7話 お供たちの現実的な訓練
◆ 1
木刀を手に入れた翌日。
桃子は村の広場で、犬・猿・キジを前に腕を組んでいた。
「よし。
鬼退治に行く以上、あんたたちにもちゃんと訓練してもらうからね」
犬は尻尾を振り、
猿は木の上で毛づくろいし、
キジは地面をつついている。
(……このやる気のなさよ)
老人が言った。
「桃子や、動物は言うことを聞かんぞ」
「いや、聞いてほしいんだけど!?
命かかってるんだけど!?」
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◆ 2 犬の訓練
まずは犬。
「犬は……そう、警戒役!
鬼が来たら吠えて知らせるとか、そういうの!」
犬は「ワン!」と元気よく吠えた。
「お、いい感じじゃん!」
桃子が褒めると、犬は嬉しそうに走り回る。
……そして突然、桃子の木刀をくわえて逃げた。
「ちょ、返して!?
それ私の命綱なんだけど!?」
犬は全力で走り、桃子は全力で追いかける。
(なんで毎回こうなるの……!?)
最終的に犬は木刀を返してくれたが、
桃子はすでに息が上がっていた。
「……あんた、ほんとに警戒役できるの?」
犬は尻尾を振ってごまかした。
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◆ 3 猿の訓練
次は猿。
「猿は……器用だから、縄を解いたり、偵察したり……
そういうの得意でしょ?」
猿はキーッと鳴き、桃子の腰の袋を奪って木の上へ逃げた。
「ちょ、また!?
返してってばー!」
猿は袋を開け、中の団子を一つだけ取り出し、
満足げに食べ始めた。
「……まあ、全部取らないだけマシか」
猿は袋をぽいっと落とした。
桃子は拾いながらため息をつく。
(……この子、器用だけど絶対自由すぎる)
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◆ 4 キジの訓練
最後はキジ。
「キジは……偵察!
空から敵を見つけるとか、そういうの!」
キジは桃子を一瞥すると、
羽ばたいて空へ飛び立った。
「おお……!」
桃子は期待した。
しかしキジは——
そのまま遠くの畑に降りて、
虫をつつき始めた。
「いや、偵察して!?
なんで畑行くの!?」
老人が言った。
「キジは腹が減っておるんじゃろ」
「知らんがな!」
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◆ 5
訓練(?)が終わる頃には、桃子はぐったりしていた。
「……無理じゃん。
犬は木刀泥棒だし、猿は団子泥棒だし、
キジはただの食いしん坊だし……」
犬は桃子の足元に寄り添い、
猿は肩に飛び乗り、
キジは桃子の頭に乗った。
「……なに、慰めてるつもり?」
三匹はそれぞれの方法で桃子に寄り添っていた。
(……かわいいけどさ)
桃子は空を見上げた。
(ほんとに……この子たちで鬼退治できるの?
いや、できないよね……
でも……)
昨日拾った“鬼の印石”。
キジが持ってきた“鬼の衣”。
犬の警戒心。
(……もしかしたら、なんとかなるのかも)
桃子は木刀を握りしめた。
「よし。
明日は出発前の最終準備するよ。
あんたたち、ちゃんとついてきてよね」
犬は「ワン!」
猿は「キー!」
キジは「ケーン!」
(……返事だけはいいんだよなぁ)
桃子は苦笑した。
こうして、桃子とお供たちの“現実的すぎる訓練”は、
なんとか形になった……気がした。




