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あいつは一体なんだった?

 「キャッ」

 「アババババ」


 転んで尻もちをついてしまったが、すぐさま這いずってクラリンの側に行くと、クラリンに覆いかぶさるようにして頭上をかばう。

 天井が崩れ落ちてこないように祈り、この態勢を取ったが、落盤してしまったのならそれも意味はないように思えた。 

 だが幸いな事に揺れはすぐに収まり、天井も崩れては来なかった。

 揺れに気を取られていたが、ガラガラと音がした背後を見ると、壁の苔が一斉に下に落ちて光り輝く扉のような物が見えた。

 クラリンから体を退けるとすぐに謝る。

 

 「ごめん、なんか押せそうだったから押したらこんな事に」


 「いえ、それでも私を庇ってくれました。ありがとうございます、日詩さん」


 顔が近い。

 ああ、さっきキスした唇が目の前に・・・って何を考えてるんだ俺は。


 「それに、押して良かったのかもしれませんよ」


 そう言って二人して先ほどから光を放っている扉のような物に目を向ける。

 壁の苔が落ちたように見えていたのは、そこの壁が崩れ落ちたからだと、近づいてみてそれが分かった。

 扉のように見えた物には取っ手が無く、ノブが付いているわけでもなかった。

 

 「なんだろうこれ?」


 「私が触ってみます」


 クラリンが手を伸ばしてそれに触ると、音もなく姿を消して、中身があらわになる。


 「光っていたのはコレか」


 目の前に現れたのは玉のように丸い球体で、大きさはソフトボールくらい、その中心から黄色い光が放出されており、一メートルくらいの高さの大理石を思わせる、台座のような物に鎮座していた。

 暗い所にいたせいで、その玉を見るとかなり眩しく、直視できないほどの輝き。

 俺はピンときたね。


 「隠し扉のスイッチだったのか、さっき俺が押したのは。で、現れたのはなんか重要そうなアイテム。つまり、こいつを手に取ると」


 「ちょっと、ダメですよ迂闊うかつに触ってしまっては」


 クラリンの制止を促す言葉を聞いたから、というわけではなく、最初からそうするつもりだったのだが、光っている玉を手に取ると見せかけて後ろを振り向く。


 「あ」


 そう呟いたのはそこにいた、小振りの金棒を持った鬼のような顔を持つモンスター。

 背丈は二メートルはありそうなビッグサイズ、横幅も一メートルくらいはありそう。

 こちらが振り向く事など微塵も思っていなかったのだろう、口を半開きにさせ、かなり間抜けな顔でキョトンとしている。

 そいつを見たクラリンが「ヒャッ!オーガ」と声を上げた。 

 オーガと呼ばれたそいつは、やがて柔和な笑みを浮かべたかと思うと

 

 「いやだなあ、それを取る前に振り向くなんて。旦那さんも人が悪い!」


 と、和やかなムードを作り、にこやかに振る舞うので、それにつられて


 「ああ、ごめんごめん。ハハ、もう一回やり直そうか」


 「アハハハハ」


 笑いながらオーガは見えなくなる所まで下がって行く。


 「日詩さん、どうして驚かないですか?」


 「今のは向こうのミスだからね。よおし、今度は取るぞー」


 と、白々しく背後にいるオーガに聞こえるように言ってから振り向く!

 やるな、今度は引っかからなかったか。

 そして次こそ本当に掴んで取る。

 その瞬間


 「おや、これはこれは素敵なオーブをお持ちで。今ならなんと!この金棒と交換出来ちゃいます!どうです?お客様、とってもお得でしょう?」


 ・・・・・・・


 あれ?なんか思ってたのと違うぞ。

 クラリンを見るとアクビをしていた。


 「あれ?お気に召さない?でしたらこちら、今私が履いているステテコパンツもお付けして」


 「アホかーーーーーーーい!」


 突っ込みを入れるような感じでスパーンと頭をはたいて、オーブと呼ばれた玉を台座に戻す。

 全くなってない!コイツは説教してやらないといかん。


 「脱ごうとすんなよ、ったく、下手クソが。大体何なんだよ、今の三文芝居。最初は中々筋がいいなと思ったのにガッカリだよ。認めようとしてた俺の期待を返せよ。これはお前が考えたのか?」


 「はい、そうです」


 「あの場面では普通はこうだろ。ガハハハハ、お前の持ってるそのオーブを渡してもらおうか!」


 「おお!」


 身振り手振りで指導してやると、驚きの表情を見せ感嘆の声を漏らすオーガ。


 「さもなくばこの金棒に、お前たちの肉片がこびりついちまうぞ?」


 「うわぁ、なんて恐ろしいセリフ。あなた様はもしやプロの方ではないですか?」


 「まあな」


 胸を張って得意げに。

 オーガは惚れ惚れとした目でこちらを見ている。

 クラリンは意味が分からないという感じで、黙ってそのやり取りを見守っていた。

 

 その後、色々とお約束について教えてやったのだが、やはり筋が良くないのか、イマイチ芝居が板につかなかった。


 「残念だよ。お前ならその辺のモンスターより、上手くやれそうな外見をしているのに。その大根役者っぷりには絶望した!」


 「ガーン」


 オーガは擬音を口に出しよろよろと後ずさりすると、その場にドサッと崩れ落ちた。


 「次のオーディションにも出なくていい。国に帰るんだな、お前にも家族がいるだろう」


 「ウウ・・・」


 オーガは力なく立ち上がり、ノシノシと薄暗い洞穴の中に去って行く。

 その姿を見送ると、クラリンが


 「オーディションって何ですか?」と、聞いてきた。


 「審査会ってやつかな。この世界にはないだろうけど。とりあえず、オーガの言った事が本当なら、それはオーブと言うらしいね」


 光る玉を指差して持ち上げる。


 「どれくらいの価値があるか分かりませんが、明るいので持って行きましょうか」


 クラリンがそう言うので、ライト代わりにオーブを持って行く事にしました。

 いいんだよね?持ってっても。

一応毎回何かしら楽しめる話を書いていきたいと思っています。

出来なかったらごめんなさいです!

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