冷徹の女王と恐れられている学園一美人な先輩は、俺の家では子供のようにご飯を食べる
「ねえ、翔琉くん。私、料理っていうものは人類史上最大の発明だと思うの」
九月も半ばだというのに、窓の外では未だしぶとく求愛活動を続けている蝉の声が聞こえる。そんな昼下がり、春風文乃先輩は僕にそう語りかけてきた。
「急にどうしたんですか。春風先輩」
「あら、料理部の部長として当然の考え方だと思わないかしら?」
「…………」
僕、寺坂翔琉は春風先輩の言葉に不信感を覚えじっと見つめる。すると先輩はばつが悪そうに目線を背ける。
「なによ」
「……でも春風先輩料理できないじゃないですか」
キッチンで料理をしている僕は、ソファでくつろいでいる料理部部長にそう言い返す。すると春風先輩はむくりと起き上がり、何故かゆっくりとこちらへ近づいてきた。
「そんなの全部翔琉くんが作ってくれるからいいじゃないの」
「だからって僕の家に毎日食べにくるのはやめてください」
「しょうがないの。これは部活動なのよ」
「なら学校の調理室でやりましょうよ」
「学校の器材じゃ物足りないって言ったのは誰かしら」
「うっ……でもそれは、春風先輩が無理難題なものばかり頼んでくるからでしょ」
「……そんなことより、もう少しでできるんじゃないの?」
僕との会話をシャットアウトするようにスンスンと匂いを嗅ぎ、お腹を空かせた犬のような目でこちらを見てくる。
普段の澄ました姿とのギャップに一瞬ドキッとしたものの、すぐに持ち直す。
っというかこっちまで歩いてきてたのは完成しそうか見るためだったのか。
「春風先輩って嗅覚と味覚だけは冴えてますね。ちょうどできましたよ」
「褒めてもらえて光栄よ」
「褒めてるつもりはなかったんですけど」
そんな会話をしながら、盛り付けた料理を食卓へと運んでいく。置かれた食事を見て春風先輩はぼそりとつぶやく。
「シュニッツェルじゃない……」
「そうですよ。今日の朝、春風先輩がドイツ料理食べたいって駄々捏ねてきたじゃないですか」
「駄々は捏ねてないけど。でも、こんな本格的なドイツ料理だなんて思うわけないじゃない」
「気に食わないですか?」
「まさか。私はそんなに捻くれてないわよ」
「知ってますよ」
その証拠に、さっきから料理を見つめている大きな瞳はキラキラと輝きっぱなしだ。
「それじゃあいただきます」
「はい。いただきます」
春風先輩は艶やかな長い黒髪を一つに束ねると、両手を合わせた。
そして食事を口に入れた途端。先ほどまでのクールな顔がどんどんと緩んでいく。
「美味しい! 美味しいわ!」
「それはよかったです。おかわりも必要ならまた作りますからね」
「ありがとう! 本当によくできた後輩ね」
「ちょっ!!」
僕の言葉がどれだけ嬉しかったのか、隣に座っている僕の頭を撫でてくる。そんなことされたら勘違いしてしまうのでやめてください。
「そんなに照れなくてもいいのに」
「照れてません!」
「素直じゃない後輩だこと」
僕の対応が気に食わなかったのかぷくっと頬を膨らませて拗ねる春風先輩。
「なら春風先輩はこうされたら素直になれますか?」
そう言いながら、シュニッツェルを一口サイズにして、先輩の口元へと運んでいく。
「あーんしてください」
「えっそれは……」
「してください」
「……あ………あーん」
僕に反撃されると思っていなかったのか、顔を紅潮させて固まっていた。しかし、数秒すると渋りながらも口を開いた。
いや、待て。よく考えたら僕も相当恥ずかしいことしてないか。
でもこれは春風先輩から始めた物語だ。責任をとってもらわないと。
先ほど自分で口に入れた時とは全く反応が違い、もぐもぐするだけで体は固まっていた。
「美味しくなかったですか?」
「そ、そんなことないわよ」
「春風先輩、動揺しすぎです」
「気のせいじゃないかしら」
