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 メイシュは雫と歩いていて色々なことに気が付いた。まず、水の色は青いばかりではなかった。気が付けば赤く染まっていたり、黒くなっていたり、緑に近いときもあった。そしてそういうときは決まって空の色も水に似た色に染まっていた。

 そして波の音も違っていた。雫と手を繋いでいると、波の音は声に聞こえた。それはメイシュ達には関係のない人々の声だった。

「みんな、忙しそうだね」

 雫が苦笑するように言った。メイシュも重々しく頷く。

「せわしないな」

「でも楽しそうだ。今、ケーキを食べるって言った」

「オレンジジュースも飲むらしい。それは幸せそうだ」

「ね、ほら。パーティーを開こうって」

「プレゼントが楽しみらしい。そうだ、雫は何が欲しい?」

 ふと思いついて尋ねたメイシュに、雫はきょとんとした顔をする。メイシュは笑った。

「この道の先についたらプレゼントする。約束だ」

「この道の先に何があるか、君は知っているの?」

「いいや、知らない。でも約束は守る」

 空いた片手を胸に当てて、メイシュはきっぱりと言い切った。格好いいね、と雫は小さくひとりごちる。

「じゃあとびきり素敵なものをもらいたいな。もう少し考えてから答えてもいい?」

「構わない。まだまだ道は長そうだ」

「うん、じゃあ思いついたら言うね。ありがとう、メイシュ」

 2人の周りでは波音が人々の喧騒を伝えていた。2人はそんなことには構わずに白い道に湿った足跡を残していった。

 2列になった足跡がどこまでも続いていく。ときどき大きな波が2人の足元をさらおうとしたが、2人で踏ん張れば大抵はやり過ごすことができた。もしどちらかが水に落ちても、片方がすぐに引っ張り上げた。そして引っ張り上げられた方は引っ張り上げた方に笑顔で礼を言った。

 そうして2人はどこまでも歩いていった。何度も水と空の色が変わり、メイシュもそれにいちいち驚かなくなった。


 ある時を境に、急に道の上で強い風が吹くようになった。嵐だ、と雫が言った。向かい風が強く、2人が踏ん張ってもなかなか前に進めなくなった。大きな波が何度も道の上を襲って、その度にどちらかが水に落ちた。波の音が苦しげな悲鳴と怒号に聞こえた。

「雫、頑張れ! きっとあともう少しで道の先に着く」

 メイシュが雫の手を引いて向かい風を睨む。雫はうんと頷いたものの、強くなる一方の風に足を取られてうまく前に進むことができなかった。メイシュが雫を振り返る。

「君の足はあまり強くないのか」

 雫は苦い顔で頷いた。メイシュは雫の手を引いて自分の方へ引き寄せると、その身体を抱き上げた。雫は驚いてメイシュを見る。

「これじゃあ2人で踏ん張れないよ」

「メイシュが頑張る。雫が進めないとメイシュも進めない」

「置いていってもいいんだよ」

「メイシュは雫と歩く。一緒に行こうって言ったのは雫だろう」

「だけど、私のせいでメイシュが」

「まだほしいプレゼントも聞いていない。色々全部中途半端で、それに雫がいないと私は寂しい」

 そう言ってメイシュは抱きかかえた雫に笑顔を向けた。その時これまでで一番大きな波が道を遥かに飛び越え、2人を呑み込んだ。

執筆日2013/10/22

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