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だから言ってるじゃん

 「まったく、何まぎらわしい事してんのよ、バカね」


 解毒の魔法をクラリンに使いつつ、冷めた目でこちらを見ながらルメーリアが嘆息して言う。


 「えぇ、それは理不尽ってもんじゃ・・・」


 手遅れになったらマズいと思ってやっただけなのに。

 やましい気持ちなんて


 「ハァハァ、助かりました・・・ありがとうございます、日詩さん、ルメーリアさん」


 青かった顔が今度はほんのり赤くなっていて・・・なんてなまめかしい表情を・・・ゴクリ・・・やましい気持ちなんて・・・ないとは言えないかも。


 「応急処置だったとはいえ、恥ずかしい思いをさせてゴメン」


 「いえ・・・」


 涙を浮かべながら真っ赤になってうつむくクラリン。


 「顔色はよくなったみたいね」


 必要以上にね。

 ルメーリアが俺とクラリンを見てクスクスと笑いながら


 「パッセはどうしたのかしら?」


 「お、アレがそうなんじゃないか?」


 突然水面から高く打ち上げられた人影が現れ


 「た、助けてくれー!」


 パッセだった。

 オットセイのような動物数匹に、ビーチバレーのように次から次へと鼻でトスされている。


 「あいつ、お笑い担当だよな」と、言うとルメーリアが


 「あなたはラッキースケベ担当だけどね」


 「違うわ!お前はツッコミ担当か」


 「私は何の担当なんでしょうか・・・」


 クラリンが多少疲れた顔を見せながら呟いている。

 お色気担当?

 サキュバスだしな。

 口に出しては言えないけど。




 「さて、困りましたね」と、クラリン。


 パッセを救出し落ち着くと、当面の問題について考える。


 「うーん、あのゲイザーっぽい魔物をどうするかって事だね」と、座ってあざだらけになった体をさすりながらパッセ。

 するとルメーリアはやれやれといった感じで


 「水の中では魔法も使えないしね。有効な手段が思いつかないわ」


 確かに。

 火球はもちろんの事使えないし、電撃系は感電するだろうから使うバカはいないだろう。

 

 「銛も、あんなに小さくて大量にいたんじゃどうしようもないだろうしなぁ」


 さすっていた手を膝でパンと打ち付けると


 「とりあえず、出会ったら逃げるって事にして、もう一度行ってみようか」と、パッセが言った。




 再び魔法で呼吸を確保すると、湖の中へ。

 しばらく潜っていった所で赤の一団と出くわす。


 「うお!やっぱりいた!逃げろ!」


 俺の声で逃げようと皆で反転するはずが、パッセだけは観察しているのかジッと見ていて


 「いや、待って。アレ見て」と、言い出した。


 逃げなくて大丈夫かよと、冷や冷やしつつ見てみると、横から先ほどいた巨大なエイのようなモンスターが赤い一帯を通り過ぎる。

 すると、広い範囲に見えていた赤色がほとんど見えなくなる。

 エイ(仮)がエサにしているようだ。


 「おー、食われとる。こいつのエサだったのか」


 「これで先に進めますね」と、ホッと一息ついてクラリン。


 「あとはリヴァイアサンが出て来ないのを祈るだけだね」


 パッセの野郎、忘れてたってのに


 「パッセ・・・学習しない奴だなお前」


 「え?何々?」


 ハァ、もうため息しか出ねーわ。

 見るとクラリンとルメーリアも同じようにため息をついていた。


 はてさて、結構潜ったけど今はどれくらいの深さなんだろう。

 周りがどんどん暗くなってきて、手を繋いでいるクラリンとルメーリアの顔すら見えない。


 「灯りをともしましょう」


 クラリンが火球によく似た球体を出すと、周りが照らされてよく見えるようになる。

 水中でも使えるなんて、汎用性の高い魔法だな。

 底の方を見るとゴツゴツとした岩や、砂浜が姿を現した。

 湖底にたどり着いたっぽい?


 「オーブの反応は?」


 「この先のようですね」


 繋いでいる手は離さずに湖底を歩いていく。

 いつモンスターに襲われるか分からないし、灯りのない所で見失ってしまうとジ・エンドだから。

 ん?手前になんか見慣れた感じのする生き物が・・・

 プ〇プ〇か!?


 「どうかしましたか?」


 「いや、あれ・・・俺の世界のゲームにいた生き物にすごい似てるんだけど、なぜ〇ク〇クが・・・」


 尋ねてきたクラリンに説明してやる。


 「可愛らしい生き物だね。襲っては来ないっぽいよ」


 パッセが通り過ぎ様に目をやっている。


 「ホントね。食べられるのかしら」


 ルメーリアは結構食い意地が張ってるのだろうか。


 「見た目は可愛いけど、触ると小っちゃくなるか死ぬかのどちらかだから。ま、当たらなければどうという事はない」


 さらに進んで行くと、どういう訳か行き止まりにぶち当たった。


 「あれは?」


 「壁かな?」


 「湖の底にどうして?」


 三人が首を捻っている。

 オーブはこの壁の先に反応しているようだ。

 壁の前まで来て上を見上げると、かなりの高さがあるようで、どこまで続いているのか分からない。

 横も同じように続いていた。

 俺はこの壁を注意深く見ると・・・


 「なあ、この壁の模様、何か気にならないか?」


 「どうかしたんですか?うーん、よく分かりませんが」


 ペタペタと壁に触りながらクラリン。


 「規則正しい模様ね。それに・・・横の方には何か、不自然な出っ張りが等間隔に並んでる?」


 ルメーリアの言う通り、形容しがたい模様なのだが、それが規則正しく描かれている。

 出っ張りについても意味があるに違いない。

 これにも見覚えがある。

 

 「んー、何か思い出せそうな・・・」


 「似たようなもの?また日詩の世界の物かい?」


 そう言ってパッセも注意深く観察している。

 

 模様だけを考えると床とか壁に近い感じを受ける。

 では出っ張りだけを考えると・・・この膨らみ方は・・・そう!


 「掃除機のホース!」


 「またよく分からない単語を。それって何なの?」


 ルメーリアの問いには耳を傾けず考える。

 掃除機のホースの模様は確か、蛇腹模様って言わなかったっけか。

 蛇腹って・・・ヘビの腹だよな?

 ん?って事はつまり・・・?


 「オワアアア!これ!ヤバイ!逃げろ!」


 ズウウウウン


 「キャー!」「なんだなんだ?」「何よこれ!動いたわよ!」


 俺の声が合図となって壁が動き出し、とてつもない揺れに襲われた。

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