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桃から生まれた桃子の鬼退治  作者: 双鶴


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20/20

19話 決断

◆ 1


鬼の長から真実を聞いた桃子は、

洞窟の外に出ると、深く息を吸った。


冷たい風が頬を撫でる。

空は曇り、海は荒れ、

島全体が緊張に包まれているようだった。


(……領主がすべての原因。

 鬼も、村も、どっちも被害者なんだ)


犬が桃子の足元に寄り添い、

猿が肩にしがみつき、

キジが頭上を旋回した。


「……行こう。

 領主に会って、真実を確かめる」


桃子は木刀を握りしめた。


(でも……このままじゃ、戦いが始まっちゃう)


鬼と村の若者たちは、

いまにも衝突しそうな状態だ。


(止めなきゃ。

 私が止めなきゃ)


---


◆ 2


桃子が集落へ戻ると、

鬼たちと若者たちが再びにらみ合っていた。


「来るな、人間!」

「鬼め、かかってこい!」

「子どもを守れ!」

「村を守れ!」


怒号と恐怖が渦巻く。


桃子は叫んだ。


「やめて!!」


全員の視線が桃子に向いた。


桃子は震える手で、

背中の木刀をゆっくりと抜いた。


若者たちが息を呑む。


「桃子さま……戦うのか……?」

「鬼を倒すのか……?」


鬼たちも身構える。


桃子は木刀を見つめた。


(この木刀は、私を守ってくれた。

 でも……もう、戦うために持つんじゃない)


桃子は深く息を吸い——


地面に、木刀を置いた。


コトン。


その音は、

島全体に響いたように感じられた。


---


◆ 3


若者たちがざわつく。


「な、何をしてるんだ……?」

「武器を……捨てた……?」

「桃子さま、どういうつもりだよ!」


鬼たちも困惑している。


桃子は前に出た。


「私は……戦わない。

 鬼も、村も、どっちも守りたいから」


若者たちは戸惑い、

鬼たちは息を呑んだ。


桃子は続けた。


「鬼が村を襲ったのは、

 生きるためだった。

 土地を奪われて、飢えて……

 子どもたちを守るために、仕方なく……」


若者たちの顔が青ざめる。


「……そんな……」

「嘘だろ……?」

「鬼が……被害者……?」


桃子は首を振った。


「嘘じゃない。

 領主が、鬼の土地を奪ったの。

 鬼は追い出されて……

 生きるために、村へ降りるしかなかった」


鬼の長が静かに頷いた。


「真実だ」


若者たちは震えた。


「じゃあ……俺たちは……

 ずっと……間違ってたのか……?」


桃子は優しく言った。


「間違ってたんじゃない。

 知らなかっただけだよ」


---


◆ 4


桃子は木刀の前に立ち、

両手を広げた。


「私は、戦わない。

 鬼も、村も、誰も傷つけたくない。

 だから……私が間に立つ」


若者たちは息を呑んだ。


鬼たちも動きを止めた。


桃子は続けた。


「領主に会いに行く。

 真実を確かめて、

 村にも鬼にも伝える。

 そのために……私は剣を置く」


犬が吠え、

猿が肩にしがみつき、

キジが空へ舞い上がる。


桃子は涙をこらえながら言った。


「お願い……

 戦わないで。

 私を信じて」


沈黙が落ちた。


長い、長い沈黙。


そして——

鬼の長が静かに言った。


「……娘よ。

 お前の心は、我らに届いた」


若者のリーダーも、震える声で言った。


「……桃子さまが……そこまで言うなら……

 俺たちは……信じる」


桃子は胸が熱くなった。


(……よかった)


---


◆ 5


鬼と若者たちが武器を下ろす中、

桃子は木刀を拾い上げた。


(戦うためじゃない。

 真実を届けるために持っていく)


桃子は鬼の長に向き直った。


「行ってきます。

 必ず……戻ってくるから」


鬼の長は深く頷いた。


「娘よ。

 お前に……未来を託す」


桃子は犬・猿・キジと共に、

村へ向かう道へ歩き出した。


(次は……領主のところへ行く)


その背中には、

迷いも恐れもあった。

でも——

決意が勝っていた。


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