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桃から生まれた桃子の鬼退治  作者: 双鶴


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18/20

17話 衝突の始まり

◆ 1


桃子が鬼ヶ島へ戻る道を必死に走っていると、

空気が急に変わった。


冷たい。

重い。

肌がひりつくような気配。


(……嫌な感じがする)


犬が低く唸り、

猿が肩の上で震え、

キジが羽を広げて警戒した。


桃子は木刀を握りしめた。


「……間に合って……!」


---


◆ 2


鬼ヶ島の入り口にたどり着いた瞬間——

耳をつんざくような叫び声が響いた。


「うわああああああっ!!」


桃子は息を呑んだ。


若者たちが、鬼の影から逃げ惑っていた。


「やっぱり鬼だ! 本物の鬼だ!」

「無理だ! 勝てるわけない!」

「誰だよ、行こうなんて言ったのは!」


その中心に立っていたのは、

昨日桃子と戦った“大鬼”。


その目は怒りに燃えていた。


「……人間ども。

 我らの地に踏み込むとは……」


若者たちは震えながら武器を構えた。


「ひ、ひとりずつなら……!」

「囲めば勝てる……!」

「桃子さまが来るまで耐えれば……!」


(やめて……!

 そんなの、絶対に無理だよ!)


---


◆ 3


大鬼が一歩踏み出した。


ドンッ!


その衝撃だけで、若者たちが後ずさる。


「ひっ……!」

「や、やば……!」


大鬼は低く唸った。


「我らは争いを望まぬ。

 だが……子らを脅かす者は許さぬ!」


拳が振り上げられた。


桃子は叫んだ。


「やめてぇぇぇぇっ!!」


---


◆ 4


桃子は若者たちの前に飛び出し、

大鬼の拳を木刀で受け止めた。


ガンッ!!


衝撃で腕がしびれる。

膝が折れそうになる。


(重い……!

 でも、倒れない……!)


大鬼は目を見開いた。


「……人間の娘。

 なぜ、我らを庇う?」


桃子は歯を食いしばった。


「庇ってるんじゃない……!

 止めたいだけ!

 誰も……死んでほしくないの!」


若者たちは呆然とした。


「桃子さま……?」

「なんで鬼の前に……?」

「裏切ったのか……?」


桃子は振り返らずに叫んだ。


「違う!!

 私は……村も鬼も守りたいだけ!!」


---


◆ 5


大鬼は拳を下ろした。


「……娘よ。

 お前の心は、嘘ではない。

 だが——」


大鬼の背後から、

別の鬼たちが姿を現した。


怒りに満ちた目。

震える子どもを抱えた母鬼。

武器を手にした若い鬼。


「人間が……また来た……!」

「子どもを守れ!」

「追い出せ!」


若者たちは恐怖で叫んだ。


「ひっ……!」

「無理だ、帰ろう!」

「桃子さま、どいてくれ!!」


桃子は叫んだ。


「やめて!!

 戦わないで!!」


だが、

鬼も人間も、

もう止まれないところまで来ていた。


大鬼が低く唸った。


「娘よ……

 お前が止めねば、戦になるぞ」


桃子は木刀を握りしめた。


(止める……

 止めなきゃ……!

 私がやらなきゃ……!)


犬が吠え、

猿が肩にしがみつき、

キジが空へ舞い上がる。


桃子は前に出た。


「みんな……落ち着いて!!

 話を聞いて!!

 戦ったら……誰かが死ぬ!!」


しかし——

その声は、

怒りと恐怖の渦にかき消されていった。


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