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桃から生まれた桃子の鬼退治  作者: 双鶴


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6/20

6話 武器が無い

◆ 1


鬼退治に行くと決めた翌日。

桃子は村の広場に呼び出された。


「桃子さまー! 武器を用意したぞー!」


「え、武器……?」


村人たちが誇らしげに差し出してきたのは——


くわ

かま

棒(ただの棒)。

あと、よく分からない木の板。


「……いやいやいや、これ農具じゃん!」


村人たちは胸を張っている。


「鬼退治といえば鍬じゃろ」

「鎌も切れ味がええぞ」

「この棒は丈夫じゃ!」


「いや、竹刀とか木刀とか……そういうのが欲しいんだけど!?」


村人たちは顔を見合わせた。


「たけ……とう?」

「きとう……?」


(あ、通じてない……)


---


◆ 2


桃子は鍬を持ってみた。


「……重っ!」


剣道で鍛えているとはいえ、鍬は重心が悪くて扱いづらい。

振り回したら自分が怪我しそうだ。


鎌は軽いが、リーチが短すぎる。


棒は……ただの棒。


「……無理。これで鬼と戦うとか絶対無理」


桃子は頭を抱えた。


(竹刀があれば……いや、竹刀じゃ折れるか……

 せめて木刀があれば……)


そのとき。


「木刀なら、作れるかもしれんぞ」


低い声が背後から聞こえた。


---


◆ 3


振り向くと、腕の太い男が立っていた。

村の鍛冶屋らしい。


「木刀……作れるんですか!?」


「まあ、形だけならの。

 鉄は扱えるが、木も削れんことはない」


桃子は思わず身を乗り出した。


「お願いします! 木刀がいいです!

 私、剣道やってて……その、こういうのの方が戦いやすいんです!」


鍛冶屋は桃子の構えを見て、目を細めた。


「……なるほど。

 その構え、ただ者ではないな」


「いや、ただの女子高生ですけど……」


「女子高生とはなんじゃ?」


「……説明すると長いので省略で」


鍛冶屋は笑った。


「よし。作ってやろう。

 ただし、時間はかかるぞ」


「どれくらいですか?」


「今日の夕方にはできる」


「早っ!」


---


◆ 4


鍛冶屋が木刀を作っている間、桃子は広場で農具を試していた。


犬は桃子の周りをぐるぐる回り、

猿は木の上から見物し、

キジは地面をつついている。


「……あんたたち、暇でいいよね」


鍬を振ってみる。


「重い……無理……」


鎌を構えてみる。


「リーチ短すぎ……無理……」


棒を振ってみる。


「……これはワンチャンあるけど……

 いや、やっぱり木刀がいい」


犬が「ワン」と鳴いた。


「そうだよね。木刀が一番だよね」


猿がキーッと鳴き、

キジが羽を広げた。


(……なんか、励まされてる気がする)


---


◆ 5


夕方。

鍛冶屋が木刀を持ってきた。


「できたぞ」


桃子は息をのんだ。


それは、少し太めで重さのある木刀だったが、

握った瞬間、手にしっくり馴染んだ。


「……すごい。

 これ、めっちゃいい……!」


桃子は構えてみた。

中段。

上段。

素振り。


空気を切る音が、農具とはまったく違う。


(これなら……戦える……!)


鍛冶屋が言った。


「鬼は強い。

 だが、おぬしなら……あるいは」


桃子は木刀を握りしめた。


「……やるしかないんですよね」


犬が足元に寄り添い、

猿が肩に飛び乗り、

キジが桃子の頭上を飛んだ。


(……この子たちと一緒なら……

 なんとかなるかもしれない)


桃子は小さく息を吐いた。


こうして、桃子はついに“武器”を手に入れた。


鬼退治への準備は、着実に進んでいく。


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