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魔法

声の主は、自分は元より、ルシェよりも背の低い男の子だった。


ああ、この世界にもいるんだな、自分より出来の悪いやつをイジメようとする、イジメっ子とやらは。

それにしても、こんな子供にまでバカにされてるなんて。


「あんた、登場の仕方がいつも一緒ね。たまには違う台詞で登場してくれないかしら」


ルシェは気に掛けた様子もなく言い返した。


「どんな登場をしようが俺の勝手だろ!それより質問に答えろよ!」


ダン!ダン!と地面を踏みつけて怒っている様は、癇癪を起している子供のようだ。


「異世界から来たお客みたいなもんよ。あんたには関係ないんだからどっか行きなさい」


ルシェがシッシっと追い払う仕草をすると、顔を真っ赤にして叫びを上げる。


「何だと!ルシェルのクセに生意気だぞ!」


「やかましい!」


日詩はゴツンっとゲンコツを一発見舞う。

感情が高ぶったとはいえ、ちょっとやりすぎたかと思い、日詩はすぐに謝った。


「ハッ、俺としたことが、こんなちっちゃな子供に手を上げてしまうなんて・・・。すまんかった、大丈夫か?」


「うわあああああん、ちっちゃな子供じゃないやい!うわあああああん」


思った通り泣き出した。


「あのね、日詩。パロル、この子の名前だけど、パロルは私とあまり変わらない年なのよ」


ルシェの説明を受けてもあまりピンとは来なかった。


「え~、このちびっ子が~?」


そう言いながらパロルの頭をグリグリと片手で撫でまわす。


「確か百七十才くらいだと思ったのだけど」


「は?」


聞き間違いか?

動きを止めた日詩に、一矢報いようとパロルは抵抗を見せた。


「死ねええええ」


そう言って、手から放たれたのはサッカーボールほどの大きさのある火球、ファイアーボールだった。


「うおっ!あっぶねえ!」


日詩は間一髪、ギリギリでそれをかわす。

それでも火球の余波が、日詩のワイシャツの袖を焦がしていた。


ゴスッ


頭にきた日詩は、再びバロルの脳天目掛けて肘を落とした。




「うう、ここまでするなんてひどいや」


泣き止んだ後、痛む頭をさすっているパロルはそう漏らした。


「人を殺そうとしといて何を言うかこのガキは」


日詩の言葉にルシェも続ける。


「そうよ。むやみに殺そうとしちゃダメよ。まだ食べられるかどうかも分からないのに」


「おい」


「やあねえ、冗談よ冗談」


笑いながらそう答えるルシェに、再び疑問をぶつけてみる。


「そうそう、コイツこれで百七十才だって?」


「確かそんなもんよ。子供に見える割には年がいってるでしょう?」


「いやいや、いってるなんてもんじゃないぞ。俺なんてまだ・・・」


言いかけて日詩は止めた。

ここで実年齢をばらしてしまうと、逆にバカにされてしまうかもしれない。


「ん?」


「いや、何でも」


とりあえず、ここはごまかしておこう。人間とエルフとでは寿命が違うらしい。

すると、パロルが日詩に向かって話しかけてきた。

ジロッと睨みつけながら。


「おい、お前」


「何だ?」


「お前何しにきた?ルシェルとはどういう関係なんだ?」


日詩はピンときた。

ほほう、このパロルとかいうガキ、とんでもなく分かりやすいな。

やっぱ好きな子はイジメちゃうタイプなんだな。

ちょっとからかってやろうか。

ルシェには聞こえないように、パロルの耳元で囁く。


「フフーン、俺とルシェは将来を約束した仲でな。水不足の問題が解決したら、国に帰って結婚するんだ」


「なんだって!?」


わなわなと、怒りに震えだすパロルの様子を見たルシェが気になって、日詩に問いかける。


「ねえ、日詩。パロルになんて言ったの?」


「いやあ、ちょっと面白く言ってみただけなんだが」


やがてパロルは日詩に人差し指を突き付けて、こう言い放った。


「よろしい、ならば戦争だ!」

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