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桃から生まれた桃子の鬼退治  作者: 双鶴


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3/20

3話 お供たちが全然言う事を聞かない

◆ 1


翌朝。

桃子は老人に連れられて、村の外れにある林へ向かっていた。


「桃子や。鬼退治には、お供が必要じゃろ?」


「いや、必要じゃないし! てか行かないし!」


「犬、猿、キジを従えるのが桃太郎というものじゃ」


「いやいやいや、従えるって……野生動物だよ!?」


老人は桃子のツッコミを完全に無視して歩き続ける。


(ほんとこの人、話聞かないな……

 てか、犬猿キジって、どうやって仲間にすんの?

 黍団子あげたら“はい家来になります”って、そんな都合よく……)


桃子の不安をよそに、老人は林の前で立ち止まった。


「ここらに、よく動物が出るんじゃ」


(いや、出るって言われても……)


---


◆ 2


まず現れたのは——犬だった。


茶色い雑種の中型犬。

人懐っこい目をして、尻尾をぶんぶん振っている。


「あ、かわ……」


桃子が近づこうとした瞬間。


犬は老人の持っていた黍団子の袋に一直線に突っ込み、

袋ごとくわえて逃げた。


「ちょ、待って!? 団子!?」


老人は慌てて追いかけるが、犬は全力で逃走。

桃子は呆然と立ち尽くした。


(……これ、家来になるどころか、ただの泥棒犬じゃん)


---


◆ 3


次に現れたのは——猿だった。


木の上から、じーっと桃子を見下ろしている。


「えっと……こんにちは?」


猿は返事をしない。

代わりに、桃子の髪飾りを見つけた瞬間、

キュッと目を輝かせた。


「え、ちょっ……!」


猿は木から飛び降り、桃子の頭に飛びつく。


「痛っ痛っ痛っ! やめっ……髪引っ張らないで!」


猿は髪飾りを奪うと、満足げに木の上へ戻っていった。


「返してー!?」


猿は完全に無視。


(……これ、器用とか知恵とかじゃなくて、ただの泥棒猿じゃん)


---


◆ 4


最後に現れたのは——キジだった。


鮮やかな羽を広げ、堂々とした姿。

桃子は思わず見惚れた。


「わぁ……綺麗……」


キジは桃子を一瞥すると、

老人が持っていた団子の残りをついばみ——


そのまま飛び去った。


「え、ちょ……早っ!」


老人は空を見上げて言った。


「……あれは、偵察に向かったのじゃ」


「いやいやいや、絶対違うでしょ!?

 ただ団子食べて飛んでっただけだよね!?」


---


◆ 5


桃子は地面に座り込んだ。


「……無理じゃん。

 犬は団子泥棒だし、猿は髪飾り泥棒だし、

 キジは団子食べて飛んでっただけだし……」


老人は困ったように笑った。


「まあまあ、気長にいけばよい。

 そのうち懐くじゃろ」


「懐かないよ! 絶対無理だよ!」


桃子は頭を抱えた。


(どうすんのこれ……

 鬼退治どころか、お供すら揃わないんだけど……

 てか私、なんでこんな苦労してんの……?

 普通の女子高生なのに……)


そのとき——

遠くの山から、昨日と同じ太鼓の音が響いた。


ドン……ドン……ドン……


桃子は顔を上げた。


(……まただ)


老人が小さくつぶやく。


「鬼どもが……動き始めたかもしれんのう」


桃子の背筋に、冷たいものが走った。


(……やばい。

 ほんとに、やばい世界に来ちゃったんじゃないの……?)


こうして、桃子の“お供集め”は、

開始早々、絶望的なスタートを切ったのだった。


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