わずかに表情を揺らしたものの、すぐにいつもの澄ました顔に戻った。
「まあ、翔琉くんが食べさせてくれたから、より美味しかったわよ」
「……そんな冗談やめてください」
「今度こそ照れてるわよね」
「照れてません!」
僕の反応にくすくすと嬉しそうに笑う春風先輩。
一緒にご飯を食べるといつもこんないじり合いが起きてしまう。
「それより早く食べないと冷めますよ」
「それはそうね!」
僕の言葉に春風先輩は焦ったようにまた食事に手を伸ばす。シュニッツェルにスープ、パンと忙しなく口に入れている春風先輩がなんだか、小さい子みたいでずっと見てられる。
こんなふにゃけな表情を見せている春風先輩が——
「おかわり!」
「もう食べたんですか!」
「だって美味しかったんだもの」
学校では『冷徹の女王』と恐れられているなんて、とてもじゃないけど信じられないよなぁ。
そんなことを考えながら、僕は再びキッチンへと戻っていった。
***
春風先輩と出会ったのは、僕が入学して間もない時期だった。
最初は探り探りだったためか、静かだった教室もすっかり騒がしくなった頃。この時期のビッグイベントとして、部活動の申し込み締め切りが上がると思う。
かくいう僕も、このイベントにワクワクしていた。
「ようやく他の人と料理ができるんだろうな」
クラスに友達がいないわけではない。話せる友人もできたし、毎日楽しく生活できている。
しかし物足りなかった物がある。それこそ、趣味を共感できる相手である。
考えながら料理の話をして、創意工夫を入れながら作り、笑いながら食べる。
その習慣をずっと待っていたのだ。実家ではギチギチに固められた料理を作るだけのつまらない時間だった。
だからこそ僕はこの時間を本当に楽しみにしていた。
この期待を胸に、子供がクリスマスプレゼントを開けるかのように、調理室の扉を開けた。
「えっ……?」
ここ普通科だけだったよね。これが最初の感想だった。正直言って調理部なんて、サッカーやら野球やらの花形の部活に比べたら人気がない物だと思っていたのに。
ざっと周りを見渡してもざっと30人はいる。
こんな人数の調理部なんて見たことがない。この状況がどうも気になった。そのため、一番入り口近くにいた男子生徒に訊くことにした。
「料理部ってなんでこんなに入部希望者がいるんだ?」
「ん……、ああ、知らないのか? 2年の先輩で春風文乃さんっているだろ? その人がこの部活なんだよ」
「あー……」
春風文乃。二年七組。この学校に入学してから名前を聞かなかった日がない。
眉目秀麗。頭脳明晰。文化系、スポーツなんでもござれの超人。
それが春風文乃という先輩だ。他にも良いとこのお嬢様だ、実はもう高校の単位は取り終えてるだとか根も葉もない噂が出てくる。
「でも冷徹の女王。ってあだ名ついてなかったっけ?」
「だからこそだろ? ここでお近づきになれたら万々歳だし、それは無理でも先輩の手作り料理が食べられるかもしれないんだから」
「じゃあ、ここにいる人たちは……」
「9割、いやもう10割が春風先輩目当てだろ。お前だってそうなんだろ?」
「……いや——」
こんな人数で料理ができたら楽しいだろうなと舞い上がっていた僕がバカみたいだ。僕は本当に料理をしにきただけだと否定しようとすると、また調理室の扉が開き、とある女子生徒が入ってきた。
春風文乃だ。何故だかわからないがそう思った。明らかに他の生徒とは格式が違うように感じた。
まず見て思ったのが姿勢がいい。これだけで育ちの良さが伺えるほどの佇まい。元々スタイルがいいのも相まって、普通に歩いているだけでモデルのような人だった。
「春風先輩だ……」
「あれはやばいな」
「芸能人でもあんなオーラ出せるのかよ」
やはり春風先輩だったらしく、教室全体が急に騒がしくなる。
