序章
今日も冷たい風が私の頬を通り抜けていく。
マフラーの隙間にまでもスーっと入ってくるものだから、少しばかり身震いをしてしまう。
そうだ、あの人を見つけたのもこんな寒い日だった気がする。
どこかの古くさい小説か何かで出てくるような言葉を思い浮かべながら、私は歩き続けた。車が通るたびに吹く風が憎くて仕方がない。
好き、嫌いなどの恋愛感情に対して私は酷く面倒くさがりなようで、私はずっと男の人、というものに興味が湧かなかった。
周りの友達は大人からすると「ませている子供」なのだろう。あの人も言っていたのだ。でも私からするといち早く、誰よりも早く大人になって周りの人に尊敬や期待の眼差しを感じたいと思っているのだ。
中には、大人の恋愛がしたいとか、仕事をしたいだとか、勉強しなくていいからだとか。
聞いてみたい、あなたは子供のころにそう思ったことはないのですか、と。
そして私はあの人と出会った。子供と大人で愛し合って、「恋愛」・「恋」というものをしたのだ。
大好きだった。
親には内緒の恋だったけれど、本当に楽しかった。
良い人だった。
優しかった。
年の差とか、初めは気にしていたようだけれど私は全然よかった。
徐々に私の気持ちをわかっていってくれるあの人が好きで、好きで、どうしようもなかった。
冷たい手をぎゅっと握ってくれるあの人の手も冷たかったけど、大きくて心底安心したのを覚えてる。
本当に、大好きだった。