18話 真相
◆ 1
鬼と村の若者たちがにらみ合う中、
桃子は必死に両者の間に立っていた。
「お願い、やめて……!
戦ったら、誰かが死ぬ……!」
しかし、誰も聞こうとしない。
鬼は怒りに震え、
若者たちは恐怖で武器を握りしめている。
(このままじゃ……本当に戦いになる)
そのとき——
洞窟の奥から、鬼の長が姿を現した。
「……やめよ」
その声は低く、しかし島全体に響くような力があった。
鬼たちが動きを止める。
若者たちも息を呑んだ。
桃子は胸をなでおろした。
(よかった……)
だが、鬼の長の表情は険しかった。
「人間の娘よ。
お前に……見せねばならぬものがある」
桃子は頷いた。
「……わかった」
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◆ 2
鬼の長は桃子を洞窟の奥へ案内した。
若者たちも、鬼たちも、緊張したまま後に続く。
洞窟の最深部。
そこには——
古びた木箱が置かれていた。
鬼の長はゆっくりと蓋を開けた。
中には、
古い巻物、
壊れた農具、
そして——
人間の領主の紋章が刻まれた鉄板。
桃子は息を呑んだ。
「……これ、村の領主の……?」
鬼の長は静かに語り始めた。
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◆ 3
「昔……我らは人間と共に暮らしておった。
争いもなく、互いに助け合っていた」
桃子は目を見開いた。
(そんな時代が……?)
鬼の長は続けた。
「だが、ある日——
人間の領主が“鬼は不吉”と言い、
我らの土地を奪った」
巻物には、
領主の命令書が記されていた。
『鬼を山へ追いやれ。
土地はすべて領主のものとする』
桃子の胸が締めつけられた。
(……鬼は、追い出されたんだ)
鬼の長はさらに言った。
「我らは抵抗した。
だが、武器も食料も奪われ……
多くの仲間が倒れた」
壊れた農具は、
鬼たちが最後まで使っていた“生活の道具”だった。
(戦うためじゃない……
生きるための道具だったんだ)
鬼の長は目を閉じた。
「山に追いやられた我らは、飢えた。
子らが泣き、仲間が倒れ……
仕方なく、村へ降りたのだ」
桃子は震える声で言った。
「……村を襲ったのは……
生きるため……?」
鬼の長は頷いた。
「そうだ。
だが、人間はそれを“鬼の暴虐”と呼んだ。
真実を知る者は……誰もおらぬ」
桃子は拳を握りしめた。
(……村の人たちは、何も知らないんだ)
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◆ 4
そのとき、
若者の一人が震える声で言った。
「……そんな……
俺たち、ずっと……
鬼が悪いって……」
鬼の長は静かに言った。
「悪いのは、鬼でも村でもない。
欲に溺れた“領主”だ」
桃子は息を呑んだ。
(……領主が、すべての原因……?)
鬼の長は桃子に向き直った。
「人間の娘よ。
お前は……どうする?」
桃子は深く息を吸った。
(どうする……?
村も鬼も守りたい。
でも、真実を知らないままじゃ……
誰も納得しない)
桃子は木刀を握りしめた。
「……領主に会う。
真実を確かめて……
村にも鬼にも、全部伝える」
鬼の長は目を細めた。
「危険だぞ。
領主は己の罪を隠すためなら、
お前を消すことも厭わぬ」
桃子は震えながらも言った。
「……それでも行く。
行かなきゃ、何も変わらないから」
犬が吠え、
猿が肩にしがみつき、
キジが頭上を飛んだ。
(みんながいる。
だから、行ける)
鬼の長は静かに頷いた。
「……ならば、行け。
お前に賭けよう」
桃子は深く頭を下げた。
「ありがとう。
必ず……戻ってくる」




