのは誰もが知っている事だからね、今更だけど。誤魔化すなんて男らしくないなあ」


 パッセにもそう言われ


 「姉様が相手では仕方ありませんよね・・・」と、クラリンはなんだか寂しそうにしていた。


 「えと・・・ごめんなさい。好きな子です・・・」


 なんつうはずかしめを・・・


 「いいだろう」と、リヴァイアサン。


 「え?いいの?」


 やったーとみんなで喜び合う。


 「ただし」


 うわあ、なんか条件ふっかけてくるパターンか。


 「通りたければ私をどかしてくれ。動けなくなっちゃって」


 『えーーーーーーー!』

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