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桃から生まれた桃子の鬼退治  作者: 双鶴


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11/20

11話 鬼との初遭遇

◆ 1


鬼の子どもが去ったあと、

桃子はしばらくその場に立ち尽くしていた。


(……鬼に、子どもがいる。

 生活してる。

 怖がってた。

 じゃあ……“鬼=悪”って、ほんと?)


胸の奥がざわつく。


犬が鼻を鳴らし、

猿が肩の上で落ち着かずに揺れ、

キジが低く鳴いた。


「……うん、行こう。

 もっと奥まで行かないと、何もわかんないし」


桃子は木刀を握りしめ、

鬼ヶ島の奥へと足を踏み入れた。


---


◆ 2


しばらく進むと、

岩場の向こうから“重い足音”が聞こえた。


ドン……

ドン……

ドン……


桃子の心臓が跳ねる。


(……来た)


犬が唸り、

猿が毛を逆立て、

キジが羽を広げる。


足音は近づいてくる。

一歩ごとに、地面が震える。


桃子は木刀を構えた。


(怖い……でも、逃げない)


---


◆ 3


岩陰から現れたのは——


「……っ!」


大きい。

桃子の二倍はある。

角は太く、皮膚は灰色がかった青。

筋肉の塊のような体。


まさに“昔話の鬼”そのものだった。


鬼は桃子を見下ろし、

低い声で唸った。


「……人間、か」


桃子の喉がひゅっと鳴った。


(やば……本物だ……

 これ、絶対勝てないやつじゃん……)


鬼は一歩踏み出した。

その足音だけで、桃子の膝が震える。


「ここは……鬼の地。

 人間は、帰れ」


桃子は必死に声を絞り出した。


「か、帰りたいよ!

 でも……帰れない事情があるの!」


鬼は眉をひそめた。


「事情……?」


桃子は木刀を握りしめた。


「村が……襲われてるの。

 だから、話を聞きに来たの!」


鬼は鼻で笑った。


「話など、いらぬ。

 人間は、いつも奪うだけだ」


その瞬間——

鬼が地面を蹴った。


ドンッ!


(速っ……!)


桃子は反射的に横へ飛んだ。

剣道の“体捌き”が、ギリギリで鬼の拳を避けさせた。


拳が地面にめり込み、

岩が砕け散る。


(当たってたら死んでた……!)


---


◆ 4


鬼が再び拳を振り上げた。


「やめてっ!」


桃子は木刀を構え、

鬼の腕を横から叩いた。


バシィッ!


鬼は一瞬だけ動きを止めた。


(効いてる……?)


しかし鬼はゆっくりと桃子を見た。


「……人間のくせに、よく動く」


「褒めてるの!? 脅してるの!?」


鬼は再び踏み込んだ。

桃子は必死に避け、木刀で受け流す。


剣道の技術が、

“生きるため”に使われている。


(怖い……怖いけど……

 負けたら終わり……!)


犬が吠え、

猿が鬼の背中に飛びつき、

キジが鬼の顔の前を飛び回った。


「みんな、危ないから下がって!」


しかし三匹は下がらない。

桃子を守るように、鬼の周りを動き回る。


鬼は苛立ったように唸った。


「……小賢しい」


鬼が腕を振り払うと、

猿が木の上へ逃げ、

犬が転がり、

キジが空へ舞い上がった。


(やば……このままじゃ……)


---


◆ 5


鬼が桃子に向かって拳を振り下ろした。


(終わった——)


その瞬間。


「やめろォォォォッ!」


別の声が響いた。


鬼の拳が止まる。


桃子は目を見開いた。


岩陰から現れたのは——

昨日、桃子が出会った“鬼の子ども”だった。


「その人……悪い人じゃない……!」


鬼の子は震えながら叫んだ。


「おもちゃ……返してくれた……

 優しかった……!」


大鬼は目を細めた。


「……お前が、そう言うのか」


鬼の子は必死に頷いた。


桃子は息を呑んだ。


(……助けられた)


鬼はゆっくりと拳を下ろした。


「……人間。

 話を聞く価値は……あるかもしれぬ」


桃子は木刀を下げた。


「……ありがとう」


鬼は背を向けた。


「ついてこい。

 長が、お前と話したがっている」


桃子は深く息を吸った。


(……ついに、“鬼の真実”に触れるんだ)


犬が寄り添い、

猿が肩に乗り、

キジが頭上を飛んだ。


桃子は鬼の後を追った。


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