その様子を一瞥した春風先輩は、凍りそうなほど冷たい目をしていた。しかしすぐに前を向くと教壇の方まで歩いていく。
腰まで伸びた漆黒の髪は艶やかで、歩くたびにさらりと揺れている。これこそ大和撫子というのだろうそんな存在だった。
騒がしかった調理室もいつの間にか春風先輩に目を奪われ、静かになっていく。
しっかりと見えていなかった顔が、教壇に立つことによって明らかになった。
遠くから見てもわかるまつ毛の長さに、大きな二重の目。そして細く整った鼻梁に、薄く整った唇。アニメの世界から出てきた人物かと錯覚させるほどのパワーがあった。
そして一つ、大きなため息を吐いたあと、春風先輩はゆっくりと口を開いた。
「……早速だけどこんなにも人数入れられないわ。入部テストを行います」
淡々と、静かにそう言い放たれた。春風先輩の顔は明らかな嫌悪感に包まれていた。
しかし、この言い方にも多くの人たちはやる気は削がれることはなく、逆に盛り上がりを見せていた。
僕が春風先輩を狙っていたなら一瞬で諦めるほどの冷たさだったのに、性根逞しいなと思いながら話の続きを聞く。
「作ってもらう料理といっても食材を切るだけ。大根のかつらむき。これができるなら調理部に入部できるとします」
春風先輩は変わらない口調でお題を伝えた。
「かつらむきってどんなの?」
「名前は聞いたことあるけど」
「なんか料亭とかでやってるイメージはあるけど……」
「先輩はできるんですかー?」
教室全体がざわめきだす。そりゃあそうだ。かつらむきといったら、料理人が越えるべき壁の一つ。素人がそう簡単にできるものじゃない。
「私がやる必要は一切ないわ。嫌ならこの部屋から立ち去りなさい。さあ誰からやるのかしら」
試すような言葉にも一切顔色変えずに言い放つ。これが冷徹の女王たる所以か。と感じる。
春風先輩のその言葉に誰も反応できない。知らないものはできないし、まだ入学して一ヶ月ちょっとで失敗したら恥をかくかもしれない。
「まあ顔見れただけでも良いか」
「やっぱり性格はきつそうだしな」
「一年にも可愛いやついたし。愛嬌も良かったぞ。あの子は」
少しして、多くの人が挑戦することなくどんどんと教室から出ていく。わずかな挑戦者も、結局ウケに走ったりと散々な結果だった。
そして残されたのは結局僕一人になってしまった。
本当に春風先輩目当てがほとんどだったんだな。少し悲しい気持ちになってると、
「貴方も早く去りなさい」
と話しかけられる。
「……えっ? 僕ですか?」
「貴方以外に誰がいるの」
「それもそうですね。……えっとかつらむきをすれば良いでしたね」
僕はブレザーを脱ぎ、腕をまくる。そして前髪を上げると先輩の隣に置いてあった大根と包丁を手にした。
「えっ? 本当にできるの?」
「料理は得意なんですよ。実家が料理人ばっかりなもので」
春風先輩が少し声色を変え僕に訊いてくる。やっぱり誰も入れる気がなかったなこの人は。一人二人は真面目に入ろうとしてた人もいただろうに。
その理由はよくわからないけど、僕は料理さえできれば良いからなんの問題もないか。先輩とは料理ができるなら、一応目的も達成できるし。
そうして大根のかつらむきをやってみせる。大根の上の方に目線を向けつつ、押さえている親指で大根の厚さを測りながら微調整をする。
これはどれだけ練習させられたか。ある時期には1ヶ月大根料理が出るほどには完璧に叩き込まれた。
そして太かった大根も一枚の布のように薄く広がった。
「ふう……」
「……すごい」
先ほどまで全ての人を軽蔑するような冷たい目だったのが、一転して子供のような輝かせた目に変わっていた。僕はその表情を見て少し嬉しくなる。
「包丁じゃなくて大根を動かすんですよ」
「それは知っててもこんな綺麗にできないわよ。ここまで綺麗にできるのは私が知ってる限り一人だけね」
「料理人なら誰でもできますよ」
