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桃から生まれた桃子の鬼退治  作者: 双鶴


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16/20

15話 支えてくれるもの

◆ 1


村を飛び出した桃子は、

鬼ヶ島へ向かう途中の森で立ち止まった。


息が荒い。

胸が痛い。

涙がこぼれそうになる。


(……なんで、こんなことになってるの)


村は鬼を恐れ、

鬼は村を恨み、

桃子はその間に挟まれて——

誰からも信じてもらえない。


「……私、間違ってるのかな」


犬がそっと桃子の手に鼻を寄せた。

猿は肩にしがみつき、

キジは桃子の頭にそっと羽を触れさせた。


「……みんな……」


桃子はしゃがみ込み、

三匹を抱き寄せた。


「私、怖いよ……

 村の人たちにも信じてもらえないし……

 鬼のことも全部わかったわけじゃないし……

 どうすればいいのか、わかんないよ……」


犬は桃子の頬を舐め、

猿は桃子の髪を引っ張り、

キジは胸元に顔をうずめた。


(……この子たちは、私を信じてくれてる)


桃子は涙を拭いた。


---


◆ 2


そのとき——

森の奥から、かすかな声が聞こえた。


「……たすけ……て……」


桃子は顔を上げた。


「今の……?」


犬が吠え、

猿が木の上へ飛び、

キジが空へ舞い上がる。


三匹が同じ方向を示していた。


「……行こう!」


桃子は木刀を握り、声のする方へ走った。


---


◆ 3


森の奥で見つけたのは——

村の若者だった。


足を怪我し、

倒れ込んでいる。


「えっ……! 大丈夫!?」


桃子が駆け寄ると、

若者は怯えた目で桃子を見た。


「も、桃子さま……!

 鬼が……鬼が出たんだ……!」


「鬼に襲われたの!?」


若者は震えながら首を振った。


「ち、違う……

 鬼の影を見て……逃げようとしたら……

 足を滑らせて……」


(……鬼に襲われたわけじゃない)


桃子は胸をなでおろした。


「立てる? 村まで運ぶよ」


若者は桃子の手を掴んだ。


「桃子さま……

 村では……あなたが鬼の味方だって……

 でも……俺は……」


桃子は静かに言った。


「私は、村も鬼も守りたいだけだよ」


若者は目を見開いた。


「……そんなこと、できるのか……?」


桃子は一瞬だけ迷ったが、

すぐに答えた。


「できるかどうかじゃなくて……

 やるしかないんだよ」


犬が若者の足元に寄り添い、

猿が荷物を引き寄せ、

キジが周囲を警戒する。


若者は呆然とつぶやいた。


「……すげぇ……

 本当に……桃太郎みたいだ……」


桃子は苦笑した。


「桃太郎じゃないよ。

 私は……桃子だから」


---


◆ 4


若者を村の近くまで送り届けたあと、

桃子は再び鬼ヶ島へ向かう道に立った。


(……私を信じてくれる人も、いる)


胸の奥に、

小さな光が灯った気がした。


「よし……行こう」


犬が吠え、

猿が肩に飛び乗り、

キジが空へ舞い上がる。


桃子は木刀を握りしめた。


(村も鬼も、どっちも守る。

 そのために……私は動く)


孤立しても、

怖くても、

迷っても——


支えてくれる仲間がいる。


桃子は前を向いた。


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