クラリン3
「そんな!クラリンは悪い事を・・・してないとは言えないのかもしれないけど、村の人に危害を加えてるわけじゃないんだろう?それにただルシェの側にいて恩返しがしたいってだけで、俺が黙っていれば済む話じゃないか。今の話を聞くとクラリンはいい子だよ。俺は誰にも言わないから。約束する」
クラリンに向かって告げると、こちらを見上げてクラリン。
「本当ですか?いいんですか?こんな私が、エルフでもない、本来ならエルフの敵であるはずのモンスターの私が、のうのうとあの村で暮らしていても」
俺は真剣な表情のクラリンに、なるべく優しい口調を心掛けた。
「別に構わないさ。というか俺に許可を取る必要なんてそもそもないだろう?俺だって異世界から来た居候なんだからさ。それに君は悪い事をしてるとは、少なくとも俺には思えない。だから俺は君の正体については、何も聞かなかった事にするよ」
クラリンは目に涙を一杯に貯めると、それを流しながら
「ありがとうございます、ありがとうございます・・・」と、しがみつかれて何度も何度もお礼を言うので、俺はしばらくの間クラリンの頭を撫でてなだめてあげた。
そう、本当に悪い子であれば、悪いモンスターであればそもそも恩返しなどしようと思うはずがない。
それに、正体がバレた時、俺を消してしまえばそれで良かったじゃないか。
なのにクラリンは自分のした事をきちんと受け止め、反省して日々を生きている。
そんな彼女を俺がどうこうするなんて、おこがましい事だ。
俺はまだクラリン以上の役には立っていないだろうし、もっと頑張らないといけないな。
「日詩さん」
「ん?クラリンどうかしたか?まだ眠ってなかったんだ?」
一度眠ってから色々とあったが、まだ夜は深かった。
「日詩さんも私の恩人です。サキュバスという種族は、相手に夢を見せる事が出来るんです」
「そうなんだ?それが恩人とどう結びつくの?」
「日詩さんの望むままの夢を見せる事が出来ます」
・・・・・・。
「マジで?」
「はい」
「でもそれって精気を吸い取るって事なんじゃ」
「いえ、それは私が吸おうと思った時だけですから。そう思わなければ夢だけを見せる事が出来ます」
これ以上の便利な能力があるだろうか。
いやまあ、あるんだろうけど。
「その夢を見てる事ってクラリンにも知られちゃうのかな?」
我ながらゲスい。
ルシェとイチャイチャしている夢を、知られるのが恥ずかしいと思った。
「私は見ないようにします。だから好きな夢を見て下さい」
そう言ってクラリンは何やらブツブツと呪文のような物を唱え・・・俺の意識は天国にでもいるような夢の中へと誘われた。
夢の中での内容は・・・ここでは語れない。
「おはよう日詩」
ルシェの声で目が覚めると朝だった。
俺は一つ伸びをすると「ああ、おはよう」と返す。
いやあ夢とはいえ、本当にすごかった。
まさか何でも言う事聞いてくれるなんて・・・いや、普段のルシェも聞いてくれそうだけど。
「ねえ、日詩のそこ、すごく腫れてるみたいなんだけど。大丈夫?痛くない?」
そう言ってルシェが指を差してる場所は俺の股間。
「あ」
アッーーーーーーー!
寝袋越しでも物凄くハッキリと分かるくらいに、その一部が隆起していた。
これは恥ずかしい・・・。
「すぐに治まるから大丈夫!痛くない痛くない。ハハハハハ」
焦った。
隣を見るとクラリンがゴソゴソと、寝袋から這い出しているところで、俺がおはようと声を掛けると、腫れぼったい瞼をこちらに見せ
「おはようございます。昨夜はいかがでした?」
と、後半は俺にだけ聞こえるように耳打ちしてきたので、俺はそれにサムズアップで応えると、クラリンはニコッと笑顔を見せた。
その笑顔がまためちゃくちゃ可愛いくて、思わずドキッとしてしまった。
こんな、自分の妹くらいの子に見惚れてしまうなんて、なんという色気!
エルフには個性的な奴が多いが、サキュバスは・・・すごい。