「いいえ、私だって難しさはわかるもの。謙遜しなくたっていいのよ」
春風先輩にここまで言わせる人がいるなんていつかその料理人にも会ってみたいな。
「でもこれで入部は認めてくれますね」
「……ええもちろん」
「ズーパーです」
「…………何よそれ」
「すみません。口癖なもので。良いことがあったら出ちゃうんですよ」
「そう」
出来上がりをまじまじと見ていた春風先輩は、僕を部活に入れてくれる気になったみたいだ。少し不服そうな気もしたけど。
「それじゃあこれからよろしく……」
「あ、ああ、翔琉、寺坂翔琉って言います」
「寺坂くんね」
これが僕と春風先輩の出会い。ここから色々あって家で部活動を行うようになったわけだ。
***
結局、春風先輩はシュニッツェルを三枚も食べるという偉業を成し遂げた後、ソファでぐったりとしていた。
というかこの人、こんだけ食べてるのに全くお腹が膨れてないなんて、どこにご飯が消えているのやら。
やっぱり胸の大きい女性は栄養が胸に集中するというし……。と、チラッと春風先輩の前にそそり立っている二つの双丘に目線をやる。
「なんだか後輩からいやらしい目つきを感じたわ」
「き、気のせいじゃないですか?」
「ほんとうに?」
警戒するかのように自分の体を抱く春風先輩。こんなチラッと一瞬見ただけでも気づくのか。女子はすごい……。
「……というか春風先輩は料理しないんですか?」
僕はこれ以上追及されないように、咄嗟に話を変える。春風先輩もまあいいかと見逃してくれたのか、僕の質問に答えてくれる。
「今の所その予定は全くないわ」
「全くですか」
その言葉に少し落胆する。春風先輩は、料理のことも話せるし、美味しそうに食べてくれるし、後片付けなんか率先してやってくれる。
この数ヶ月、それで十分すぎるほど楽しめていたのも事実。しかしやっぱり僕の中で物足りないものがある。
「僕はこの部活に一緒に料理できる人を求めてきたんですよ」
そう、一緒に料理を作り、試行錯誤ができる。そんな関係性。僕が元々料理部に求めていたものだ。
僕の言葉に春風先輩は、表情を崩さずに口を開く。
「それは申し訳ないと思っているわ。正直私は誰一人としてこの部活に入れる気は無かったもの」
「もうそれは良いです。春風先輩が人付き合い苦手なのも十分知ってますし」
「あら、私のことを想ってくれるのね」
「他の人を入れるのが無理なら」
キャッキャとはしゃぐ春風先輩に対して、真剣な眼差しを向ける。
「春風先輩がその相手になってください」
いつものおふざけではなく、少し真剣な表情を向けた僕に応えるように、座り方を直した春風先輩。
「正気?」
「はい。春風先輩だって本当は料理したいんじゃないですか? 本屋にある料理本や、グルメ雑誌を片っ端から買い集めてるじゃないですか」
「それは……料理には興味があるのよ」
「料理には?」
「まあそうね。この機会だし見てもらうのも良いかもね」
春風先輩は机に置いてあった一冊の料理本を持つと、立ち上がった。
堂々とした足取りでキッチンへ向かっていく。しかし僕の前を通り過ぎたとき、その横顔がわずかに強張っているのが見えた。
明らかに緊張している。
まあでも、キッチンに立つってことは、やっぱり料理に興味あるじゃないか。
そう思って数分。
「なんでそうやるんですか‼︎」
僕は迷わずキッチンに走っていた。
というのも春風先輩は卵焼きを作ろうとしたのだろうか、卵三個に、酒、砂糖、塩を用意した。
そして僕の家にあるクマのキャラクターがプリントしたエプロンをつけると料理を始めた。
華麗な手捌きで卵を割り、調味料を入れかき混ぜる。そして熱したフライパンにちょっとずつ卵を流し入れる。
ここまでの流れは、料理ができる。なんなら普通の人よりよっぽど上手い。そう思わされるほどの手慣れた手つきだった。
しかしそこからが問題だった。
「……っはい!」
