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桃から生まれた桃子の鬼退治  作者: 双鶴


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17/20

16話 暴走

◆ 1


桃子が鬼ヶ島へ戻ろうとしたそのとき——

背後から、怒号が響いた。


「見つけたぞ、桃子!」


振り返ると、

村の若者たちが十数人、武器を手に森へ踏み込んでくるところだった。


鍬、鎌、棒、石。

どれも即席の武器だが、

その目は“戦う覚悟”でぎらついていた。


(……嫌な予感しかしない)


桃子は一歩前に出た。


「みんな、どうしたの……?」


若者の一人が叫んだ。


「鬼を倒しに行くんだよ!」

「村の長老が言ったんだ! 鬼が今夜にも襲ってくるって!」

「桃子さまが頼りにならないなら、俺たちが行くしかない!」


桃子の胸が締めつけられた。


(……最悪だ)


---


◆ 2


桃子は必死に止めようとした。


「待って!

 鬼は——」


「桃子さまは黙っててください!」


若者の一人が怒鳴った。


「鬼の味方なんだろ!?」

「鬼の子どもを助けたって聞いたぞ!」

「もう信用できない!」


桃子は言葉を失った。


(……そんなふうに伝わってるの?)


若者たちは続けた。


「鬼は悪だ!」

「村を襲うんだ!」

「俺たちがやらなきゃ、誰がやる!」


桃子は叫んだ。


「違う!

 鬼は……鬼は、村を滅ぼすつもりなんて——」


「嘘だ!」


若者の一人が桃子を突き飛ばした。


桃子は地面に倒れ、木刀が転がる。


犬が吠え、

猿が怒って毛を逆立て、

キジが羽を広げた。


若者たちは一瞬ひるんだが、

すぐに顔を歪めた。


「……動物まで鬼の味方かよ」


(……違う。

 この子たちは私を守ってるだけなのに)


---


◆ 3


桃子は立ち上がり、木刀を拾った。


「お願い……行かないで。

 鬼と戦ったら、誰かが死ぬ。

 村も鬼も、どっちも傷つく。

 そんなの、絶対に嫌だよ……!」


若者たちは顔を見合わせた。


そして——

リーダー格の青年が、静かに言った。


「……桃子さま。

 あなたは優しすぎるんだ」


桃子は息を呑んだ。


「優しさじゃ、村は守れない。

 鬼を倒すしかないんだよ」


その言葉は、

桃子の胸に深く刺さった。


(……優しすぎる?

 違う。

 私はただ……誰も死んでほしくないだけなのに)


青年は背を向けた。


「行くぞ!」


若者たちは一斉に走り出した。

向かう先は——鬼ヶ島。


桃子は叫んだ。


「待って!!」


しかし、誰も振り返らなかった。


---


◆ 4


桃子はその場に立ち尽くした。


(……どうしよう)


村の若者たちが鬼ヶ島へ向かえば、

鬼は応戦する。

戦いになる。

血が流れる。


(そんなの……絶対に嫌だ)


犬が桃子の手を舐め、

猿が肩に飛び乗り、

キジが頭上を旋回した。


「……行くしかないよね」


桃子は木刀を握りしめた。


(止めなきゃ。

 私が止めなきゃ。

 誰も死なせないために)


桃子は走り出した。


鬼ヶ島へ。

若者たちを止めるために。

そして——

自分の選んだ道を貫くために。


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