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桃から生まれた桃子の鬼退治  作者: 双鶴


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19/20

18話 真相

◆ 1


鬼と村の若者たちがにらみ合う中、

桃子は必死に両者の間に立っていた。


「お願い、やめて……!

 戦ったら、誰かが死ぬ……!」


しかし、誰も聞こうとしない。


鬼は怒りに震え、

若者たちは恐怖で武器を握りしめている。


(このままじゃ……本当に戦いになる)


そのとき——

洞窟の奥から、鬼の長が姿を現した。


「……やめよ」


その声は低く、しかし島全体に響くような力があった。


鬼たちが動きを止める。

若者たちも息を呑んだ。


桃子は胸をなでおろした。


(よかった……)


だが、鬼の長の表情は険しかった。


「人間の娘よ。

 お前に……見せねばならぬものがある」


桃子は頷いた。


「……わかった」


---


◆ 2


鬼の長は桃子を洞窟の奥へ案内した。

若者たちも、鬼たちも、緊張したまま後に続く。


洞窟の最深部。

そこには——

古びた木箱が置かれていた。


鬼の長はゆっくりと蓋を開けた。


中には、

古い巻物、

壊れた農具、

そして——

人間の領主の紋章が刻まれた鉄板。


桃子は息を呑んだ。


「……これ、村の領主の……?」


鬼の長は静かに語り始めた。


---


◆ 3


「昔……我らは人間と共に暮らしておった。

 争いもなく、互いに助け合っていた」


桃子は目を見開いた。


(そんな時代が……?)


鬼の長は続けた。


「だが、ある日——

 人間の領主が“鬼は不吉”と言い、

 我らの土地を奪った」


巻物には、

領主の命令書が記されていた。


『鬼を山へ追いやれ。

 土地はすべて領主のものとする』


桃子の胸が締めつけられた。


(……鬼は、追い出されたんだ)


鬼の長はさらに言った。


「我らは抵抗した。

 だが、武器も食料も奪われ……

 多くの仲間が倒れた」


壊れた農具は、

鬼たちが最後まで使っていた“生活の道具”だった。


(戦うためじゃない……

 生きるための道具だったんだ)


鬼の長は目を閉じた。


「山に追いやられた我らは、飢えた。

 子らが泣き、仲間が倒れ……

 仕方なく、村へ降りたのだ」


桃子は震える声で言った。


「……村を襲ったのは……

 生きるため……?」


鬼の長は頷いた。


「そうだ。

 だが、人間はそれを“鬼の暴虐”と呼んだ。

 真実を知る者は……誰もおらぬ」


桃子は拳を握りしめた。


(……村の人たちは、何も知らないんだ)


---


◆ 4


そのとき、

若者の一人が震える声で言った。


「……そんな……

 俺たち、ずっと……

 鬼が悪いって……」


鬼の長は静かに言った。


「悪いのは、鬼でも村でもない。

 欲に溺れた“領主”だ」


桃子は息を呑んだ。


(……領主が、すべての原因……?)


鬼の長は桃子に向き直った。


「人間の娘よ。

 お前は……どうする?」


桃子は深く息を吸った。


(どうする……?

 村も鬼も守りたい。

 でも、真実を知らないままじゃ……

 誰も納得しない)


桃子は木刀を握りしめた。


「……領主に会う。

 真実を確かめて……

 村にも鬼にも、全部伝える」


鬼の長は目を細めた。


「危険だぞ。

 領主は己の罪を隠すためなら、

 お前を消すことも厭わぬ」


桃子は震えながらも言った。


「……それでも行く。

 行かなきゃ、何も変わらないから」


犬が吠え、

猿が肩にしがみつき、

キジが頭上を飛んだ。


(みんながいる。

 だから、行ける)


鬼の長は静かに頷いた。


「……ならば、行け。

 お前に賭けよう」


桃子は深く頭を下げた。


「ありがとう。

 必ず……戻ってくる」


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