春風先輩はあろうことか、卵を巻く瞬間お箸を使わずフライパン捌きだけで巻こうとした。まだ固まりきっていなかった卵の汁が少し飛んで春風先輩にかかっていた。
こんな姿を見て流石に突っ込まずにはいられない。
「……なんでお箸使わないんですか」
「だって、うちの料理人はこうやってやってたもの」
なんだか精神年齢だけ幼くなったかのような喋り方をしていた。春風先輩の家には昔料理人が居たらしく、その時を思い出しているのだろう。
「その料理人ってかつらむきの時に言ってた人ですか?」
「ええ。端で掴むと割れちゃうから、こうやって巻くんだって」
「はぁー……」
雇われた家でそんな大道芸みたいなやり方で料理をする料理人が、一体どこにいるんだか。
「半分合ってて半分間違いです」
「えっ?」
「端で掴むと割れちゃうのは合ってます。でも全く掴まないのは僕でも無理ですよ」
「そうなの⁉︎」
「ええ、少し優しく掴んでフライパンを軽く回してあげるんです」
僕は春風先輩からフライパンを貰うと、改めて火をつけて卵を回していく。
「こうすれば割れずに綺麗に巻けるんですよ」
「だから……!」
春風先輩は何か納得したのかハッとした表情を浮かべた。
まあ小さい頃から見てた料理が、そんなものだったらそれが常識って思っちゃうのか。
いつかその料理人に会ったら、一言文句でも言わないとな。
「すごい! 今のうちに作れるようになりたいからもう一度やっても良い?」
「もちろんですよ。でもその前に」
僕は近くにあったティッシュを取って春風先輩についていた卵の液を拭いていく。
「これでよし。やっぱり汚れたままじゃ先輩らしくないですからね」
「……もう! 後輩は後輩らしく、そこでじっと見てて!」
「あ、ああ! すみません。急に近づいちゃって」
拭き残しがないかと、探していたら春風先輩の顔が近くにあった。拭くのに夢中でいつの間にか結構な距離近づいてしまっていた。
というかこんなに近くで見ても、肌荒れひとつ無い真っ白な肌に、ぷるんと艶のある唇。そりゃあ人気になるよなぁ。
と改めて思う。
「じゃあ、始めるわね」
僕は少し意識してしまっていたのに、春風先輩は相変わらず表情を変えずに持って料理を始めていた。
まあこれでこそ春風先輩なのだろうけど。
今回も卵を流し込むところまでは順調だった。そしていざ、卵を巻こうとお箸で卵に触れた瞬間、
「あっ……」
卵は真っ二つに割れていた。それでフライパンを回していたため、さっきよりも豪快に卵の汁を飛ばしていた。
「ちょ、何してるんですか! 流石に力入りすぎですよ!」
「……しょ、しょうがないじゃない。初めてで力加減が分からなかったもの」
「まあ……それもそうですね」
確かに料理初心者に求めすぎるのは良くないか。何事にも初心者には優しくしないと。それにしても力が入りすぎてた気もするけど。
「ちょっとじっとしててください」
「私一人でできるから‼︎」
「あ、ああ。すみません」
僕はティッシュを手に取ってまた近づこうとすると、春風先輩はそのティッシュをひったくるように奪い取る。
やっぱりさっき近づきすぎたし警戒されてるんだろうな。元々、人付き合いも苦手な方だったし。
「なら。僕は洗い物しときますね」
「え、ええ。ありがとう」
しょうがないなと考えながら僕は後片付けを始めた。
「危なかった……」
「何か言いました?」
「いえ、なんでもないわ!」
やっぱり少し近づきすぎて警戒されているに違いない。いったん春風先輩のことは忘れて洗い物に集中しよう。
そのせいだろう。
「(これ以上近づかれたら動揺がバレちゃう)」
春風先輩のつぶやきも、先程からずっと真っ赤に染まっている耳にもこの時の僕は全く気づいてなかった。
反響が良かったら長編で書こうと思ってるので、面白かったら感想やブックマーク、評価等お願いします!




