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ここだよ、ここ

 「湖って言うから向こう岸が見えるもんだと思ってたよ。この規模の湖ってすごいな」


 見渡す限り水が広がっていて地平線が見える。

 地球では見たことがなかったので、感動していた。


 「おかしいですね、こんなに広いはずはないんですが」


 首をかしげるクラリン。


 「舐めてみれば分かるんじゃないかしら」


 ルメーリアが水をすくって口に含む。


 「うん、それほどしょっぱくはないから海ではないわね」


 「となると、ここがシェルメニー湖で間違いないみたいだね」


 と、パッセが遠くを見渡すような仕草を見せる。


 「普通に音立ててるけど、リヴァイアサンも見当たらないな」


 近づいただけで襲ってくると聞いていたが、とんだ拍子抜けだ。

 いなければそれに越したことはない。


 「とりあえずオーブを探しに行きましょうか」


 クラリンの持つ地のオーブに導かれて、俺たちは湖岸沿いを歩く。

 やがてクラリンは湖面に向かって立ち止まった。


 「どうやら湖の中にあるみたいですね」


 平然と説明するクラリン。


 「って事は」


 「入るしかないって訳ね」


 やる気に満ちた感じのルメーリア。


 「水の中は得意じゃないんだけど」


 やや怖じけずいてパッセ。

 皆でガサゴソと荷物を漁ると、(もり)を手にする。


 「こんなんでモンスターをどうにか出来るのかねぇ」と、パッセの尻をつつく。


 「ちょ、やめて。痛いからそれ」


 パッセは銛の範囲から逃げ出した。

 クラリンはそんな俺たちのやり取りを楽しそうに見ている。


 「狩りには十分な装備だし、危なくなったら逃げましょう。それじゃ行くわよ」


 と、ルメーリアは魔法をかけ、皆の水中での呼吸を可能にする。

 すごいな魔法。


 銛を背中にくくり付けて湖の中に入ると、皆で手を繋ぎ横一列になって進んで行く。

 そうやって近くにいないと、声がくぐもってよく聞こえない。

 さらに繋がっている事で、こちらを大きく見せる効果もあり、自分よりも小さい獲物を狙うモンスター除けにもなるらしい。


 地のオーブは深くなっていくにつれて、反応を大きくしている。

 周りには見たこともないモンスターが泳いでいて、その中でもエイに似たものはかなり巨大だった。

 お腹が減っている時は襲ってくるらしいので、素早くそいつから遠ざかる。


 「あれ?あの辺一帯だけ真っ暗です」


 そう言ってクラリンが指示した方向を見ると、確かにその辺だけ黒く塗りつぶしたみたいに真っ暗だ。

 

 「たぶんだけど、墨を吐くモンスターがいるんじゃないかしら」


 ルメーリアが解説した。

 確かにそれなら真っ暗に見えても不思議はない。


 「んじゃあっちの緑色に見える一帯は?」


 今度はパッセが示した方を見ると、緑色した物体が水中を漂っていた。


 「藻の塊じゃないかしら」と、ルメーリア。


 「んじゃ、あっちの赤の一帯は?」


 今度は俺が見つけた場所を指で示す。


 「あれは・・・何かしらね」


 ルメーリアでも分からないらしい。

 サンゴでもあるのかな。


 「いろんな色があってキレイですね」


 クラリンの言う通り、水中は色とりどりで目を楽しませてくれる。

 水族館に行くよりも断然こっちの方が見応えがあっていい。


 「あれ?赤いのが凄い勢いで近づいてきてないか?」


 パッセの指摘した通り、先ほど通り過ぎた赤い色の一帯が、気が付けばすぐ後ろに迫っていた。

 目を凝らして見ると・・・小さいモンスターの大群だ!


 「この赤いのはモンスターだ!よく見ると目があるぞ!」


 名前は何だか知らないが、イクラのような体つきと大きさで、目のような物があってこちらを見ている!

 そして、何本か触手のような物が伸びているのが確認出来た。


 「アウウッ!痛っ!」


 声の主はクラリン。

 見るとクラリンのお尻に赤いのがくっついていた。

 俺はすぐさまそれを払いのけ


 「このままじゃまずい!どうする?」と、叫ぶ。


 「一旦逃げましょう!」


 ルメーリアの指示で散開し逃げ出す。

 手を繋いでいては簡単に追いつかれてしまうため、バラバラになったのだ。

 

 全速力でその場を離脱。

 逃げきれているか、確認のため後ろを見ると・・・クラリンの動きが鈍く、今にも赤い大群に飲まれそうだ!

 クラリンを助けに戻り、手を引いてすぐに泳ぐ。

 表情を確かめたかったがそんな余裕はないため、ひたすら湖岸を目指した。


 何とか岸にたどり着き、クラリンを引き上げると


 「クラリン!おい、大丈夫か!?」


 真っ青な顔だ。

 コイツはまずい。

 毒だったとしたら・・・吸い出さないと!


 俺は先ほど赤いのがクラリンのお尻にくっついていたのを思い出し、そこを見るとやはりプツッと刺された跡があった。

 よりにもよってここか・・・と思いつつも


 「クラリンごめん!」と言って、クラリンのちっちゃなお尻を掴んで、刺された場所にかぶりつくようにして吸い出す。


 「ハアウッ!」


 クラリンは悲鳴とも嬌声ともつかない声を上げ、一瞬海老反りに。

 何か変な気分になりそう。


 ああもう、早くパッセかルメーリアが来てくれないかな。 

 そう思った瞬間、離れた所でザバアッと誰かが水の中から上がった音がする。

 助かった、あとは解毒してもらえれば。


 「アッアッ、もっと・・・アッ、優しくして・・・下さい」


 エロい。

 が、そんな事を言っている場合ではない。


 「我慢してくれよ。俺だって、チューチューッ、優しくしてやりたいけど、チューチューッ、もっと吸わないと、チューチューッ」


 「あ・ん・た・は・・・何してんのよー!」


 「グハアッ!」


 ルメーリアの飛び蹴りが炸裂したようで、俺は横に派手に吹っ飛ぶ。


 「あ、あ、あんた、クラリンに何を・・・」


 「待て待て!毒!刺されてたから毒だと思って吸ってたの!」


 首が変な角度に曲がったせいか、世界が傾いて見えた。

見ていただいている方々に感謝の念を込めて、面白く出来るように頑張ります!

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