竜胆の花言葉
掲載日:2026/10/03
短いお話です。
竜胆の花が咲き乱れている。
その只中に貴方はただ立ち尽くしている。
その瞳から涙が溢れて止まらない。
声を上げないのは自分が崩れ落ちてしまうとわかっているからかしら?
もう私にはその涙を拭ってあげることもできない。
代わりに私は竜胆の花に手を伸ばす。
そよとも揺らすことはできないけれど。
竜胆の花言葉が胸の中に響いた。
ーー悲しんでいる貴方が好き。
初めてこの花の花言葉を知った時、何てひどい花言葉なのだろう、と思った。
でも今ならわかる。
私のことで悲しんでいる貴方を見て不謹慎ながら嬉しく思ってしまった。
貴方が心の底から私を愛してくれているとわかったから。
そっと近寄って頬にキスをした。
最後のキス。
『大好きよ。幸せになってね』
聞こえないことを承知で彼へと告げる。
本当はもっと一緒にいたかったけれど。
貴方に会えて幸せだったわ。
自然と微笑みが浮かぶ。
気配を感じたのか、貴方がきょろきょろと辺りを見回す。
霊感なんてないと言っていたのに。
私のことだから気づいたのだとしたらこれ以上の幸せはないわ。
ーーありがとう。
幸福感に包まれて、私は光の中に溶けた。
読んでいただき、ありがとうございました。




